表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サ終ゲームのリスタート  作者: 橋 みさと
第1章 ただ、願っただけなのに
4/30

ファイター

「実は武器ガチャでどれを引くか迷って何も引けてないんですけど、決めるために職業とか、武器についてもっと知りたいんです。教わってもいいですか?」

「え……でもここにいるってことは、前作をプレイしたのよね? 私が教えられることって……」


あ、そうか。事情を説明しないとそうなるか。


「確かにプレイしたんですけど、プレイし始めてすぐサ終が発表されたせいもあって、2か月くらいしかやってなかったんです。

しかも一人で手探りで、ちょこちょこやってた程度だから……正直未プレイの新人とほぼ変わらないんですよ」


それを聞いて、くろんさんは納得した様子。


「ファイターのことしか私は教えられる自信がないし……誰かに説明したことがないから、上手く言えないけど…………」


それでもいいなら、という感じだ。


「お願いします……!」

「分かったわ。でも……その前に1つ、確認したいの。

ガチャを何も引けてないって言ったけど……デイリーガチャは引いた?」


……え?


「一日一回だけ……ポイントなしで引けるガチャよ。朝5時にリセットされるから……忘れると今日の分が引けなくなるけど……」

「あああああ! ありがとうございます」


前作にもあったのに、完全にその存在を失念していた。

私は慌てて、武器ガチャの紹介ページを改めて開く。確かに一番下にその項目があった。そのままガチャを引くボタンを押す。


『よっしゃあ、任せとけ!』


どこから来たのか、魔晶職人のNPCが突然目の前に現れて、持っていた武器に魔晶を打ち込む演出が行われた。

ゲーム内でガチャ演出を見ると、こうなるのか……。この辺はさすが夢といった感じだ。


完成時の画面には「ランクC」と表示されていたそれを渡され、魔晶職人のNPCはまたどこかに消えた。


それは、拳大くらいの大きさの植物の種で、芽が出ているもの。

えっと……武器?


「魔導具ね」


首をひねっていた私を見て、くろんさんが答えてくれた。


「武器の詳細を見る方法……分かる?」

「いえ、そこからお願いします」

「じゃあ……まずここを開いて……」


くろんさんに指示されるがまま、私は画面を操作する。

夢だと他人に自分の操作画面を見てもらえるから楽だな……。現実だとスクショでも送らない限り、こうはいかない。


所持品リストにある武器は1つのみで、確かに先ほど渡されたものと同じアイコンがあった。長押しタッチすると詳細画面が開くとのことなので、その通りにする。

武器名欄には「癒しの種 光属性」と書かれており、確かに説明書きがあった。


「ああ、これ使えば自己回復できるんですね!

そういえばスカオーって、使い捨てアイテムが存在しなかったような……?」


少し思い出してきた。使い捨てアイテムが存在しないため、回復するにも何かの武器が必要なのだ。

ゆえに他のゲームにはよくある、商店が存在しない。当然ゲーム内通貨もない。


「そうよ。序盤は特に必要になるわね。

でも、再使用可能時間(リキャストタイム)があるから……その時間が経過するまで、使えないわ。

あとは……後列移動できるのも、結構重要」

「移動ですか? どこで見分けを?」

「この、◁のマークよ。この武器を使うと、後列に移動するって意味。

▷だと前列移動ね」


そう言えば昔、勝手に移動するなと思ってたけど、武器で決まっていたのか。


「移動に意味があるんですね?」

「そう。火力職は原則ヒット&アウェイだから……要所で後列に移動しないと駄目よ。

今はまだピンとこないだろうけど……強敵と戦闘するようになったら分かるわ」

「あ、そうだ。武器種の違いもよく分からないんですけど、ファイターは他に両手剣・斧・双剣を使えるんですよね? それぞれどんな違いなんです?」


この問いに対して予想外なことに、くろんさんは答えを探しているのか、しばし時間をおいてから口を開いた。


「両手剣だからこうという、完全に決まった用法はないわ……」

「え、そうなんですか!?」

「武器1つ1つに技が設定されていて……適性者だけが、その技を使えるって設定だけど……同じ両手剣でも、攻撃技じゃないものも、あるわ……。

だから戦闘時には、8つの武器を駆使して戦略を立てるの……」


それは想定していなかった。普通のゲームとかなり違うらしい。

だからNPCの説明もないのか、と妙に納得する。


「確かに戦闘時に、武器を複数持って戦っていた覚えがあります……。再使用可能時間(リキャストタイム)の問題だけじゃなかったんですね、あれ」

「ええ。でも……ユウさんが今知りたいのは……多分……そういうシステム的なことじゃない、でしょ……?」


確かにそうだ。


「あ、はい。そうですね。何というか……ファイターの役割かな? そういうのを知りたいです」

「それは簡単……。

物理攻撃力を参照する攻撃で……とにかく敵を倒すのが、ファイターの主な仕事よ。メイン武器となる両手剣の特性上……近くの敵にダメージを与えるのが、得意。あとは……範囲攻撃はできないけれど……一撃の威力が全職業中、最大になっているわ……」

「てことは、一般的な物理攻撃一辺倒のファイターと思っていいんですか?」

「…………少し、違う。

ファイターが双剣を使った場合は……『物理攻撃力を参照する魔法攻撃』ができるわ……。魔法剣士みたいなものはないけれど……」


なるほど、武器種によっては魔法攻撃扱いになるってことか。


「ちなみに斧も?」

「斧は……物理攻撃だけど、ちょっと使い方が特殊……。実際にやる時に、詳しく知った方がいいかも……」


確かに「システム的なこと」になるなら、今じゃなくていいな。


「そうですか。じゃあだいたい分かったので、大丈夫です」

「そう……悪いわね、あまり上手く言えなくて」

「そんなことないですよ、助かります!」


くろんさんはそれを聞いてほっとしたのか、口元が僅かに緩んだ。


「じゃあ、そろそろ行くわ……お疲れ様」

「はい、ありがとうございました!」


エモーションのお辞儀で、私はそれに答え……たつもりだったのだが…………。


「…………あれっ?」


気づいたら、布団から起き上がっていた。夢がリアルすぎて、まだ少し混乱している。

時計を見ると、普段の起床時間のほんの数分前だった。


「…………あ、そうだ。折角だからデイリーガチャ……」


スカオーのアプリを立ち上げて、武器ガチャの紹介ページの一番下を確認する。夢と同じ場所にデイリーガチャがあった。毎朝5時が期限である旨の記載もある。


「まあ、昨日分は仕方ないとして、これからの分は忘れないようにしないと」


そのままガチャを引くと、ランクAの杖が出た。

どんな技なのか確認するために、所持品リストを開き……私はそのまま硬直する。


「どう…………して……」


所持品が、2つあった。


1つはたった今ガチャで出た杖だが、もう1つは……

夢でガチャを引いた時に出たものと同じ、「癒しの種」だった。

恐る恐る詳細画面を開くと、「ランクCの光属性」というところまで、全く同じである。


「…………」


少なくとも、自分が進めたストーリー上で、武器を手に入れる演出はなかったはずだ。

ではどうやってこれを入手したのか……。実はデイリーガチャを引いたことを、忘れていた?

だがデイリーガチャを本当に昨日引いたかなんて、確認のしようがない。


その時、目覚ましにセットしていたアラームが鳴り響いたことで、私は我に返った。

思うことがないではないが、もう出かける準備をしなくてはいけないので、私はそのままアプリを閉じて布団から出た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