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サ終ゲームのリスタート  作者: 橋 みさと
第2章 その、力は小さくとも
27/53

キングドロセラC

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「休んでいい? ほんのちょっとだけ」

「駄目だよ……ぼくも休みたいけど」

「なにボーっとしてんだ? 戦闘不能になるぞっ!」

「それは嫌~」

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ついに疲労が表に出始めたか。

Ruyさんは物理与ダメージDOWNの魔導具を使用しつつ、2人を奮い立たせる。


「キングドロセラへの物理与ダメージDOWN20%付与を確認」


キングドロセラが消化液を振りかける演出がなされた。言葉にはしていないけど、Ruyさんと鷹影さんも時折自分を鼓舞している様子がうかがえる。


「味方全員に〈状態異常〉溶解20%付与を確認」

「アークタルラの時は、ナイト以外のメンバーが敵のダメージ食らうことって全体攻撃のみだったけど、状態異常の追加ダメージはナイトが引き受けられないもんな……」

「ナイトと違って痛みに慣れてないんだから、そりゃ疲れもするよね」

「むしろ痛みに耐えられるナイトが凄いんだよ。照輝さんと言い、Rockさんと言い、何か秘密の特訓でもしてるのか?」


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キングドロセラ「π/Ω±Zk」

ユウ:後列移動よろしく

「このタイミングなら、行動時回復の効果が高いまま延長できるぞっ!」

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縄跳びの合間に、Ruyさんが行動時回復をかけ直す。


「味方全員の行動時回復(中)↑25秒延長を確認」

「そうか、効果時間内に同一効果の武器を再使用するから、それができるんだ!」

「とはいえ毎回これができるギミックじゃないし……行動時回復については、今回だけと思った方がいいな」

「ラガマフィンさんの必殺技ゲージMAXを確認」

「えっ、ちょっとこれRockさん間に合う!?」


どうやら1つ前の武器を使用してから、次の武器の使用が可能となるまでの時間が、ギリギリになってしまったらしい。結果的にRockさんが魔導具で後列移動した直後に、即死攻撃が前列を襲った。


「キングドロセラへの与HP回復量DOWN30%付与25秒を確認」

「Rockさんの必殺技ゲージMAXを確認」

「えっ、Rockさんもう必殺技ゲージMAX!?」

「逆鱗が行動時ダメージで消費されるから早いんだ! それ踏まえて槍を戦略に組み込んでるのかも!」


鷹影さんは即死攻撃中にもう双剣の詠唱に入っていたので、キングドロセラの根が引っ込んだ直後に前に出る! 少しずつだが確実に、その攻撃はもう1つの花の蕾を包む鉱石部分にヒットしていた。


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「もう昼寝の時間なのに~!」

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再使用可能時間(リキャストタイム)が経過したようで、ラガマフィンさんはキングドロセラに魔砲を向けた。Dylicaさんから自身に付与された物理攻撃系のバフを弾として魔砲に込め、引き金を引く!

必殺技ゲージを使用した風の多段攻撃が放たれ、キングドロセラのHPを再び大幅に削った。


「よし、うまく縄跳びしながら必殺技出せたぞ!」

「でもあの言動だと、精神的にはもう限界なんじゃ……」


他にも、Dylicaさんがすでに肩で息をしている状態だ。今のところ何とか食らいついてはいるが、危険な状態であることに変わりはない。


詠唱武器では間に合わないと判断したのだろう。Rockさんはこれまで初手でしか使っていなかった、唯一詠唱時間のない前列移動武器である自己被ダメージDOWNの剣盾を使用し、移動した。その直後にまた、即死攻撃が誰もいない後列を襲う。


「今のは本来不要な1手だけど……避けるにはそれしかなかったな」

「それってつまり、Rockさんにも判断力の低下が出てきてるってことじゃ……」


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キングドロセラ「♡¥ψh%д」

「うおおおおおおっ!!」

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キングドロセラが回復詠唱を開始した直後、私たちの懸念を払拭するようにRockさんが吼え、必殺技ゲージを使用した風の槍攻撃でHPを削る。

これを見たラガマフィンさん、Ruyさん、Dylicaさんの3人がハッとした表情をし、武器を握り直したり、頭を振ったりした。


だが鷹影さんだけが、何かを考えつつ双剣攻撃を続けている様子がうかがえる。

キングドロセラのHPがまた、回復した。


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「Rockさん、単体攻撃前でお忙しいのを承知で言います。このままではあと僅かのところで、間に合わないかもしれません」

「奇遇だなぁ、お父さんもそう感じてたよ。

とりあえずみんな、あと少し頑張れ! 終わったらウパぺんが労ってくれるぞっ!」

キングドロセラ「X&〆Rω☆」

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風属性選抜メンバーの他3人も同じことを薄々感じていたのか、特に驚きはないようだが、


「えええええっ!?」

「どどど、どうすんだよ!?」


観戦エリアの方は大混乱だ。その間にもRuyさんはキングドロセラに物理与ダメージDOWNをかけ直し、Rockさんも単体攻撃に備えて後列移動している。まさか戦闘中に、作戦会議するつもりか!?


