休暇B
他の係の人たちと共に、先に次のイベントエリアに移動していた私は、時計代わりとなっているデイリーガチャ復活までの時間を確認し、ペンタスさんの方を見た。
彼女もまた同じ画面を見ていたようで、目が合うとすぐ頷き、ワールドチャットの画面を開く。
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ペンタス:さあみんな 次の企画を開始するわよっ!
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ペンタスさんの言葉に合わせ、またサマーウパぺんが半透明の画面を操作した。
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運営からのお知らせ:イベントエリア「ステージ」が解放されました
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程なくして、花畑にいた人たちが次々とワープしてくる。
「マジでステージだ。広っ!」
「音楽が勝手に流れないエリアって、ここでは新鮮だな……」
「何見せてくれるか、めっちゃ楽しみなんだけど!」
良い席を確保しようと、ウパぺん含め、みんな急いで移動している。それをステージの端から見ていた私は、数回深呼吸してから、自分の席についた。
こういう経験はあまりないから、緊張するなぁ……。
程なくしてブザーが鳴り、照明が暗くなった。
「お待たせ! これからステージでのイベントを始めるわ。第3部まであるから、みんな楽しんでね。
それでは第1部、楽器武器所持者有志による、スカオー人気曲の演奏よ!」
ペンタスさんの司会に合わせ、ステージの照明が徐々に明るくなり、スルスルと緞帳が上がる。すでに緞帳の裏で待機していた、私を含む楽器武器所持者有志は、全員黒のスーツかドレスに身を包み、それぞれの楽器を取り出した。
今回指揮者を担当してくれている、花図鑑の菊さんが観客に挨拶し、指揮棒を構える……。
Ruyさんの管楽器を模したメイスと、ジャスティアさんの琴を模したメイス、くろんさんのボーカルで開始された演奏は、スカオーのオープニング曲だ。
「うっそ、上手っ!」
「練習時間なんてなかったろうに、すげー」
誰かがそう小声で言ったのが、耳に入った。
その演奏に、徐々にLiEさん、嶋耕作さん、鷹影さん、Dylicaさん、私も加わる。
ほぼ練習してないのはその通りだが……タネ明かしをすると、実はウパぺんが事前に各武器ごとに、演奏内容をセットしてくれている。
つまり、指揮棒に合わせてタイミングよく武器を使用すると、ちゃんと今のような演奏ができるのだ。
曲的に足りない楽器の音や照明は、ウパぺん数匹が担当だ。
「奏でるタイミングを合わせる練習」だけであれば、そう難しくはなかったので、ソロパートがあるRuyさん、ジャスティアさんには「カッコよく演奏している風」を装う練習もしてもらっている。
とはいえボーカルだけ、この方法では補助できないので、くろんさんはちょっと頑張ってくれたらしい。
曲が終わり、盛大な拍手が贈られる。その後、くろんさんがマイクからベルを模した魔導具に持ち替えてから、私たちは他にも2曲演奏した。
「良かった、みんな喜んでくれてますね」
最後の曲が終わり、拍手が贈られる中、また照明が暗くなる……。
第1部で演奏したメンバーは全員、第2部ではバックミュージックの係になるので、この間にステージの奥へと移動する。
「続いて第2部、ここからさらに盛り上がっていくからね!」
途中から舞台袖にスポットライトが灯り、ペンタスさんの司会が再開される。
「みんな、ライブ用ペンライトの準備はいい? アバター用魔導具にあるでしょ?
……そう、それそれ! みんなの好きな色を用意してね!」
台本にないペンタスさんのMCに、ステージにいるこっちは驚きを隠せない。だが場繋ぎとしては完璧だ。
多分、誰かの意見が反映されたのだろう。そういうのに慣れている人に、私は1人心当たりがあった。
そうとは知らない観客たちは早速、元々アバター用魔導具にある、様々な色のライブ用ペンライトを手に持った。
花図鑑さんたちだけは、このMCを事前に知っていたらしく、菊さんも落ち着いて指揮棒を構える。
「じゃあみんなの準備も整ったところで、第2部。ライブコンサートよっ!」
このMCに合わせてスポットライトが消え、舞台上に薄明かりが灯る。指揮棒が振られたので、私たちは演奏を開始した。
音楽に合わせて一気に明るくなった舞台の真ん中にいるのは、白地に金糸をあしらった、露出度の高いドレスを着こなし、マイクを持つ真珠さんとZEROさん。
その右側ではチョコレート色のタキシードを着たU-berryさんと、赤いドレスを着た紅央さんが、反対側では同じ服装の蛍さんと°˖✧はぴ✧˖°さんが、それぞれペアになってダンスを披露し始めた。
「スカオーの人気声優コラボ曲キター!!」
