エースの復活
「――ほんとすみません、彗月さん! エースを任されていながら、長い間チームの役に立てなくて」
「ううん、謝らないで佐々野くん。それより、もう身体は大丈夫?」
「はい、もちろんです! これからはまたバリバリ投げていきますんで、よろしくお願いします!」
「そっか、それはほんとに良かった。でも、決して無理はしないでね」
それから、一週間ほど経て。
練習前のグラウンドにて、ビシッと頭を下げそう伝えるのは、ひときわ背の高いキリッとした顔の男の子。同じ五年生で、クラスは違うけど外見だけですっごく目立つ子なので廊下で見た時も印象に残っていて……そっか、野球部だったんだ。
さて、彼は佐々野京馬くん――三ヶ月くらい前に怪我をして、それ以降はずっとリハビリに励んでいた耀光野球部エースの男の子とのことで。
「――おかえり、佐々野くん」
「待ってたぜ、京馬」
「おう、ただいま。悪りぃな、待たせちまって」
その後、チームのみんなからも暖かく迎えられる佐々野くん。みんなが優しい、というのは言うまでもないけど、この光景からも佐々野くんに対する厚い信頼がうかがえて。……うん、なんだかほっこりす――
「――お前だよな? 実松って」
「……へっ? あ、はい……」
すると、ほどなくわたしの正面に来てそう問いかける佐々野くん。……えっと、はい、わたしは実松です。です、けど……でも、いったいどうしたのだろ――
「――言っとくが、このチームのエースはおれだ。お前には絶対に負けねえぞ、実松!」
「…………へっ?」
そんな佐々野くんの宣言に、ただただポカンとするわたし。……あっ、うん。佐々野くんがエースっていうのはみんなからも聞いてるし、もちろん全然疑ってないけど……でも、なんでわたしにそんな宣言を? 言うにしても、ライバルになる人は他にもっと――
「――ほら、佐々野。彗月先輩に誘われたことが気に入らないからって、いきなりケンカ吹っかけない。困ってんでしょ、実松。……まあ、あたしも人のこと言えないけど」
「……別に、ケンカじゃねえよ高畑。ただ、大事なことだから言っとこうと思っただけだ」
すると、ややあって少しあきれたように注意をする高畑さん。……なるほど、佐々野くんもわたしが鴇河くんに誘われたことを誰かに聞いて、そのことが気に入らないと。まあ、鴇河くんをすごく慕っているのはさっきからのやり取りからも分かったけど。……まあ、それはともあれ――
「――うん! まだまだわたしは下手だけど、これから一緒に頑張ろうね、佐々野くん!」
「……へっ? ……あ、おう……いや、なんか調子くるうな」
「……まあ、こういうヤツだから」
そう答えると、少し気まずそうな佐々野くんと少しあきれたように微笑む高畑さん。……えっと、なにか変なこと言ったかな?




