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サ終ゲームのリスタート  作者: 橋 みさと
第3章 まだ、諦めたくないから
30/52

湖沼地帯(昼)

錫等級に昇格した翌日、あらためて新パーティが編成されたので、適性者ギルドで待ち合わせとなった。今回はファイターさんが全職ガチャの方かつナイト無なので、私を除く他3名は全員、単職ガチャを引いた方らしい。

このパーティ編成を考える人も、毎度大変だろうな……。


「あら、久しぶりねぇ~♡」


金色の4枚翼に女の能面。極めつけの「オネェ」ボイスで、私はすぐに思い出す。


「熾天使セラフィムさん! お久しぶりです!」


忘れるはずもない。最初に私に、プリーストのことを教えてくれた方だ。顔を見かけることはあったが、こうして話をするのは5日ぶりになるのかな?


「よろしくっ♪」


次に来たレンジャーさんは、初めて会う方だった。

性別2の低身長で、長い金髪に紫の瞳。その手には何故か星が付いた小さなステッキを持っている。ボイスは火属性選抜チームのMiyabiさんと同じ「パティシエ」なのだが、可愛らしいコック服に身を包んでいるのでより、それらしく感じた。プレイヤー名は「エレ」となっている。


「こちらこそ、よろしくです」


と、簡単に挨拶を済ませたところで、


「待たせちゃったうー! よろしくだう!」


「キャラ語尾2」のボイスで、最後の1人が私の背後から声をかけてきた。振り返った私は……驚きで一瞬固まる。


黒とピンクを基調としたボディスーツに、鳥の羽根で作ったようなピンクのマント。高身長で同色の坊主頭なので一瞬性別1かと思ったが、胸があるので性別2のマジシャンらしい。

だが私が一番驚いたのは……女の能面で顔が隠されていたことのほうだ。プレイヤー名は「嶋耕作」となっていた。


「よろしくお願いします」


そう言うので精一杯だ。まさか能面が2人揃うとは。


「あっ! セラ子がいるうー!」

「んまぁ♡ 嶋ちゃんじゃない♡」


気付くや否や2人は向かい合い、「キャピキャピ」という擬音が聞こえてきそうな感じで、互いの手を握り合って喜んだ。不思議なもので、2人とも性別不詳な感じのアバターだが、そうしていると姉妹っぽく感じる。


「もしかして前作からのお知り合いなんですか?」

「うふ、そうなの♡」

「能面付けてる人はみんな、仲良しだうー! 能面好きの集まりもあったくらいだうー!」

「あったわね~♡ 私はオネェの集まりの方だったけど、能面も好きだからどっちにするか迷ったわぁ♡」


頭の中でその様子を想像してみる。……どちらの会も、かなり濃い集まりだったんだろうな。もしかして、ウパぺん好きの集まりなんてものもあったのかな……?


「って、話し込んでちゃダメよね。そろそろ行かなくちゃ♡」


というわけで早速パーティを組み、湖沼地帯(昼)のクエストを受託すると、私たちはそこにワープ移動した。


「うわぁ、綺麗なところですね……!」


森林地帯(昼)は「静かで神聖な森」、山岳地帯(昼)は「岩だらけで見通しがきかない山」だったが、湖沼地帯(昼)は大小さまざまな湖沼が集まる「絶景スポット」になっていた。


1つ1つの湖沼の青色が微妙に異なっており、そこに日光が反射し輝くのも美しいが、稀に上空を雲のように「天空海」がゆっくりと横切り、そこから魔光雨が降る様子をはっきり見ることができるのも新鮮だった。音楽がまた静かで、この場所にとてもマッチしている。