「これ、スカオー2周年イベントのリスペクト!? マジ嬉しいんだけど!!」
真珠さん、ZEROさんも歌いながら、簡単な手振りだけのダンスを披露する。これまた台本にないので、恐らく真珠さんが自分で考えて提案したのだろう。
本当にこの人、アイドル2ボイスとはいえ、こういうことに慣れすぎじゃ……。ある意味納得の人選だ。
ちなみにこれにもタネがあり、ダンスをしているU-berryさん、紅央さん、蛍さん、°˖✧はぴ✧˖°さんの4人については、ウパぺんがこの日のために作ってくれたエモーションを、いくつか組み合わせて踊っている。
つまり、「事前にセットされた通りに勝手に踊ってくれる」ので、そうとバレないように表情だけ演技しているのだ。
だが真珠さん、ZEROさんにそれはないので、この2人だけ本物の歌とダンスだ。
台本では歌だけ練習することになっていて、特にダンスは求められていなかったというのにこの完成度……2人ともすごいな。
「みんな、盛り上がって!」
「あなたたち声が出てないわよ」
「ええっ、どうして!?」
「はいっ、はいっ」
『はいっ、はいっ!』
真珠さん、ZEROさんが、これまた台本にない音頭を取り、観客席にマイクを向けると、
『はいっ、はいっ、はいっ、はいっ!』
『ウペッ、ウペッ、ウペッ、ウペッ!』
観客もまたそれに応え、ライブ用ペンライトを振った。中には、見事なオタ芸を披露している人までいる。
「みんなありがとー!」
「やればできるじゃない」
『いざ、突撃!』
この演出により、観客たちは最高潮だ。歌とダンスが終わると、惜しみない拍手が贈られた。
「ここから10分間の休憩に入るわっ! みんなまだ帰らないでよっ!」
ペンタスさんから休憩を告げられたが、みんな興奮冷めやらず、あちこちでここまでの出来事を振り返っていた。
第1部、第2部に参加したメンバーはこれで係が終わりなので、休憩時間の間に観客席の方へ移動し、代わりに第3部に参加するメンバーがそっと、楽屋へと移動する……。
実はここから先のことは、私も花図鑑さんたちから何も教えてもらえなかったので、純粋に楽しめそうだ。
「いよいよ最後の第3部。ヒーローショーよっ!」
ペンタスさんの司会に合わせて、ステージ以外の照明が落ち、のどかな音楽が流れ始める……。
すると、ペンタスさんがいる方の舞台袖から、ウパぺんたちがゾロゾロ出てきて遊び始めたので、ウパぺん好きの人たちは大興奮だ。
どうやら第3部は、ウパぺんもメインで参加してくれるらしい。
数分後、さらに反対側の舞台袖から、何やら見たことのない大きな敵が、突然顔を出す。
「うお、あれは!!」
「そう来たかwww」
どうやら、知っている人の方が多いらしい。
まるでハリセンボンとマンボウを混ぜ合わせたようなフォルムの、その魚型モンスターは、どうやってか知らないが宙に浮いて、
「ハリマーンボー」
そう言いながら、ゆっくりと登場した。
「あれはウパぺんたちの天敵、ハリマンボウ!!」
あ、名前そのまんまなんだ。
ハリマンボウはその身体から生えた棘を飛ばして、ウパぺんたちを攻撃する。ウパぺんたちは逃げまどい、ペンタスさんの後ろに隠れた。
「きゃーたすけてー! スカオージャー!」
やや棒読みのペンタスさんのセリフに合わせ、音楽が変わった。
そして登場する、「いかにもヒーロー」といった装いのヒーローたち!
「はっはっはっ、スカオーレッドだぜ! 俺様の筋肉をご所望かい?」
「堕天……ごほん。スカオーブルー、降臨!」
「パパ……じゃなかった、スカオーグリーンに任せなさい!」
「スカオーイエロー、行くっス!」
「スカオーピンクであります!」
「5人揃って……」
『天空海戦隊、スカオージャー!!』
名乗りに合わせて決めポーズを取るヒーローたちの背後で、ドカーンという大きな爆発音とともに、炎と煙が立ちのぼった。
顔はヘルメットで見えないし、頭上のプレイヤー名もウパぺんの力で隠されているが、それでも誰が誰か分かってしまい、笑いが止まらない人多数。
「本日の課題は……ハリマンボウ討伐です!」
スカオーピンクがそう宣言すると、敵側もハリマンボウの形をしたマスクを被る、追加メンバーが登場した。
「こ、これ人選間違ってない……?」
「お前ならできる! 頑張れ」
「悪戯しちゃうぞー!(「 •ㅅ•)「」
「破壊してあげるわ!!」
「我の野望、果たさせてもらうぞ」
内容はどう考えてもお子様向けなのだが、こちらも誰が誰か分かってしまい、笑いが加速する。
とはいえプレイヤー同士の戦闘など普段見ることがないので、これはこれで見ごたえがあった。
ちなみにゲームの仕様上、プレイヤーがプレイヤーを攻撃しても、ダメージは入らない。というか通常は、プレイヤーを攻撃対象に選ぶこともできないので、ウパぺんたちが何か仕様を変更したのだろう。
無事(?)にハリマンボウたちを撃退したスカオージャーが、観客に別れを告げ、颯爽と退場したところでヒーローショーは終了した。




