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葛藤

作者: 杏栄

 

 その日、私は特に機嫌が優れないわけではなかった。ただ寝床についたのが午前三時と、ここ最近私は不眠に悩まされていたのだ。

 長時間寝るのだが、あまり満足した眠りを得ることができない。そのせいか妙な夢に悩まされることが多々あった。今まで二重夢など見たことがなかったのに、この日は四つの夢を連続して見た。

 昼に起きた時は寝心地は最悪。頭は痛いし、体の力が入らない。

 ――やはりあの夢のせいだろうか?

 今でも鮮明に記憶に残っている夢を一つ挙げてみよう。



 その日私は猫を殺そうとしていた。

 理由は、訓練だ。誰かが課したものではなく、私自身に課した私だけの訓練内容。修行内容とも取れるかもしれない。

 選んだ猫は偶然私の前に通りかかった、テレビの砂嵐のような色の髪をした猫。私は猫には詳しくないので、種類は分からない。

 私は猫を見つけるや否や猫に飛びかかり、猫を瞬く間に捕らえてしまった。時間にして一分もかからなかったと思う。

 猫は抵抗したが、私の力には叶わない。鳴き声も出すことがなくて、ただ四肢をバタつかせていた。

 私は猫の細い首に手をかけた。

 このまま絞め殺そうとしたのだ。猫の整った毛並みがフワリとした柔らかい感触を覚える。まるで既に捌かれた豚肉のような感触だったことを覚えている。私は手に力をこめる。

 が、すぐに手放してしまった。

 理由は簡単。猫を殺すのに道徳心が働いたからだ。

 ただし、可愛そうなんていう動物愛護者のようなものではなく手が汚れる、生き物を殺したことがない、という我儘な理由でだ。

 だがそれでは自分が課したノルマが達成できない。それでは駄目だ……と思って私はもう一度猫の首に手をかける。だが、またすぐに離してしまう。

 邪魔したのは身勝手な理由と、何かが阻止しているような気がしたからだ。よく現実の世界で人を殴る時、途中で止めてしまうような言葉で表せない、何か。

 悲しくなってくる。

 どうして猫が殺せない。この程度ならすぐに殺せるだろう。こんなのでは人を殴れないだろう、こんなのでは人を殺せないだろう――。

 私は猫の首に何度も手をかけて、すぐに手を離すという行為を続けた。手が汚れるのが嫌ならば棒かなにかで殺してしまおう、と私は太いが長さはない木材のような棒を道端で拾い、猫を殴った。

 殴れた、ということに私はこの上なく喜びを感じた。一つの達成感が身を襲ったのだ。

 あとは猫の細い息の根を止めてしまうだけだ。

 私は何度も猫を殴った。その度に生々しい音が耳に届いたが、構わず殴り続けた。

 が、死なない。

 こんなに細い体で、弱い生き物だ。どうして死なないのだろう……私は疑問に思った。だが理由はすぐに分かった。

 力が、足りないのだ。

 いくら木材を使っているとは言え、力をこめなければこんなものはただの玩具でしかない。私は愕然とする。

 私は猫すらも殺せない、弱い心の持ち主なのか。

 唇を強く噛んだ。

 そして心に強く誓ったのを、私は今でも記憶している。

『絶対に殺してやる』

 確かに私は痙攣する猫を見ながら、誓ったのだ。



中学校1年か2年の時のが見つかったので、投稿。そのままの文章です。確か、夢を見たのをそのまま文章にしたのかな。

……ずいぶんブラックだw

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