「キングドロセラへの物理与ダメージDOWN20%付与を確認」

「鷹影さんの必殺技ゲージMAXを確認」


キングドロセラの一番大きな葉が、Rockさんをバシンと打ち据える。HPがまた1/3ほど抉られたが、Rockさんの目はまだ活きていた。


「ラガマフィンさんの必殺技ゲージMAXを確認」


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キングドロセラ「※∀♯M△Θ」

「……ウパぺんは美味しいのか……?」

「食べられないぞっ!?」

「ラガマフィンお姉ちゃん、食べないで!? ぼくウパぺんに褒められたいから!!」

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いよいよラガマフィンさんは限界が近そうだ。もうじきアークタルラ戦の戦闘時間を超えるのだから、無理もない。

これを聞いていたゴールデンウパぺんは意味を正しく理解しているらしく、明らかに挙動不審になったが、観戦を続けた。


鷹影さんの必殺技大剣攻撃と、ラガマフィンさんの必殺技杖攻撃がほぼ同時に繰り出され、キングドロセラを切り裂いたが……あとほんの僅か、HPが残る。


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「ふむ……やはり倒れませんね……」

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「Dylicaさんの必殺技ゲージMAXを確認」

「味方全員に〈状態異常〉溶解20%付与を確認」


そして状態異常が付与された直後、Rockさんが1分前に付与していた物理・魔法与ダメージDOWNの効果と、Ruyさんが効果を延長していた行動時回復がほぼ同時に切れた。

これで4周目なので、最後の周回となる。


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「Ruyさん、地耐性メイスはキャンセル! お父さんに永続バフくれるかい?」

「なるほど……その提案、乗りましょう!

行動時回復も遅れて構いません、バフ・デバフ付与優先で! 全員必殺技ゲージも使い切りましょう!」

「えええっ!? わ、分かったぞっ!」

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風属性選抜チームはまだ、諦めていない。ならば私も、自分にできることをしなくては。

私は念のため残り戦闘時間を確認してから、最後の死の縄跳びのセリフに備えた。


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キングドロセラ「$iΓЙ-Σ」

ユウ:前列移動よろしく 残り24秒です!

「ぼくはこれが、最後の追加できるデバフだよっ!」

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Dylicaさんは前列移動しながら、必殺技ゲージを使用し弓の追加デバフを放った。Ruyさんも指示通り、キングドロセラに槍でデバフを付与しつつ前列移動する。状態異常の追加ダメージが、容赦なく入った。

他の3人も攻撃の手を緩めず次々移動し、誰もいない後列を即死攻撃が襲う。


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「じゃあ予定になかったけど、Rockさんに!」

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あの砂時計の形をした魔導具を、Ruyさんは後列移動しつつRockさんに向けて使用した。直後にDylicaさんが味方全体の攻撃バフを延長する武器を使用したため、Ruyさんにも再度、攻撃バフが僅かながら付与される。

ラガマフィンさんとRockさんが後列移動した直後、今度は誰もいない前列を即死攻撃が襲う。


「Ruyさんの必殺技ゲージMAXを確認」

「キングドロセラへの与HP回復量DOWN30%付与25秒を確認」


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キングドロセラ「♡¥ψh%д」

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ここでようやく、Ruyさんが行動時回復をかけ直した。だが物理与ダメージDOWNが減っているので、回復量の方が少ない。鷹影さん、Dylicaさんの自傷ダメージが気になるところだが、癒したところで制限時間が来たら全滅なので、このまま続行するつもりだろう。


「ラガマフィンさんの必殺技ゲージMAXを確認」

「くそっ、あとほんの少しなのに回復される!」


その言葉通り、あと針1本分というところで無情にも、キングドロセラのHPが回復する。


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「昼寝の邪魔だぞ~!」

キングドロセラ「X&〆Rω☆」

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だがその直後に放たれた、ラガマフィンさんの魔砲による必殺技多段攻撃が、回復した分のHPの大半を削り取った。鷹影さんも双剣で追撃する。


「おおっ!」

「いけるかっ!?」

「ここまで来たらもう気合だろ!」

「通常攻撃でクリティカル出てくれぇぇ!」

「Rockさんの必殺技ゲージMAXを確認」


キングドロセラの一番大きな葉が、バシンという大きな音と共にRockさんを打ち据えた。耐性防御が減っていたので、HPが2/3ほど削られる。元々状態異常による追加ダメージが行動時回復を上回っていたので、瀕死に追い込まれた。


