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サ終ゲームのリスタート  作者: 橋 みさと
第4章 たとえ、どんな困難でも
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片鱗

「では皆さん。本日の議題は……ボスについてです!」


素早くモニターの準備を整えたところで、天尚さんが「生徒会長」ボイスにふさわしい声かけをした。

ここに黒板かホワイトボードがあれば、バンッと叩いていたかもしれない。


----------------------------------------------------------

ユウ:すみません 長らくお待たせしました

こちらの準備が整いましたので 順番に戦闘開始お願いします

----------------------------------------------------------


全員がモニターを見ていることを確認してから、私はワールドチャットで謝罪と指示をする。ずっと待ってくれていた最初の6パーティが、行動分析のため戦闘を開始した。

早速、左肩と後右足に鉱石部分がある、漆黒紅眼の狼が出現する。


「ひっ!?」

「えっ、えっ!?」

「嘘、なんでそうなるの!?」


開始直後から驚いたのは観戦エリア側だけでなく、実際に戦っているパーティもだが、その理由は私にも明確だった。


敵の初動が、これまでのどんな敵よりも早い。


どうやら単体物理攻撃と全体魔法攻撃の2パターンあるようだが、どちらの場合もわずか9秒ほどで最初の攻撃に入る。これでは……こちらが動けるのはせいぜい2手、詠唱なしの武器のみでも3手までだ。


初見殺しとはまさにこのことで、敵の初手が単体攻撃だった3パーティ中、2パーティは早速、ファイターもしくはマジシャンが戦闘不能になった。

残る1パーティには紅央さんがいたので、2手でのヘイト管理が試みられたが、被ダメージDOWN80%のみでは、ヘイトは取れてもその威力を殺しきれず、彼女もまた戦闘不能になる。


「いくら何でも早すぎるわ……。さすがにバグじゃないの?」


同感だ。紅央さんですら安全にヘイト管理できないような敵と、どう戦えと言うのか。


「バグだとしてもぉ~、ベータ版はそれを確認するためのものだから、途中で修正してくれるわけないわよねぇ~?」


恐らく、熾天使セラフィムさんの指摘が正しいだろう。

もし修正されるとしても、それがいつなのか分からない以上、待つこともできない。そもそも日程的に、待つ余裕もない。


「以前照輝さんやLiEさんがやってたみたいに、魔導具での60%耐性付与でどうですかね……?」


正直それでも、真珠さんがラーヴァゴーレム戦でやっていたような、からめ手になりそうだが。


「こんなの無理だよ、僕が持ってる槍、40%しかないもん。攻撃はできるけど、詠唱1秒だから2手しか動けないし……」

「えっと、それは『40%付与の武器しか持っていない』って意味ですか?」


クリフさんは選抜メンバーに選ばれているとはいえ、全ての武器が揃うわけじゃないだろうから、そう思ったのだが、


「違います! 闇属性耐性60%付与の魔導具は、そもそも前作から未実装なんです。闇属性のやつだけ……。だから40%が最高です!」

「えっ!?」


天尚さんの補足に、私は言葉を失った。


the 2ndは「前作のやり直し」というストーリーだからか、古い武器の効果が微調整されたことはあっても、今のところthe 2ndからの新武器は発見されていない。


「正直今の段階じゃ、敵の初手が単体攻撃だったら、誰かが犠牲になるくらいしか手が思いつかないわ」

「それはさすがにNo! って言いたい……かな?」

「全体攻撃が来る方が、まだ何とかなりそうですね……」


実際、敵の初手が全体攻撃だった3パーティのほうは、うまく防衛策ができた2パーティが全滅を免れ、戦闘を続行していた。


こうなると、リタイアも視野に入れるべきだろうか?