「ここは前作から、人気スポットなんだうー! でも魔物がいるから、のんびりできないのが難点だうー!」


嶋耕作さんが言うように、確かにそれがなければ、最高の観光地だな。予想通り水辺にいそうな水属性の魔物が、あちこち徘徊していた。


「あっ、でもボスの周辺なら魔物がいないから、私は前作では時々、そこでのんびりしてましたよっ♪」

「私もみんなで写真撮影してたわぁ♡ ボスが写らないように工夫して♡」


エレさんも熾天使セラフィムさんも、この場所に思い入れがあるらしい。

と、その時。私は丁度上空を横切ろうとしている天空海の真ん中あたりに、何か地面らしき部分と黒い影があるのに気づいた。


「もしかしてあれが、『海の女神が住まう場所』と『終焉をもたらす竜』ってやつですか?」

「多分そうね♡ でも前作で行けなかったところだから、あの場所のことを知ってる人はいないわ♡」


どうして海水が雲のように空をたゆたうのか、なんてことはゲームなので突っ込まないが、神秘的な場所なのは確かだ。


「ところでこのメンバーだと、嶋耕作さんがメインで雑魚敵倒すことになりますよね? 支援の方向性決めるために、得意属性教えてもらえますか?」


やはりレンジャーにとって、それはかなり大事なことなのだろう。エレさんがそう切り出した。


「うーは水属性が得意だうー! 全体攻撃魔導具の地属性は出なかったから、水属性でやるうー!

山岳地帯(昼)ではお荷物だったから、やっと少し活躍できるうー!」

「つまり、水属性は地属性に弱いんですね……。ってことは、ここのボスと戦うのは地属性選抜メンバーってことですか?」

「はい、そうなります! 私も水属性の支援は難しいので、全体的に属性以外の支援メインにしますね♪」

「勿論、私も手伝うわよ♡」


というわけで、早速雑魚敵をどんどん倒していく。3人分の支援が1人にかかれば、弱点属性をつけなくても問題なく一掃できた。

さすがに3回目の装備集めともなると、雑談する余裕も出てくるようで……


「そういえば昨日、ゴールデンウパぺんが私たちの雄姿を見に来てたじゃない? あれって、次も来るのかしらぁ?」


雑魚敵と戦いながら、そんな話になった。


「うーは見に来てほしいうー! その方が楽しいうー!」

「それは甘々です、お菓子より甘いですよ。見た目はアレでも、中身は多分アイですよ? そう簡単に気を許していいんでしょうか?」


エレさんの言うことはもっともだ。だが……


「……実はあの戦闘後、ゴールデンウパぺんが風属性選抜チームを労ってたんですよ」


私は少し迷ってから、昨日のことを明かすことにした。


「起きてる人には1人ずつお辞儀して、力尽きて寝てた人の頭を撫でてたんです。

確かに私も、アレの中身はアイだと思ってますけど……つい『また見に来てくれませんか?』って言っちゃいました。返事はくれませんでしたけど」


さすがに他の4人は皆、私の話に目を丸くしている。


「多分アイはアイで、あれを見て何か感じるものがあったんだと思います。なら、もっと知ってほしいなって」

「そうねぇ……確かにそれなら、見に来て知ってほしいわぁ♡ 勿論、注意しながらになると思うけど♡

考えたら、私たちもアイのことをよく知らないじゃない? お互い誤解してることがあるのかも♡」

「誤解なら、解かないと駄目だうー!」

「……そうですね、確かにそういうことならっ♪」


と、その時、ワールドチャットが動いた。早速誰かがレア敵に遭遇し、報告したのかと思ったのだが、


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ぜっぴん:報告 今度はここのエリアチャットで スカオー語の「ウパぺんの発言」を見つけたよ!

スクショしたから、後で花図鑑さんに提出するね!

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これまた予想外の内容だった。


探索エリアには必ずパーティで入ることにしているため、みんなパーティチャットを使用する。そのため通常、探索エリアのチャットを開くことがない。

逆に言えば、ウパぺんしか湖沼地帯(昼)のエリアチャットを使うことがなかったので、ログが流れず残ったのだろう。

今回は私も、余裕をもってそのスカオー語を見ることができた。


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藤:報告感謝 こちらでもスクショできたため提出不要 今夜分析予定


LiE:ではその頃 お手伝いに伺いますわ

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一旦そこで「ウパぺんの発言」の件は終わりとなったが、


「これってどう見ても、ウパぺんが複数いるわよねぇ……?」


そのログは、ウパぺんたちが会話しているとしか思えない書かれ方だった。

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