「ひええっ」

「危ねえ! ……まさかこれも計算のうちか!?」


一瞬、Rockさんの身体がぐらりと傾いたが、すんでのところで踏みとどまる。ぎり、と奥歯を食いしばる音が、ここまで聞こえてきそうな形相だ。とはいえやはり疲労がピークに達していたのだろう、ほんの僅かだが行動が遅れる。


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キングドロセラ「☆kΣΘд〆」

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そして本当に最後の……強制終了を意味する攻撃詠唱が開始された。


分析戦闘でも、これについては対処方法なしと結論付けられている。この詠唱が終われば、回避不能の3多段ダメージカンスト攻撃が彼ら全員に襲い掛かるのだ。


つまり……味方もこれが最後の攻撃チャンスとなる!!


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「お父さん、お兄ちゃん、お姉ちゃん、ありがとう」

「ありがとなんだぞっ!」

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結果がどちらでも、受け入れるということなのだろうか。感謝の言葉を述べながらDylicaさんはデバフを再付与し、Ruyさんは必殺技ゲージを使用して槍攻撃を放つ。

この槍は必殺技でデバフの量は増えないが、攻撃威力が上がるので、なけなしの力を振り絞ったのだ。


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「すまん」

「いいえ、よき戦となりました」

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必殺技ゲージをすでに使い切っている火力2人は、それぞれ大鎌と双剣でHPを削る。また針1本分程度のHPが残った。後はもう、Rockさんの攻撃だけだ。


「あああああああ」

「頼む、足りてくれ!!」


気が付くと、全員が祈るように見ていた。


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「お父さん、カッコいいだろ!」

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必殺技ゲージを使用したRockさん渾身の剣盾攻撃が、旋風となってキングドロセラを切り裂く!

戦闘時間が停止し、永遠にも感じる沈黙が流れた後……。


パリンという澄んだ音と共に、キングドロセラの蕾を包んでいた鉱石部分が砕け散る。植物なので疑問符を浮かべることも、撤退することもなかったが、蕾だった2つの白い花が咲き、動かなくなった。


「足りたぁぁぁぁ!!!」

「お父さん、カッコいい!!!」

「もう……駄目だと思ったのに……よく心折れずにやり遂げたよ……」


戦闘時間は、残り2秒で停止していた。そのまま戦闘終了エリアに移行する。あとはここにあるベルを破壊すれば戦闘終了だが……選抜メンバー全員がその場に倒れ込んだ。


まあそれも当然だろう。鷹影さん、Dylicaさんの2人は状態異常の追加ダメージ+自傷ダメージで瀕死状態だし、全員長時間の精神的疲労から解放されたのだから。


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「寝るぞーーーーーー!!」

「ごめんごめん、気が抜けた。さすがにお父さんも、もう駄目かと思ったよ」

「私も一瞬、全滅を覚悟しました。

ですが、この勝利は貴方のおかげです。あの作戦変更がなければ間に合わなかったでしょう。よい判断でした」

「うん、ぼくもそう思う」

「感謝するぞっ!」

「すー……すー……」

「ラガマフィンさんはもう寝てしまったようですね……」

「ぼくも眠いから、寝ていい……?」

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返事を待つことなく、Dylicaさんも寝息を立て始める。2人の寝顔を見て、ようやく残り3人は顔をほころばせた。

ベルを破壊するため、鷹影さんが静かに双剣の詠唱を開始する。


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「ちょっ、それ自傷武器!」

「……ああっ!」

「おっと危ない」

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何だかんだで彼も疲れていたのだろう。危うく鷹影さんが自滅するところだったが、Rockさんが先に詠唱のない武器でベルを破壊し、事なきを得た。全員が探索エリアに戻る。


そして……


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オブザーバーの職業特性により、観戦エリアにいるプレイヤー全員に、被観戦パーティが獲得したものと同一の経験値・ストーリーフラグが与えられました

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モニター全体にその文字が表示されると同時に、受託していた「錫等級昇格クエスト」の達成条件を満たした旨の通知が、各自の胸元くらいの位置に出した透明の画面からポップアップ表示された。観戦エリアはすでにお祭り騒ぎで、しばらくは静まりそうにない。


その様子を見たゴールデンウパぺんは静かにモニターから離れ、観戦エリアを出……ようとしたが段差に苦戦していたところ、たろ吉さんに抱え上げられ共に観戦エリアを出た。


そう言えば、観戦エリアは私がいなくても維持できるのだろうか……?

ちょっとした興味もあり、私は観戦エリアを解除する操作をせずに、たろ吉さんたちを追った。

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