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そのミットに想いを込めて  作者: 暦海


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9/24

初めてのマウンド

 ――カーーーン!!



「…………へっ?」



 それから、数分経て。

 そう、ポカンと声をこぼすわたし。と、言うのも――



「――おっしゃー、ナイス実松さねまつ!」

「何ポカンとしてんだ、走れ走れ〜」

「……あっ、うん!」


 ややあって、盛り上がったり茶化したりする3塁ベンチ。と言うのも――7回の表、代打で出てきたわたしの打球がなんと三角コーンを越え……つまりは、ホームランになってしまったわけで。ポカンとした監督の表情かおを見ても、全く予想していなかったことが伝わって……うん、だよね。そもそも、きっとわたしが一番びっくりしてるし。


 ともあれ、未だ頭がふわふわしたまま四つのベースを周りホームイン。ベンチに戻ると、明るい笑顔で迎えてくれるチームメイト達。そして――



「……まあ、どうせマグレだろうけど……でも、ナイスバッティング、実松」

「……高畑たかはたさん……うん、ありがと!」


 そう、ポツリと口にする凛々《りり》しい女の子。相変わらずこっちを見てはくれないけど、でも……うん、ありがと高畑さん!





「…………ふぅ」

「うん、やっぱり緊張するよね、実松さん」

「……あっ、うん……」

「でも、大丈夫。ぼくらがついてるから、自信を持って思いっきり腕を振ろう」

「……うん!」



 それから、10分ほど経て。

 マウンドにて、ポンと肩に手を添え優しく告げてくれる鴇河ときかわくん。……うん、ありがとう。


 さて、状況の整理をすると――7回裏、ノーアウトランナーなし……うん、整理するまでもなかったね。そもそも、このイニングの最初から出場してるんだし。


 ところで、現在7対4でわたし達がリードという状況なんだけど……うん、よくよく考えればとんでもない場面じゃない? 最近入ったばっかりだし、一番下手だから出番が最後になったんだろうけど……でも、最後ってめっちゃ大事じゃない? だって、これで試合が決まるんだよね? よもや、そんな局面にこのわたしが……まあ、どこで出てもどうせ緊張するんだろうけど。




「頑張って、実松さん! ぼくらみんなでしっかり守るから!」

「あ、ありがとう渡辺わたなべくん!」



 すると、少し後方――ショートを守る渡辺くんの声が届く。そして、渡辺くんに続くように他のみんなの声も届く。サードを守る高畑さんはやっぱり目は合わせてくれなかったけど、しっかり投げなさいよと小さいながらも聞こえる声で言ってくれて……うん、ありがとうみんな。



「…………ふぅ」



 一度、深く呼吸を整える。穏やかな陽射しに柔らかな風、そして土の匂いが身体からだを心地よく包んでいく。そして、プレートを踏みしめ第1球を――



「…………あっ!」


 直後、思わず声が。と言うのも……その、初球からいきなりバッターの足に当てちゃって……うぅ、ごめんなさい。


 だけど、気にしないでと言うように笑顔で手を振り1塁へと向かっていくバッターの男の子。そんな優しさに感謝をしつつ頭を下げごめんなさいと伝える。


 ……でも、切り替えなきゃ。申し訳ないけど、今は切り替えなきゃ。とにかく、今は鴇河くんのミット目がけて思いっきり――


「――ボール!」


 だけど、その後もコントロールは一向に定まらず。途中、タイムを取って鴇河くんが来て優しく声をかけてくれたけど……でも、返事をしながらも実際にはほとんど耳に……いや、頭に入ってなくて。



「……はぁ、はぁ……」


 早くも、呼吸が荒れる。……あれ、おかしいな。まだちょっとしか投げてないのに、汗がボタボタと滝のようにこぼれ落ちて……もっと長い練習の後だって、こんなに汗が出ることなんてなかったのに。


 ……でも、なんとかしなくちゃ。今、ノーアウト1塁2塁……流石にもう、これ以上のランナーを許すわけには――

 


「――ボール! ファーボール!」



「――おっし、これで満塁!」

「さあ、一気にどうて……いや逆転だ!」



 すると、いっそう盛り上がる1塁側、宇野うの野球部の選手達。……まあ、そりゃそうだよね。もしも逆の立場なら、耀光こっちもすっごく盛り上がってるだろうし。……そして、次は――


 ……でも、もう満塁。だから、ファーボールは絶対にダメ。だから、何としてもとにかくストライクを……ストライクを――



「…………あ」



 直後、思わず声が。投げたのは、ほとんど真ん中――それも、ストライク欲しさにとにかくコントロール重視で投げた力のないボール……そして、バッターはここまで3安打1本塁打の4番・宇堂うどうくんで――






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