初日
「――さて、昨日も伝えた通りだけど、今日からぼく達の仲間になる実松未来さんです」
「あ、その、実松未来です! その、みなさんよろしくお願いします!」
翌日、放課後のこと。
グラウンドの隅の方にて、鴇河くんの紹介の後、大きな声で挨拶をするわたし。目の前には、20人はいる男女生徒の姿が……うう、やっぱり緊張。
そして、みんなの反応だけど……笑顔で迎えてくれる子もいれば、あまり歓迎してくれていない様子の子もいて……まあ、それはそうだよね。こんな時期に急に入ってきて、それでも歓迎してくれる人がいるだけですごくありがたいわけだし。
「――ようこう〜、ファイ、オー!」
「ファイ、オー!」
「……ふぁ、ふぁい、おー」
それから、少し経過して。
先頭を走る鴇河くんに続いて、みんなで声を合わせるチームメイト達。そして、みんなから少し遅れてたどたどしく声を出すわたし。……うん、恥ずかしい。
さて、今しているのはランニング――こうしてみんなでまとまってグラウンドを周るところから、野球部の練習は始まるみたいで……うん、そう言えば前に見たことあったかも。……ところで、それはそうと――
「……ふふっ」
「ん、どうしたの実松さん?」
「あっ、ううん、なんでもないの」
ふと声をもらすと、隣で不思議そうに尋ねる可愛らしい男の子。……まあ、そうなるよね。ランニング中に急に笑いだしたりしたら。
……でも、なんだかちょっと楽しくって。グラウンドを走るなんて、本当ならしんどいことだと思うのに……なんだか、ちょっと楽しくって。
「――それにしても、すごいね実松さん。まだ初日なのに、平然とみんなについてくるなんて」
「……へっ? あ、ありがと、渡辺くん」
それから、少し経過して。
ランニングを終えストレッチをしていると、隣からそう口にする男の子。さっきのランニングの時も声をかけてくれた、同じ五年生の渡辺啓斗くんで。
そして、さっき声をかけてくれたように、ランニング中ずっと隣でわたしのことを気にかけてくれていて。まあ、ランニングの前に鴇河くんとお話ししていたみたいだから、鴇河くんにわたしのことを頼まれたのかもしれないけど……でも、お話ししたこともないのに知ったことを言うのもどうかとは思うけど、きっと渡辺くん自身の優しさでもあって……うん、ありがとう渡辺くん。
「――それじゃあ、次はキャッチボールです。いつもの通り、二人でペアを組んでください」
「はい!」
それから、しばらくして。
ストレッチとダッシュが終わった後、ややあってそう声をかける鴇河くん。そして、ランニングの時みたいに声を合わせ答えるみんな。よし、今度はちゃんと合わせられた。
……ただ、それはそれとして……二人でペア、か。さて、どうしようかな。希望を言えばもちろん鴇河くんが良いし、ペアを組みたいと言ったらきっと笑顔で応じてくれる。と言うより、わたしが相手がいなくて困ってたら自分から声をかけてくれるとも思う。……でも、いつも組んでるお相手がいるかもしれないし、気を遣ってわたしと組んでもらうのは流石に――
「……それじゃあ、実松さんはぼくと――」
「――もし良ければ、あたしが実松さんと組んでもいいですか? 彗月先輩」
「……高畑さん。うん、もちろんだよ」
すると、予想通りわたしと組んでくれようとした鴇河くん。でも、他の子がわたしと組むと言うと嬉しそうに微笑み答える。わたしと組まずにすんで安心した……なんて、いくら根暗なわたしでも流石にそんな勘違いはしない。そんなことを思うくらいなら、最初から誘ったりしないだろうし。まだ初日なのに、自分からわたしとペアを組むと言ってくれる子がいることを純粋に喜んでくれているのだろう。
「……あの、ありがとう。よろしくね、高畑さ――」
「――あたし」
ともあれ、驚きつつもその子――同じ五年生の凛々《りり》しい女の子、高畑沙織さんへ感謝を込め話しかける。だけど、わたしの言葉が終わる前にポツリとつぶやく高畑さん。そして、わたしを見るその目はどこか睨んでいるようにも……えっと、どうしたのだろ――
「――あたし、あんたのこと嫌いだから」
「…………へっ?」




