キングドロセラB
物理与ダメージDOWNの武器を2種類使ったことで、1回目より状態異常による追加ダメージは減ったものの、行動時回復がここで切れた。集中力を切らさないよう、みんな必死で耐える姿が痛々しい。
----------------------------------------------------------
「今度は鷹影さんに、バフつけるぞっ! 行動時回復は縄跳び後まで待って!」
「了解です!」
----------------------------------------------------------
多少無理をしてでも、HP削りを優先する作戦のようだ。Ruyさんがまた砂時計の形をした魔導具をひっくり返しながら頭上に掲げる。
今度はRuyさんの身体を青い光が包み、鷹影さんの身体を赤い光が包んだ。
「Ruyさんの必殺技ゲージMAXを確認」
「Dylicaさんの必殺技ゲージMAXを確認」
----------------------------------------------------------
キングドロセラ「$iΓЙ-Σ」
ユウ:前列移動よろしく
----------------------------------------------------------
この機会を待っていたというように、鷹影さんが前列移動しつつ必殺技ゲージを使用した大剣攻撃を繰り出し、風の大斬撃がキングドロセラに決まる。ついに蕾を包んでいた鉱石部分が、1つ砕けた。
「よし!」
「やった!」
他の人たちも次々と前列移動武器を使用し、即死攻撃を避ける。行動時回復がすでに切れているので、状態異常の追加ダメージが次々と入った。縄跳び後に行動時回復をかけると宣言していたので、あと2~3行動はこれに耐えてもらうしかない。
後列の地面からまたドーンという大きな音と共に、キングドロセラの根が勢いよく伸びた。今回はみんな早目に避けられたが、
----------------------------------------------------------
「必殺技ゲージ使ってデバフ増やすよ。みんな頑張って!」
----------------------------------------------------------
今度はDylicaさんが敵の即死攻撃が来るかどうかくらいのタイミングで武器詠唱を開始したので、結果的にキングドロセラの根が引っ込んだ直後に後列移動することとなる。
「Dylicaさん、かなりギリギリを攻めてるなぁ」
「今回は敵の行動がかなり早いから、あれくらい攻めの姿勢じゃないと、詠唱武器が多いレンジャーは立ち回りできないんだろうな」
他の人たちも、今度は次々と後列に移動する。
「キングドロセラへの与HP回復量DOWN30%付与25秒を確認」
「あっ、そうか! 今Rockさんが使った魔導具が、キングドロセラの回復を阻害してるんだ!!」
「なるほど! Rockさん自身は火力2人ほどHP削れないけど、回復阻害するなら、その分ダメージ与えたのと同じ貢献度あるもんな!」
「列移動のついでに早めに与HP回復量のデバフしとけば、次の回復行動まで効果続いてるから無駄がないわけだ! よく考えられてる!」
まさに「押して駄目なら引いてみろ」というわけか。鷹影さんかRockさんあたりが思いつきそうな戦略だ。
「ラガマフィンさんの必殺技ゲージMAXを確認」
----------------------------------------------------------
キングドロセラ「♡¥ψh%д」
「みんな待たせたぞっ!」
----------------------------------------------------------
必殺技ゲージを使用し、Ruyさんがメイスを振る。
「味方全員に行動時回復(中)↑付与25秒を確認」
「プリーストなのに、そこで必殺技ゲージ使っちゃうんだ!?」
「いや……今回はそもそも、戦闘不能が1人でも出た時点で、制限時間内に倒せないよ。なら蘇生のために必殺技ゲージ残さず、使っちゃうのは手でしょ!」
今のところ順調に見えるが、今話があったように、キングドロセラ討伐の一番の難関は制限時間だ。分析結果によると、キングドロセラ戦の制限時間は2分だが……ここまででもう、1分弱経過している。
「短い制限時間だと焦るからミス出やすいのに、みんなバフ・デバフ切らさずによく動けてるよ」
「しかも今回、縄跳びが間に挟まるせいで、余計罠にはまりやすくなるもんな」
「行動時回復が付与されてても、状態異常付与の演出による痛みそのものは消えないのかな?」
「みんなの顔見る限り、そうだろうな。あれ長時間だから、精神的なダメージが地味にきついんだよね」
実際分析戦闘中にも、集中力を切らして即死攻撃を避けきれず、戦闘不能になったプレイヤーが何人もいた。風属性選抜メンバーにも、見た目以上に疲労が蓄積しているはずだ。
そしてさらにプレイヤーの心を折るように、キングドロセラのHPが回復する。
「くそっ、本当にこの回復は厄介だな!」
----------------------------------------------------------
「まじめんど……」
----------------------------------------------------------
ラガマフィンさんの必殺技ゲージを使った杖攻撃は、大きな竜巻を呼び、キングドロセラを切り裂く。だが先ほどの回復分を削り切るには至らない。ラガマフィンさんの顔が、悔しそうに歪む。
先ほどから鷹影さんも、器用に移動しつつ双剣でHPを削っているのだが、縄跳びのために待機する機会が、どうしても多くなっている。
「いくら風属性の単体攻撃の中で一番古い杖使ってるとはいえ、あれは精神的に堪えるよなぁ……」
「分かるわー。折角HP削ったのに、すぐ削り切れないほど回復されるんだもんな」
「かといって焦って動くと、即死攻撃食らうし……ほんと植物らしい、真綿で首を絞めてくる奴だよ」
----------------------------------------------------------
キングドロセラ「X&〆Rω☆」
----------------------------------------------------------
またキングドロセラの一番大きな葉が、バシンという大きな音と共にRockさんを打ち据えた。物理与ダメージDOWNが20%追加されたことで1回目ほどの威力はなかったが、それでも1回目と同じ耐え方でHPが1/3ほど持っていかれる。
ここでやっと状態異常の効果時間が切れたが、
----------------------------------------------------------
キングドロセラ「※∀♯M△Θ」
----------------------------------------------------------
また次の状態異常付与の詠唱が開始された。これで3周目か……。