いや、だとしても敵の詠唱時間が短いので、恐らくリタイアが間に合わず、1人は犠牲になる。その後の即再スタートは、精神的に難しいだろう。


「いきなりのガッツ受けも、厳しいわよねぇ~?」

「活動に支障あると思います! そもそも誰か、ガッツ付与できるんですか?」


念のため確認したが、光属性選抜メンバーの誰も、ガッツ付与が可能な武器を持っていなかった。


続く敵の行動は、どれも同じ三角模様の詠唱オーラ……。敵の自己バフまたは、こちらへのデバフということになる。


「物理被ダメージUP300%付与を確認」

「魔法被ダメージUP300%付与を確認」


今回はデバフか。だが……2種類の付与の内訳が、さらに混乱を引き起こした。


「ちょっと待って。今の……誰がどのデバフだったの?」

「ごめんねぇ~? 私もよく分からなかったわぁ~♡」

「ごめんなさい……私も。なんか、列ごとじゃなかったみたいだけど……」


そう、パーティ全員にいずれかのデバフが付与されることは分かったのだが、その法則が全く分からないのだ。

花図鑑さんたちも大慌てで、各プレイヤー名ごとに記録を残している。


「もしかしてランダムでしょうか?」

「あり得るわね」


デバフ付与の直後、敵が詠唱を開始し、すぐに列攻撃のコンボが2パターン確認される。

ここで、半数以上の人が戦闘不能に陥った。


「うわぁあぁ!」

「列攻撃の生存者全員に呪い耐性100%付与を確認」


事前付与されていた300%のデバフはここで切れたが、次はまた三角模様の詠唱オーラだ。


今度は敵のヘイトを取っていた1名に、魔法被ダメージUP30%の付与が確認される。

そして続くのは、全体物理攻撃と単体魔法攻撃のコンボだ!


「イヤン、もう♡ どうすればいいのよぅ~」


全体物理攻撃を何とか耐えた2名のうち、1名はこの攻撃で付与された呪い100%で足止めされてしまい、何もできないまま次の単体魔法攻撃で戦闘不能となり、全滅となった。


もう1人の方は、事前付与されていた呪い耐性で状態異常を免れたが、後列移動程度では次の単体魔法攻撃を耐えきれず、やはり戦闘不能となり全滅する。


「えっと……大前提として、さっきの列攻撃をわざと受けないと、呪い耐性がもらえなくて積むってことですよね……?」

「あの一瞬で、自分のデバフを正確に把握して、さらにパターン別に各自列移動? できるのかしらそれ?」

「甘々だね、お菓子より甘いよ」

「そうよねぇ~、せめてデバフの法則が分からないとぉ……」


早速ここまでで分かったことをワールドチャットで共有してから、続く6パーティにも戦闘してもらったが、やはり法則を見い出せない。実際に攻撃を受けた人たちにも聞いたけど、同じ意見だ。


次が最後のパーティなので、この状態での戦闘開始指示はさすがに出せないぞ……。


「まさか本当に、ランダムなのかしら……?」

「そう言えばクリフくん、さっきから黙ってるけど、どうかしたのぉ~?」


言われてみると、確かにじっとモニターを見てて、1回目のパーティ戦闘の時ほど慌てていない。


「ひっ!? いや、でも、どうせ僕の意見なんか……」

「……もしかして、何か気づいたことがあるんですか!?」

「だとしたら、何でもいいから教えてよぉ~♡」


花図鑑さんたちも同意見のようで、6人全員がじっとクリフさんの言葉を待っている。

クリフさんは観念したのか、ようやく口を開いた。


「ぼ、僕はその……、自分の参考にしようと思って、とにかくずっと、ナイトの人だけ見てたんだ……。そしたらみんな、立ち位置に関係なく、魔法被ダメージUPが付与された気がして……。

そ、そんなわけないよね!? きっと僕の勘違いだよね!?」

「…………!! 全員、再確認!」


どうやら花図鑑の1人である向日葵さんが、この言葉で何かに気づいたらしい。すぐにここまでの記録を6人全員で見直して、1つの法則を見い出す。


「協力感謝。職業別デバフと判断」

「職業別!?」


どうりですぐ分からないはずだ。

念のため最後のパーティにそのことを伝え、確認したが、やはり職業別デバフで間違いなかった。


「すごっ! もしかして……天才?」

「やるじゃなぁ~い?♡」

「あら、だとしたら例の列攻撃……対策がかなり単純になるんじゃないかしら?」

「……あ、そうですね! やったっ」


まさか褒められるとは思わなかったようで、クリフさんは恥ずかしそうに目を伏せた。

思いがけず活躍できたことで、クリフさんの自信に繋がるといいのだが。


分析結果を元にした武器編成や、真珠さんを追加したパーティ内作戦会議が終われば、次はいよいよ光属性選抜チームの出番だ。

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