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サ終ゲームのリスタート  作者: 橋 みさと
第5章 きっと、みんなと一緒なら
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火山地帯(夜)

「わあ、今回はユウお兄ちゃんがぼくと一緒なんだね! よろしく」

「よろしく」


今回パーティを組むことになった1人は、風属性選抜メンバーのレンジャーであるDylicaさんだったが、


「ったく、誰だこのパーティ編成決めた奴は……」


もう1人は水属性選抜メンバーのプリーストであるジャスティアさんだったのを知り、私は顔が引きつるのを自覚した。

どう見ても不機嫌そうだし、なまじ初対面がアレだったので、今回どうなることか……。


「ジャスティアお兄ちゃんもよろしく」


だが、かなり気さくに話しかけたDylicaさんに対し、ジャスティアさんは意外にも気分を害した様子はなく、


「あいよ」


ぶっきらぼうではあるが、ちゃんとDylicaさんの目を見て返事した。


「もしかして、2人は知り合いなんですか?」

「ううん、パーティ組むのはこれが初めてだよ」


そう言えばDylicaさんって、風属性選抜メンバーとの初顔合わせでも、こんな感じだったっけ。基本の距離感が近いんだろうな。


「ところでジャスティアお兄ちゃん、何にそんなに怒ってるの?」

「戦闘には私が足手まといですよね……すみません」

「それは今に始まったことじゃねぇから、別にいいけどよ」


足手まといだとは、思ってるんだな……。


「このメンツだと、俺1人でガキ2人守りつつ、敵を倒す計算になってるのが気に食わねぇ。どんだけ俺を働かせる気だっつの」


そう言って、ジャスティアさんは苛立たし気に、口の小枝を嚙み締めた。

確かに私もDylicaさんも低身長だから、高身長の彼から見れば子供みたいなものだけど、ガキって……。


いや……いかにも弱そうに見えるから、以前のようにあまり強く出ないんだな、多分。


「ああ~、ぼくじゃ火山地帯の敵、倒せないもんね」


属性相関の関係で、風属性特化のDylicaさんにとって、火属性の敵は苦手な相手だ。

逆に水属性のジャスティアさんにとって、火属性の敵は守りやすく倒しやすい相手だから、確かにジャスティアさんだけ負担が多そうだな。


「でもそれってさ、このパーティ決めた人が、ジャスティアお兄ちゃんなら1人でできるって思ったってことでしょ? 凄いね!」

「……確かにそうですね」


とても自然に、Dylicaさんがジャスティアさんを褒めたので、私はちょっと驚きつつ同意する。

だがもっと驚いたのは……。


「……ふん、そうだな」


それを聞いたジャスティアさんが、満足そうにニヤリと笑って、そう言ったことだった。

もしかしてジャスティアさん、こちらが先に好意的に接すれば、怖い人ではないのかな……?


