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そのミットに想いを込めて  作者: 暦海


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野球部の一員なので

「――あっ、ごめんなさい渡辺わたなべくん!」

「ううん、気にしないで実松さねまつさん。こっちこそ、取れなくてごめんね」



 ある日の放課後のこと。

 グラウンドにて、大きな声で謝るわたし。だけど、笑顔で答え後ろへボールを取りに行く優しい渡辺くん。何が起こったのかと言うと、キャッチボールでわたしの投げたボールがびっくりするほど大きく上に……うぅ、ごめんなさい。



 あの日――ドキドキの練習初日から、およそ二週間が経過して。……まあ、今も十分ドキドキはしてるんだけど……ともあれ、少しずつではあるけど練習にも慣れてきて、キャッチボールも前よりは上手に……あっ、ほんとだよ? さっきのは……まあ、まだ上手くコントロールできないこともあって。





「――さて、皆さん。少し急ではありますが、次の土曜日に練習試合を行うことになりました」



 それから、しばらくして。

 グラウンドの隅の方で、みんなを前にそう伝える鴇河ときかわくん。さっき監督に呼ばれていたのは、このお話のためだったみたいで。……来週の土曜日、ということは……あと、四日後……うん、確かに急だよね。それとも、こういうものなのかな?



「それから、監督は次の試合、どこかで必ず全員を起用すると仰っていたので、みなさんそのつもりで心づもりをしてください」

「はい!」

「……へっ? あ、はい!」


 その後、優しく微笑み告げる鴇河くんに大きな声で答えるみんな。そして、一人わたわたしながら答えるわたし。……えっと、全員ということは……もしかして、わたしも? ……大丈夫? 正直、今から足を引っ張る気しかしな……ううん、こんな弱気じゃだめだよね。これでも、わたしももう野球部の一員。やるからには、一生懸命頑張って少しでもチームの役に……うん、立てるかな?





「…………あっ」



 それから、しばらくして。

 帰り道にて、ポツリと声をもらす。……しまった、忘れ物を。それも、グローブという野球選手にとって相棒とも言えるものを……うん、申し訳ない。いや、選手だなんてまだまだ初心者のわたしが名乗っていいのか分からないけど。


 ともあれ、駆け足で引き返し部室の前へ到着。……まだ空いてるかな? でも、部室の中からは小さく声が聞こえてきて……よかった、まだ空いて――



「……ねえ、あいつマジウザくない? 実松」


「…………へ?」



 すると、部室の中からかすかに聞こえた声。……えっと、今のは――



「――ほんとそれ。ちょっと顔が良いからって調子こいてるよね、あいつ」

「……ったく、ほんとなんで彗月はづきはあんなヤツ連れてきたわけ? どう考えてもいらないでしょ、あんなド下手な素人」

「……ひょっとして、彗月の好みとか?」

「ちょっとやめてよ! そんなわけないじゃん! なんであんな……いや、仮に……ほんとに仮にそうだとしても、そんな理由で彗月が野球部に誘うわけないじゃん」

「……まあ、そりゃそうよね。そんな、公私混同? みたいなこと、彗月が絶対にするわけないし。ねえ、沙織さおりはどう思う?」



 一人じっと立ちつくしていると、続けて室内なかから聞こえる声。鴇河くんと同い年の、六年生の女の子二人の声で。……そう、だよね。みんなに歓迎してもらえてるわけじゃない――もちろん、そんなことは分かってた。それこそ、高畑たかはたさんからは直接嫌いって言われちゃったわけだし。……でも、いざこうして耳にしちゃうと、やっぱり胸が痛くなって。


 ……うん、帰ろ。グローブには申し訳ないけど……でも、流石に今は入っていけないし、明日でも――



「…………へっ?」







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