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サ終ゲームのリスタート  作者: 橋 みさと
第3章 まだ、諦めたくないから
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火山地帯(昼)

水晶等級昇格から釣りのミニゲームを経て一夜明け、私はまた編成された新パーティと合流すべく、適性者ギルドに足を運んだ。


今回は最初に合流できたプリーストが全職ガチャの方だったので、恐らく他3人は単職ガチャの方だろうけど…。


「やぁ、元気にやってるか?」


「お兄さん」ボイスで親しげに話しかけられ、私は振り返る。


黒生地に金糸模様のローブと魔導書、そして使い魔のカラス。この一目でマジシャンと分かる風貌に、見覚えがあるような、ないような……。

ああ、そうか!


「蛍さん!」


一番最初の頃、私にマジシャンのことを教えてくれた方だ。あの時はまだゲーム内に閉じ込められる前だったので、チャットで会話しており、普通のゲーム内アバターしか見たことがなかったので、理解するのに時間がかかってしまった。


「何気にこうして、面と向かって会うのは初めてか。あらためて、よろしく頼むな」


どうやら蛍さんの方も、同じことを思ったらしい。挨拶しながら握手を交わした。


「どうも」


こちらは聞き覚えがある「ミステリアス」ボイスだ。予想通り溶岩を固めたような兜と赤・黒を基調とした服が目に入る。


「くろんさんもお久しぶりです! 火属性選抜チームで揃った時以来ですね」

「ええ。今日はよろしく」


さて、これであと1人来れば揃うのだが……。

その時、私たちの前に一人のレンジャーさんが現れ、


「我は堕天使、世界の真理を暴く者なり!」


そう言いつつ、ポーズをビシッと決めて登場した。


性別2の高身長に、ピンクと紫を基調とした動きやすい、身体の線がはっきり見える服。持っているものが双剣なので、それだけ見ると確かにレンジャーっぽいのだが、茶色の癖がある長髪に釣り目、そして額の真ん中にある紋様が、先ほどの発言の通り、只者ではないことを物語っている。


これが噂の、「思春期2」ボイス……。いやゆる中二病っぽいセリフが多いので、実際に使っている人に会うのは初めてだ。プレイヤー名は「よー子」となっていた。

当然、初めて会う方である。この手の方は、一度会えば忘れられないだろう。


私たちが度肝を抜かれていることに気づいているのか、いないのか、


「あなたたち、世界に愛されてるわね。よろしく頼むわ」


そう言って握手を求められた。


「あ、はい、よろしくお願いします」


悪い人じゃないのは分かるけどこれ、大丈夫なのかな……? 色んな意味で。


「俺がついてる……心配するな」


蛍さんの発言が、やたら頼もしく思えた。

早速パーティを組み、クエストを受託。火山地帯(昼)へとワープする。


「えっ、暑い!?」


着くや否や、私は他のエリアでは感じなかった高温に驚く。


それもそのはずで、山道のいたる所から時折、蒸気が噴出しているのだ。遠くの方には、溶岩が流れている様子も見える。そのせいか植物はほぼ生えておらず、不毛の地という印象だ。

歩いている魔物も被生物系か、火耐性がありそうな見た目のものが多い。


「どんなエリアかは知っていたが、まさか暑さが再現されているとはな……」


ゲームの仕様上、汗をかくことはないが、これは精神的にバテるのが早いかもしれない。手早く済ませたいところだ。


「ところでくろんさん、あなたは確か火属性特化の方よね? 他の属性の武器はどんな感じかしら?」


やはりそこはレンジャーらしく、よー子さんが質問を投げかける。


「正直……今回はあまり、お役に立てないわ……。一応1つだけ、水属性の双剣がある程度よ……」


つまりここの敵の弱点は、水属性ということか。となると、火・風・地・水の4属性で円を描く相関図になるんだな。


「蛍さんの方はどうかしら?」

「俺は闇属性特化だ」

「凄い……あなた第四邪法の使い手だったの?」


何ですか、その第四邪法って……。


「それは知らないが、別途水属性の単体攻撃魔導具を持ってるから、レア敵が出ても1発はこれで攻撃できる。倒しきれなくても、みんなで叩けば問題ないと思うぞ」

「ふむふむ、なるほど……。じゃあ雑魚敵は、私も掃除してみようかしら?」


そんな感じで戦略を立て、私たちは早速クエストクリアのために、雑魚敵に接触する。

宣言通り、よー子さんが開幕で水属性の全体攻撃魔導具を放つと、敵のHPの3/4ほどを削った。


通常補助に徹するレンジャーとして、雑魚相手とはいえ、これはかなり強い攻撃だ。蛍さんが続けて闇属性の全体攻撃魔導具を放ち、一掃する。


「もしかしてよー子さんは、水属性特化なんですか?」

「ええ。世界の真理に、また一歩近づいたわね!」


私の質問にそう答えた彼女を見て、くろんさんの表情が僅かに変わった。


「それは……もしかして、水属性選抜チームのメンバーに、よー子さんが選ばれそうってことかしら……?」

「……そうね。私はあと二段階、堕天できるから、その可能性が高いわ」

「そうなのか? じゃあこれから大変だな」


すでに火属性選抜チームとして戦っているくろんさんは、その苦労を誰よりも理解している。そして戦うために、何が重要かも。だからこそ、心配でならないことがあるのだろう。


「あの……それならもし、本当に水属性選抜チームのメンバーに選ばれたら……私の知り合いのプリーストの子が一緒だと思うので、その……何とかうまくやってあげて下さい」

「それ、どういう意味かしら?」

「実はその子、普段から一匹狼で……私以外の人とあまり、交流しようとしないんです……。

でもボス戦には、チームワークが大事だから……」


そう言えば確かに、あのプリーストさんも選抜候補の1人みたいなことを、以前誰かが言っていたっけ……。


そう思いつつ、以前一度だけ目にした、ドSボイスのプリーストさんを思い浮かべる。確かにあの方は、チームワークがかなり苦手そうだ。


「ふうん……? まあ、いいんじゃない? 何とかなるでしょ!」


あまり深く考えない質なのか、よー子さんは軽くそう返事した。


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Rock:みんなー 頑張ってるとは思うけど ここちょっと辛くないかい?

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とその時、珍しくワールドチャットでの伝達が入った。


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天尚:辛いです! 暑いです!


チョコケーキ:正直かなりきつい( _•ㅅ•)_


Miyabi:こっちがこんがり焼けちゃうよ~!

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やはりそう思っていたのは、みんな同じか。


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Rock:だよね! これ根詰めるとやばそうだから 休憩がてら 釣りを挟んでいこうと思うんだけど どうだい?


°˖✧はぴ✧˖°:賛成~♪


蛍:いいと思うぞ


鷹影:問題ございません


Rock:じゃあそういうことで 適宜釣りもやってくれよ! ボス討伐はそれを踏まえて 明日の夕方開始目標にしよう

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誰も異存はないので、私たちも湖沼地帯(昼)での釣りの時間を挟みつつ、クエストクリアを目指すことにした。

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