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サ終ゲームのリスタート  作者: 橋 みさと
第4章 たとえ、どんな困難でも
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デゼルトアラクランA

「そうそう、ユウくんにお願いがあるんだけど、いいかな?」

「何でしょう?」


武器編成等が終わったぜっぴんさんが、私にそう声をかけた。


「念のため、猛毒が付与されてから効果が切れるまで、カウントダウンしてもらってもいい?」

「なるほど……分かりました。効果が切れるタイミングで0を宣言しますね」

「よろしくね!」


ちなみに時計があるわけではないので、普段の行動分析の際はわざと無詠唱の回復武器を使い、その武器の再使用可能時間(リキャストタイム)を示すカウントで計っている。今回はそれを、観戦中にすればいいわけだ。


闇属性選抜チームが観戦エリアを出たので、私は6つのモニター画面を切り替える。それを見たウパぺんたちは、そわそわし始めた。

次いで95名全員が「珊瑚等級昇格クエスト」を受託した状態で揃っているのを確認する。


闇属性選抜チームも戦闘準備エリアに揃ったので、私はワールドチャットの画面を開いた。


ちなみに今回のクエストは今までと違い、光・闇両方のボスを倒さないとクリアとならない。間違ってクエストを破棄しないよう、注意だな。


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ユウ:こちらの準備は整いました いつでもどうぞ

「おっしゃぁ!!」

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レフィアンさんが気合を入れるように、自身の両頬を叩く。これを見た他の人たちも、表情を引き締めてベルを見つめた。


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「準備オーケー?」

「大丈夫ですよ?」

「よろしく頼むな」

「ん、おっけー!」

「うむ、行くとしよう」

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代表して蛍さんがベルを破壊し、戦闘エリアへ移行し始める。同時に神聖さと怪しさを併せ持った、讃美歌を思わせる歌詞付きの戦闘音楽が流れ出した。

BOSS表記と共にデゼルトアラクランが出現し、戦闘開始だ!


「連携大事だぞ!」

「焦らず行けよー!」

「ウッペウぺぺー!」


ちなみに調査によると、デゼルトアラクラン本体の行動パターンは全て固定だったが、2つの光球がしてくる火・水属性耐性の付与のみランダムだった。また前列にいるので、レフィアンさんの方が有利武器が多い。


また、途中どうしても猛毒切れを待って停止する必要があるので、バフ・デバフを切らさないような立ち回りを求められる点は注意だ。


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「ちょっとこいつ、動くの早いんだよねぇ?」

「お前ならできる! 頑張れ」

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実はデゼルトアラクランは、アークタルラ並に出だしが早く、こちらが2手動いたあたりで最初の敵のセリフが出る。つまりナイト本人ができる守りの手が、かなり少ないわけだ。


「U-berryさんは初手で、自傷と単体デバフ付きの全体バフ付与武器か。いいものだけど、今回は序盤で全体攻撃来るから、結構リスクあるぞ……」

「ってぜっぴんさんも、味方全体へのバフ付与武器が自傷じゃん!」

「そのすぐ後に、シクザリアさんが耐性付与メイスで回復もしてくれたからいいけど……痛そうだな」


と、その時。レフィアンさんの行動を見た一部の人が、驚きの声を上げた。


「使ってる斧が、光属性!?」

「敵が光属性なのに!?」


属性相関の関係で、光属性の敵には、光属性の攻撃が最も通りにくい。レフィアンさんがそれを知らないとは思えないが……。


「いや……でもあの斧は確か、ファイターが使える物の中では最高品質のやつだったはず。その攻撃のダメージだけ見たら不利だけど、あの斧を使って得られるバフや逆鱗付与の効果考えたら、トータルで得だよ!」


なるほど、そういうこともあるのか。属性を見ただけで使う武器を決めるのも、よくないんだな……。


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デゼルトアラクラン「ギチギチギチ!」

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早速最初の、単体物理攻撃の詠唱が開始された。火力2人は攻撃を控え、自己バフや敵へのデバフを付与する。ぜっぴんさんは当然、ヘイトを取りに行くしかないが……。