「で、お前」

「ぼくDylica!」

「……Dylica、武器編成くらい自分で出来るんだろうな?」

「うん。でも先に、リクエストとか言ってくれる方が、上手くできるよ」


凄い、ジャスティアさんに名前を呼ばせてる……。今までくろんさん以外の人の名前を呼ぶところ、見たことないのに。

これを予想してパーティ決めてるんだとしたら、考えた人はかなり、人をよく見てるな。


「さすがにレンジャーのことまで詳しくねぇんだが……」


そう言いおいてから、「耐久前提」だの「自傷禁止」だの、色々リクエストを上げるジャスティアさん。


「……これでいいか?」

「うん、そこまで教えてくれれば、すぐ組めるよ!」


こうしてDylicaさんは早速、武器編成に入った。


「それで……」

「ユウです」

「……ユウは武器編成出来んのか?」


Dylicaさんに倣って、私も自分から名乗る。うまくいったようだ。


「すみませんが私は、耐久前提で敵と戦ったことがないので、1から教えてくれると助かります」

「……めんどくせぇから俺が組む」


そう言って武器編成画面を開くよう私に指示したジャスティアさんは、無言で私の後ろに立ち、右手首を掴んで画面操作をし始めた。


本来この画面は、各人にしか操作できないのだが、どうやら私の指をタッチペン代わりにすれば、他人の画面を操作できるようだ。よくこんなことに気づいたな……。


「わ、ユウお兄ちゃんって、トリアの聖杯に旋風の宝玉、魔力の雫……哀傷のオルゴールまで持ってるの? 耐久するだけなら結構いけそうだね!」

「ナイトいねぇから、最悪ガッツ消費してでも、ユウが近列攻撃全部耐えろ。バフもデバフも、ほぼDylica1人にやらせとけばいい」

「あ……はい」


有無を言わせぬ雰囲気なので、私はそれだけ返事する。


「あとは……万が一俺が戦闘不能になったら、こいつを使うことになるかもしれねぇ」

「滅私の天秤……ですか」

「ええっ、ユウお兄ちゃん、蘇生魔導具まで持ってるの!? あ、でも蘇生なら、ジャスティアお兄ちゃんがメイスでできるんじゃないの?」

「俺の武器枠にそんな余裕はねぇし、武器枠があっても必殺技ゲージを蘇生に使う余裕もねぇから、今回は抜く」

「使うとユウお兄ちゃんが戦闘不能になるのに……」


分かってはいたけど、そこはドSなんだな。


「あくまで最終手段だ。レア敵があと少しで倒せそうな時だけ検討しろ。そうでなければ撤退だ」

「えっ、レア敵出ても逃げちゃうの!?」


これには私も驚く。


「ボスの行動分析戦闘の時と違って、救護室には誰も待機してねぇんだぞ。全滅しそうになったら、レア敵なんざ諦めて即撤退しろ」

「う、うん……分かったよ」


あまりに真剣な表情でそう言ったので、Dylicaさんは戸惑いつつも頷いた。

そうか、ジャスティアさんは確か、助けがない状態で全滅するのがどれだけ恐ろしいか、知ってるんだっけ……。


私も経験したことはないが、経験した人を目の当たりにしたことはあるので、それを思い出して身震いした。

夜エリアは昼エリアよりずっと敵が強いし、耐久前提だから全滅の危険性も高い。今まで以上に真剣にやらないとな。


武器編成に結構時間がかかったようで、私たちの出発は最後になってしまったが、その分しっかり打ち合わせもできたから、結果的に良かったな。

ジャスティアさんの武器編成が終わったところで、私たちは火山地帯(夜)へとワープした。


「わぁ、ここが火山地帯(夜)なんだ。外灯はないけど、真っ暗で何も見えないってわけでもないね」


Dylicaさんの言う通り、真っ暗だとどうしようかと思っていたが、月があるわけでもないのに、案外見通すことができる。ゲーム世界だからかな?


さすがに地形は昼エリアと全く同じだし、山道のいたる所から時折、蒸気が噴出しているのも、遠くの方で溶岩が流れているのも変わらない。周りが暗い分、溶岩がより赤く光って見えるくらいか。


ただ音楽は夜にふさわしい、けれど火山の過酷さを表すような、和風のものに変わっていた。


「Dylicaさん、前作で夜エリアはやってないんですか?」

「えっとね、森林地帯と山岳地帯だけしたよ! だからここは初めて見るんだ」


なるほど、そりゃそういう人もいるか。


「ジャスティアさんはどうなんですか?」

「くろんと全部やった」


ということは、2人は前作でかなり、やりこんでたんだな。


「そうですか、やっぱり2人は仲がいいんですね。最近は特にみたいですけど」

「ユウお兄ちゃんもそう思う? ぼくもそう思ってたんだ。それに前よりちょっと、丸くなったよね!」

「うるせぇ。そんなことより前見ろよ」


一瞬ただの照れ隠しかと思ったが、ジャスティアさんがそう言って私の左肩とDylicaさんのリュックサックを片手でそれぞれ掴み、後ろに強く引いた瞬間、足元の岩の隙間から蒸気が一気に噴出し、Dylicaさんの指先をかすめた。


「熱っ! ごめんなさい」

「すみません、ありがとうございました」


昼エリアだと、こういう定期的に蒸気が噴き出す場所がはっきり見えてたから、油断した。もっと慎重に進まないと駄目だな。


「それにしても……さすがに夜とはいえ、今回も暑いですね……」


陽光がない分、少しだけ昼より涼しく感じられるが、それでも体感で30度は超えていそうだ。早速ワールドチャットで、割り当てられたエリア内で交代で休憩するよう指示が入った。


「火属性選抜チームの方は、休憩どうするんですかね」

「ワールドチャットのパーティ募集には、どっからでも参加できんだぞ。最初から火山地帯以外で待機しときゃいいだろ」


なるほど、元々そういう手が使えるわけか。


「割り当てられたの、この辺の敵だよね? ぼく敵に触れる係するね!」


というわけで早速、レア敵探しが始まった。


雑魚敵しかいないと分かった場合、即撤退するとはいえ、たまに敵が早く行動してくる場合がある。その際は1回、敵の攻撃を食らうことになるので、これはこれで大変だな。

しかも結構な回数、戦闘を繰り返しているはずなのに、なかなかそのレア敵が出ない。


みんな私たちより早く戦闘を開始していた分、レア敵と遭遇する機会があったようで、早くもレア敵の情報がワールドチャットに揃いそうなのは助かるが。


「私たちの担当エリアで出るレア敵からは、物理攻撃力の合成素材が出るみたいですね」

「……! レア発見したよ!」


丁度その時、赤い鬼火が3つ集まったような見た目の雑魚敵が2匹と、それよりやや大きいサイズで色違いの青いレア敵が1匹、出現した。


「パーティ募集かけますね」

「敵の挑発なら任せろよ!」


事前に打ち合わせた通り、初手でガッツ付与の魔導具を使う操作をした後、私は自傷の痛みに耐えつつパーティ募集の操作をする。その間にDylicaさんとジャスティアさんは、それぞれ弓と槍で敵にデバフを付与し始めた。

