変じゃないかな?
「…………ふぅ」
翌日、正午を過ぎた頃。
一人、呼吸を整える。そんなわたしがいるのは、お家の近くの小さな市民公園――あの時、小さな男の子の帽子を取ってあげたあの公園で。
……思えば、あれが始まりだったなぁ。あれがきっかけで、鴇河くんが野球部に誘ってくれて、それで……そう思えば、あれは運命だったのかな、なんて思ったり。
さて、どうしてここにいるのかと言うと――その運命の場所であるこの公園で、なんと鴇河くんと会うことになっているわけで。
『――ねえ、実松さん。もし良かったらなんだけど……明日、会ってくれないかな?』
『…………へっ?』
昨日の帰り道のこと。
あの一幕があった後、少しして控えめにそう問いかける鴇河くん。明日――今はもう今日だけど、それはともかく練習はお休み。だから、これはプライベートのお誘いということに……へっ? えっ、えっ、どゆこと?
ともかく、大いにわたわたしつつももちろん承諾。そして、今この公園で待ち合わせをしているわけなんだけど……うん、流石に早く来すぎたかな? でも、お家にいてもどうにもこうにも落ち着かなくって……。
……やっぱり、変じゃないかな? 今日の格好。お母さんは似合ってるって言ってくれたけど、もしかするとわたしに気を遣ってそう言ってくれた可能性も――
「――おはよう、実松さん」
そんな心配の中、ふと響いた柔らかな声に胸がドキンと跳ねる。見ると、そこには柔らかな笑顔でこちらに近づいてくる美少年、鴇河くんの姿があって。
「ほんとにごめんね、実松さん。昨日の今日で疲れてるはずなのに、こうして来てもらっちゃって」
「あっ、ううん気にしないで鴇河くん! その、鴇河くんに誘ってもらえて、すっごく嬉しかったし……」
「……そ、そっか……」
その後、そんなやり取りを交わしつつ街の中を歩いていく。わたし達が向かっているのは、最寄りの駅――そこから20分ほど電車に揺られ、駅からすぐ近くの目的地へという流れで。
……ただ、それにしても……隣に、鴇河くんが……それも、私服の鴇河くんがいて。白いTシャツにジーンズというシンプルな組み合わせだけど、むしろそれがいっそう鴇河くん自身の魅力を引き出している気が……やっぱり、素敵な人は何を着ても素敵なんだと改めて思い知らされる。
一方、わたしは薄い桃色のワンピース。こんなシンプルでいいのかな、って思ったけど……変に色々と着飾るよりシンプルな方が良いからって、お母さんがこれを勧めてくれて。確かに、鴇河くんを見てたらシンプルな方が良いっていうのは分かる気がする。気がする、んだけど……でも、それは元々すっごい素敵な鴇河くんだからであって、わたしの場合はどうなのかは――
「……ところで、実松さん。とっても似合っていて素敵だよ、その服装」
「……っ!! ……あ、ありがとう……その、鴇河くんもすっごく素敵だよ」
「……そっか、ありがと実松さん」
瞬間、またドキンと跳ねる。……もしかして、わたしに気を遣って……うん、たぶん違う。優しい鴇河くんなら、嘘でも褒めてくれそうだけど……でも、今回はたぶん違う。きっと、本当にそう思ってくれているのがその真っ直ぐな笑顔からちゃんと伝わって……ほんと、ずるいなぁ。