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「お姉さんよろしくね!」

「援護しよう。こういうのはどうだ?」

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そう言ってシクザリアさんが構えたのは、見慣れない闇属性の槍だった。


「あれは……敵にデバフをもろもろ付与できる、闇属性のスコアアタック定番武器!」

「いやでもそれ、大半は敵にダメージが通りやすくなるデバフで、与ダメージDOWNは10%しかなかったはずだぞ!?」

「それ足りるのか!?」


今までのボス戦闘時に、プリーストさんがその手の守護技がある槍や魔導具を使わなかったのは、実はジャスティアさんだけだ。その代わりラーヴァゴーレム戦では、真珠さん自らが詠唱のない武器を多く用いることで、4手行動できる時間を捻出し、辛くも耐えている。


だが……今回はまだ、ぜっぴんさんが特殊な守護技を出していない。そしてデゼルトアラクラン相手に、3手以上行動することは不可能……!


ここでぜっぴんさんもまた、見慣れない闇属性の剣盾の詠唱に入った。シクザリアさんの攻撃が終わったところで、ぜっぴんさんの武器詠唱が終わり、デゼルトアラクランのヘイトを掴む!


「敵全体に物理・魔法与ダメージDOWN10%、物理被ダメージUP10%3種、魔法被ダメージUP10%1種、闇ダメージ耐性DOWN30%付与および、味方全体に物理・魔法与ダメージUP10%付与を確認」

「ぜっぴんさんにダメージバリア20%1回付与を確認」

「ヘイト取りながら、ダメージバリア張れる剣盾か、なるほど!」


その直後、デゼルトアラクランの詠唱が終わり、口から放たれた光線がぜっぴんさんの身体を貫いた。ダメージバリアが砕け散り、幾分その威力を弱める。


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「いてててて、でもまだ頑張れるよ!」

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心配させないようにするためか、大ダメージを受けたにもかかわらず、彼はそう言って笑ってみせた。


「うわ、HP残り3桁!?」

「ウ、ウペーッ!!」


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「よく頑張ったな」

赤の光球「光を貯めている……!」

青の光球「光を貯めている……!」

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だが安心してもいられない。立て続けに今度は、2つの光球が全体物理攻撃の詠唱を開始したからだ。

レフィアンさん、蛍さん、U-berryさんの3人は引き続き、後列で機をうかがっている。シクザリアさんは素早く全員のHPを回復させた。


これを見たぜっぴんさんは、迷わず地属性の剣盾を使用した。剣を握っている方の手を天に掲げると突如砂嵐が発生し、味方全体を守るように包み込む!


「味方全体に物理被ダメージDOWN30%付与を確認」

「ぜっぴんさんに物理被ダメージUP40%付与を確認」

「……えっ、ぜっぴんさんにだけ10%デバフ!?」

「敵の物理攻撃だけ威力を弱められる、ナイトの自己犠牲技!!」


2つの光球が放った無数の光線が、容赦なく闇属性選抜チームに襲い掛かったが、何とか全員無事にしのいだ。事前にシクザリアさんが、敵全体に物理・魔法与ダメージDOWNを10%付与していたのも、このための布石だったのだろう。


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「……見事だ」

デゼルトアラクラン「ギチギチッ」

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ぜっぴんさんが次の攻撃で自身に光属性耐性を追加付与しつつ、デゼルトアラクランのヘイトを完全に掴んだのを見て、全員が安堵の笑みを浮かべた。


「こいつは魔法攻撃もある敵だけど、ぜっぴんさんの装備が完全に物理防御振りだ。ってことは多分、この連続物理攻撃を耐えるためだけに、魔法防御捨てたんだな……」


いくら魔法攻撃が少ない敵とはいえ、その勇気と覚悟はさすがナイトという感じだった。

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