ジャスティアさんの槍にはヘイト獲得率UPの効果もあるので、これでまずレア敵のヘイトが、ジャスティアさんに向けられる。


「あっ!」

「……ちっ」


だが間の悪いことに、ワールドチャットにほぼ同時に2つの募集が書き込まれた。私の募集の方がほんの少し後だったので、先に募集がかかったほうのパーティが上限人数に達した表示に切り替わる。


「防御に徹しろ!! まず数減らすために、ザコ狙うぞ」


言いながらジャスティアさんは、メイスで火属性耐性を付与しつつ私のHPを回復した。続けざまに水属性の槍攻撃で、右側にいた雑魚敵の鉱石部分を狙いつつ、味方全体の被ダメージを軽減する効果を付与する。ここで雑魚2匹のヘイトも、ジャスティアさんに向けられた。


本来これはナイトが、剣盾で付与した30%の効果を延長するための武器らしいが、プリーストが使っても10%は効果が出せるので、使っているらしい。


「長引くなら、ジャスティアお兄ちゃんを強化するね!」


予定では雑魚を後から参戦する火属性選抜メンバーに任せられるよう、敵全体へのデバフ付与からだったが、長引くとなるとジャスティアさんが雑魚を倒すしかないので、いい判断だ。


早速雑魚敵の1匹が近列攻撃の詠唱を、もう1匹が単体攻撃の詠唱を開始したので、私は前列移動しつつ、回避率が一時的に大幅UPする魔導具を使用した。

ジャスティアさんもまた、ラーヴァゴーレム戦でも使っていた水槍で自衛しつつ、与HP回復などのバフをかけていく……。


「っ……!」


私の方は目論見通り、近列攻撃を避けられたが、単体攻撃の方は容赦なく、後列にいたジャスティアさんのHPを削った。レア敵の方も詠唱を開始している。これは……全体攻撃か?


ジャスティアさんが行動時回復をかけたのを横目に、私もまたジャスティアさんへのバフ付与に入った。

レア敵の全体攻撃が届く直前、ダメージバリアが張られて威力を減じたが、それでもかなり痛い。


「ったく、俺は全体攻撃はそんなに威力出せねぇってのに!」


それでもバフが効いたようで、ジャスティアさんが全体攻撃の水属性大鎌を振ったところ、雑魚2匹はこれで撤退した。だが肝心の火属性選抜メンバーがまだ来ていないので、レア敵を倒すわけにはいかない。


「弱体化するね!」


バフ付与が終わったので、Dylicaさんはデバフ付与に移った。レア敵が今度は、単体攻撃の詠唱を開始する!


「ごめんなさい……遅れたわ」

「くろんお姉ちゃん! 待ってたよ!」


ここでようやく、くろんさんがパーティに合流し、早速大剣で自己攻撃力バフの付与を開始した。


「パーティ枠あと1つはどうします?」

「誰も来ねぇよ、魔獣戦準備で物攻合成付けんのは、ファイターだけだ!」


言いながら自己回復とダメージバリア付与を同時にこなすジャスティアさん。直後レア敵の単体攻撃がジャスティアさんを襲い、ダメージバリアを粉々に砕きつつHPの大半を失う大ダメージを与えた。


「ティア!」

「ジャスティアお兄ちゃん、大丈夫!?」

「いいから早く殴れ……!」


確かに追加メンバーがもういないのであれば、さっさと倒す方が得策か。私もデバフ付与に入る。


くろんさんの斧攻撃で、レア敵の鉱石部分に2多段攻撃が入る間、クリティカル率UPの魔導具で必殺技準備を整えたジャスティアさんは、


「おらぁ!」


必殺技ゲージを使用し、槍で攻撃を繰り出す!

グルグルと回転させた槍から発生した水は渦を巻き、プリーストが出したとは思えない威力で、レア敵の鉱石部分を砕ききった。


「何とか……なりましたね」


戦闘エリアから元の探索エリアに戻ったところで、全員が安堵の表情を浮かべた。


「お疲れさま! ジャスティアお兄ちゃん、少し休む?」

「いい、次行け」

「でもティア……」

「どうせ次のレア敵が出るまでに回復する。くろんも適性者ギルドで合成試して来いよ」

「……分かったわ。無理……しないでね……」

「ん」


こんな感じのことを何度か繰り返し、1日目の合成素材集めが終わった。

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