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そのミットに想いを込めて  作者: 暦海


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16/24

託された想い

「……ごめんね、実松さねまつさん。まだ、ほとんど肩も作れていないのに」

「ううん、気にしないで。そもそも、鴇河ときかわくんが……ううん、そもそも誰も悪いわけじゃないんだし」

「……実松さん」



 それから、ほどなくして。

 マウンドの辺りで、どうしてか謝罪を口にする鴇河くん。……いや、なんで謝るの? 鴇河くんも、誰も悪いわけじゃないのに。



 ところで、佐々ささのくんはあの後、観戦に来ていたご両親に連れられ病院に……うん、大丈夫かな。いや、大丈夫じゃないと思うけど……それでも、大きな怪我じゃないと良いんだけど。



「…………ふぅ」


 その後、ホームベースの後ろへと戻りミットを構える鴇河くん。一方、わたしは深呼吸をして少しでも心を落ち着かせる。


 ……もちろん、佐々野くんのことは心配だ。すごく心配、だけど……でも、今は切り替えなきゃ。だって……今、わたしにできるのは思いっきり腕を振ることだけなんだから!



「――ストライィック!」





「…………ふぅ」



 それから、少し経過して。

 マウンドにて、そっと息をもらす。カウントは、ツーボールツーストライク。そして、状況はツーアウト1塁2塁。ツーアウトまで既に佐々野くんが取ってくれてたから、わたしはあと一人を抑えれば良いわけで。


 ……でも、その一人が大変で。そもそも、まだわたしは試合では一つのアウトも取れていない――つまりは、一人も抑えられていないわけで。


 ……それでも、弱音なんていていられない。どの試合もそうだけど、特に今は絶対に。だって――



『……悪い、実松。後はたのむ』



 監督に告げられ、マウンドへ駆けていった時。

 そう言って、わたしにボールを手渡しマウンドを去っていく佐々野くん。その時に少しだけ見えた酷く悔しそうな表情かおが、今も鮮明に焼きついて離れない。


 ……それでも、託された。まだまだ、信用なんてしてもらってないと思うけど……それでも、託された。だから……わたしは、絶対に――



「――あっ!」


 投じた5球目、振り抜いたバッターの打球がふらりと上がる。打ち取った……とは思うけど、打球はふらふらとサードの後方へと――



「――アウトゥ!」

「……っ!! 高畑たかはたさん!」


 思わず、叫びを上げる。と言うのも――サード後方へと落ちそうな打球を、高畑さんが飛び込み見事にノーバウンドでキャッチしたから。



「……その、ありが――」

「……良かったよ」

「……へっ?」

「……気持ちのこもった、良いボールだった。あの時の棒球と違って」

「……っ!! うん、ありがと高畑さん!」



 ベンチに戻る途中、感謝を伝えに高畑さんの方へと駆け寄るわたし。すると、少しだけわたしを見ながら褒めてくれて……うん、ありがとう高畑さん!




 その後、鴇河くんのタイムリーヒットで点差を広げ7回の表――最終回へと突入。引き続きマウンドに上がったわたしは、ファーボールやヒットなどで1点を取られてしまい、なおもツーアウト1塁、3塁。ホームランを打たれたら、逆転……前回のあの悪夢がふっと頭をよぎる中、スリーボールツーストライクから投じたのは渾身こんしんのストレート。そして――



「――ストライィック、バッターアウト! ゲーム!」



 直後、審判の人のコールが響く。そして、鴇河くんを始めマウンドに駆け寄りねぎらってくれるチームメイトのみんな。……ふぅ、ほんとに良かった。








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