本心
「――今日はほんとにありがとう、実松さん」
「ううん、お礼をいうのはわたしの方。今日はほんとにありがと、鴇河くん。ほんとに、すっごく楽しかった」
「……そっか、それなら良かった。うん、ぼくもすごく楽しかった」
それから、数時間後。
空がほんのり茜に染まる空の下、わたしの家の前でそんなやり取りを交わすわたし達。……うん、ほんとに楽しかった。すごい選手達の試合を一緒に見たことも、その後お洒落な古民家カフェで話が弾んだことも。それこそ、実は夢だったと言われても驚かないくらいに。……でも、
「……ねえ、鴇河くん。今日、誘ってくれたのって……わたしに、気を遣ってくれたから?」
「…………へっ?」
そう、ためらいつつも尋ねてみる。……うん、余計な質問だよね。せっかくの楽しい時間だったのに、わざわざ水を差しちゃうような質問だって。
……でも、どうしても気になって。昨日、わたしがすごくショックを受けてたから、それで気を遣って誘ってくれたのかなと――
「……確かに、昨日のことが気にならなかったと言えば嘘になるかな。実松さんに、少しでも元気になってもらいたい気持ちもあったし……それに、無理しちゃわないか心配、っていうのもあって。実松さんはすごく責任感が強くて一生懸命だから、無理しないでって口で伝えても、昨日のことが悔しくて今日も練習を……それも、いつもよりいっそう頑張っちゃうんじゃないかなって。でも、休むのも練習と同じ……いや、それ以上に大切だから」
「……そう、だったんだ。……うん、ありがとね、鴇河くん」
すると、優しく微笑み答えてくれる鴇河くん。……そう、だったんだ。わたしに元気になってほしいから、と言うのは予想通りだったけど……でも、もう一つの方は流石に予想外で。
……でも、確かにそうかも。もし、鴇河くんのお誘いがなかったら、わたしは一人で練習してたと思う。昨日の悔しさでいてもたってもいられず、とにかく練習してたと思う。
だから、鴇河くんは誘ってくれた。一緒に遊びに行くことで、《《物理的に》》練習できないようにしてくれて。……うん、やっぱりすごいなぁ、鴇河く――
「……でも」
「……ん?」
「……でも、実松さんと会いたかったのは本当だよ。そして、本当に今日は楽しかった。だから……改めてだけどありがとう、実松さん」
「……っ!! ……鴇河、くん……」
すると、ニコッと微笑みそう口にする鴇河くん。太陽よりも眩しい、キラキラとした輝く笑顔で。
……うん、流石にわかる。気を遣っているわけじゃない、本心からの言葉だっていうことが。……そっか、鴇河くんも――
「…………ふふっ」
「実松さん?」
「ううん、なんでもない。今日はほんとにありがとね、鴇河くん」
「……うん、こちらこそ本当にありがとう、実松さん」
思わず、声がもれる。……そっか、鴇河くんもわたしと……ふふっ、明日からまた頑張れそう。




