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サ終ゲームのリスタート  作者: 橋 みさと
第3章 まだ、諦めたくないから
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水晶等級昇格、新コンテンツ解放

「さて……ママのことが心配ではあるけど、自分の役目を果たさない方が怒られそうだしな……」


Rockさんは頭をかきながらそう呟いて、私に観戦エリア解除の指示を出した。突然観戦エリアを追い出されたので皆、先ほどまでのお祭り騒ぎから一転、きょとんとしている。


「まずは地属性選抜チームのみんな、お疲れ様!

ゆっくり祝ってあげたいところだけど、今日からはもう一仕事待ってるよ。みんな分かるよね?」


その言葉で何かを思い出したのか、「そうだった……」とか、「あれかぁ……」とか言っている。分からないのは私だけのようだ。


「というわけで全員、すぐに水晶等級に昇格したら、各自いつもの時間まで頑張ろう。解散!」


皆が指示に従ってワープ移動していく中、ウパぺんたちもまた、地属性選抜チームに深々とお辞儀してから、どこかに消えてしまった。

地属性選抜チームのメンバーも、疲れた顔をしてはいるが、動けないほど消耗している人はいないので移動していく。


「えっと……とりあえず適性者ギルドでクエスト報告、でいいのかな?」


「水晶等級に昇格したら」ということなので、それで合っているはずだ。私は適性者ギルドにワープ移動する。

予想通り、みんなここに来てギルド嬢の前に列を作っていたので、私も最後尾に並びクエストクリアを報告した。


『水晶等級昇格、おめでとうございます!

これで「火山地帯(昼)」の探索許可が出ました。それからこちらは、ギルドからのお祝いです!』


また4枚の天空海メダルを受け取り、これで合計12枚となった。

それはいいけど、ここから何を……?


「どうかなさいましたか?」


私が戸惑っているのを察してくれたようで、私のすぐ前にクエストクリアを報告した方が話しかけてくれた。


性別2の高身長に、長くて癖のない黒髪と、大きな瞳。純和風の顔立ちで、服装は水色ベースに金の花模様が入った着物と、青グラデーションの袴、黒ブーツを合わせた、いわゆる大正時代の「ハイカラさん」というやつだ。


思わず背筋を正してしまう立ち振る舞いに、LiEさんと同じ「なでしこ」ボイスなので、より大和撫子らしさを感じる。その腰には黒鞘の日本刀があり、職業のシンボルマークもファイターだった。プレイヤー名は「春水」となっている。


「あ、ええとその……皆さんはこれから何をするんですか? 私はその……」


数日ぶりに、前作は2か月くらいしかプレイしていないことを説明すると、すぐに納得してくれた。


「まあ、それで……。

実は水晶等級に昇格した後から、湖沼地帯(昼)でできることがあるんですの。私も同行させていただきますので、一緒に頑張りましょう」

「いいんですか? ありがとうございます!」

「では、湖沼地帯(昼)に戻りましょうか」


言われるがままついていくと、春水さんは目立たない小道へと進んでいく。


「この先で何があるんですか?」

「うふふふ。着いてからのお楽しみです」


しばらく進むと、珍しく水面が翡翠色をしている湖が現れた。そしてすでに何人かの人が、釣り糸を垂らしている……。


「もしかして、ミニゲームですか?」

「はい、釣りゲームです」


なるほど、湖沼地帯だからこそのゲーム内ゲームというわけか。


「まずは私が、お手本を見せますね」


そう言って春水さんは、胸元で半透明の画面を開き、私にも見えるように操作し始めた。


「全体マップにも表示されますけれど、この翡翠色の水面が、釣りゲームができる場所の印です。この場所以外にもいくつかありますよ。

釣り竿とルアーを選んだら、湖の淵に立ちます。このボタンを押すと、ゲーム開始です」


この辺りの操作は、戦闘時と同じように自動でやってくれるらしい。美しい弧を描いてルアーが飛んだ。

本物の釣りなら、ここで待ち時間が発生するところだが、そこはゲームだからか、即釣り竿が反応する。


「獲物がかかると、このように針がグルグル回り始めますので、この赤いラインのところを狙って針を止めると……」


春水さんは慣れた手つきでボタンを押し、見事に赤いライン上で針を止める。鮎に似た感じの青い魚を釣り上げた。


「簡単に釣りあげられます。後はこれを繰り返すだけです」

「なるほど……。でも何でみんな、これを頑張ってるんですか?」


春水さんは少しだけ、困ったような顔を見せた。


「実は釣果で得られる報酬で、ステータスを上げられるんです」


なるほど、道理でみんな必死にやるわけだ。


「これはHPボーナスの魚ですよ。

釣る場所と選んだルアーの組み合わせで釣れる魚が変わるので、みんな自分の希望ステータスを上げられる魚から狙ってますね」


となると当然、一日で終わるものではないのだろう。今後は暇を見つけて、各自やることになるはずだ。


「では、やってみてください」


見様見真似だが、要は目押しさえ頑張ればいいらしい。1回目は針止めに失敗し何も釣れなかったが、2回目は黄色いライン上で針を止められた。自動で獲物を釣り上げる。


「……これも釣果に入るんですか?」


釣りあがった木片を見て、私は頬を引きつらせた。


「いえ……残念ながら。気を落とさずに、どんどん釣りましょう」


よく見ると、少し離れた場所でも「うわ、また藻だよ!」とか、「臭そうなのきた!」とか言っているので、一筋縄ではいかないようだ。


「まあ、そろそろボーナスタイムが来ますよ」


空を見上げて言うので何のことだろうと思ったら、「天空海」がゆっくりとこちらに近づいてきていた。丁度今釣っている湖に差し掛かったところで魔光雨が降りそそぎ、湖面が輝き始める。


……って今、一緒にウパぺんが落ちて来なかったか?


「今のうちに釣ってくださいね」

「えっ? は、はい!」


同じ要領でやったが、今回の竿の引き具合は、これまでとは明らかに違っていた。黄色いライン上で針を止めたのに、エイが釣りあがる。なるほど、良い釣果が出やすい時間なのか。


ものの数分で湖の輝きは元通りになったが、その間に春水さんは見事、サメを釣り上げた。他にも巨大なヒトデや、カニを釣り上げた人もいるようだ。


何で湖なのに、海の生き物が釣れるのかなんてことは、ゲームだから突っ込んではいけないんだろうなぁ……。

いや、天空海は一応海だから、アリなのか……?


「おっ!」


初めて赤いライン上で針を止められた。ボーナスタイムは終わっているが、これは期待したいところだ。

釣りあがったのは……まさかのウパぺんだった。


「まあ、それはいい釣果ですよ。おめでとうございます」

「さっきまで一緒に応援していたことを考えると、釣っていいんですかね……」

「これについては昔からの仕様ですので、何とも……」


さすがに春水さんも、困った顔をする。

ちなみに、ゲーム的にキャッチ&リリースなので、釣ったものを食べるとかはないらしい。心底安心した。


あっという間に時間は過ぎ、現実世界の21時になったので、


「またお会いしましょう」


そう言って春水さんは、個人部屋へ引き上げていったので、私も釣りを止めて休んだ。

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