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サ終ゲームのリスタート  作者: 橋 みさと
第2章 その、力は小さくとも
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山岳地帯(昼)

銅等級に昇格した翌日、より多くの人と仲良くなることと、パーティごとのレベル差を少なくすることを目的に、新しいパーティが編成された。


ちなみにプリーストさんが全職ガチャの方かつナイト無なので、長期戦に向かないことを考慮し、私を除く他3名は全員、単職ガチャを引いた方が選出されている。


「よろしくね?」


まずはファイターのZEROさん。

性別2の中身長で、黒・青を基調とした肩を露出するドレスとロングブーツが、狼耳と青い髪・瞳にぴったりだ。宝石が多いデザインなのもあって、ファイターと言うよりは、夜に高級なお酒を提供する店にいそうな雰囲気である。

2匹の子狼を伴っていいるのがまた、いい味を出している。


どこかで聞いたことのある声だと思ったら、ナイトの紅央さんと同じ「お色気」ボイスか。

でも紅央さんとは違い、ZEROさんのほうは何かこう、異性をたぶらかして楽しんでそうな雰囲気がある。


「おはようございます」


次にマジシャンのLiEさんは、紫色たれ目と髪で、同色のフリル付きのローブ・マント・帽子に身を包んでいる。

私より低い性別2の低身長だが、とても丁寧で優しい言葉遣いな「なでしこ」ボイスなので、かなり大人びているように感じた。


「よろしくお願いします」


最後にレンジャーのU-berryさん。

性別1の高身長なのだが、緑色の長い髪といい、綺麗めの面立ちといい中性的で、何となくふわっとした印象だ。

どちらかと言うとプリーストが着ていそうな、裾が長い白の上衣とズボン。スカオーのマスコットキャラ「ウパぺん」がレンジャーに扮したものが2匹お供にいるのだが、それに加えて、クマドリがある犬面を頭に付けているせいか、どこか堅苦しさも感じた。ボイスは好青年系の「さわやか1」だ。


「こちらこそよろしくです」


互いの挨拶が終わったので、私たちは早速ギルドで新クエストを受注し、山岳地帯(昼)へワープする。今日の目標は、地属性装備の完成だ。


見晴らしの良い山の風景を想像していたのだが……思ったより見通しがきかないエリアのようだ。高低差があるだけでなく、道が狭くて、かなり曲がりくねっているせいだろう。

稀に魔光雨が降り、道のわきに僅かに生えた植物が色とりどりの花を咲かせるさまは美しいのだが、岩だらけなので寂しい感じがした。


ゲーム内なので、登山するにあたり体力や体格差で問題が発生することはないが……その狭い道を、山にいそうな動物型・植物型の地属性魔物が歩き回っている。


「ここを進むんですか……」


他のパーティの人たちは慣れているからか、ひょいひょい避けて進んでいくのだが……初見の私は正直、討伐クエスト対象敵がいる目標地点まで、ちゃんと避けて進める自信がない。


「ぶつかっても大丈夫ですよ? 僕たちが倒せばいいだけですし」


U-berryさんが私の考えていることを察してそう言ってくれたのが、ありがたかった。


「でも進む前に、火力お2人の得意属性を伺ってもいいですか? その結果で支援方法を決めます」


そうか、レンジャーさんには、そういう確認が大事なんだな。


「私は光ね。でも一応、ファイター用の風属性全体攻撃魔導具があるから、ザコにはこれを使うわ」

「わたくしは地属性ですわ。ですが風属性の全体攻撃武器はございませんので、弱い敵はお任せいたします」


どうやら地属性の魔物には、風属性が弱点らしい。となると、私も使う武器を言った方がよさそうだな。


「あの、私は初手でZEROさんに、この支援系武器を使う予定ですけど、それでいいですか?」

「ええ、いいわよ」

「なるほど……では小物の場合は、初手で1秒ください。ユウさんとは被らない支援をします。

レア敵の場合は、属性系支援ではないものを中心にかけますね」


確認が終わったので、早速山道を進む。案の定私は敵シンボルにぶつかりまくったが、その都度2人分の支援系武器で増強された、ZEROさんの風属性全体攻撃で雑魚敵を蹴散らせたので、案外早く着けそうだ。


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梅:猿型レアに遭遇。分析を開始。


天尚:あ、ちょっと待ってください! ワルチャにいつの間にか、「運営からのお知らせ」って言うのが書かれてます!


熾天使セラフィム:本当だわぁ♡ これ何かしらぁ?


Dylica:って、全然読めないよ!

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運営からのお知らせ? しかも読めないってどうして?


私は早速、岩を背にできる場所まで移動し、胸元にある半透明の画面からワールドチャットの履歴を開いたのだが……。


「何ですか、これ……?」


英語やドイツ語などの実在する外国語ならまだしも、全く見覚えのない文字で書かれていたので、さすがに困惑した。

そもそも、本当に「運営からのお知らせ」なのかすら疑わしい。何かのバグだと言われる方が、まだ納得できる。


「まあ、その場所は!」

「えっ?」


顔を上げた瞬間、岩の上から敵が降ってきて、戦闘エリアに移行した。それにより画面が、戦闘用の操作画面に強制的に切り替わってしまう。


どうやら行き止まりだと思っていたここは、高低差で分かりにくいだけで進める道だったらしい。しかもよりによって、出現したのは鳥型のレア敵「ハイロカバード」と雑魚の「ロカバード」2匹だ。これではワールドチャットを見る余裕もない。


「すみません、皆さんもワールドチャット確認しようとしてたのに」

「フフッ、青いわね」

「折角出ましたので倒しましょう。少々お待ちいただけますか?」


言いながらもう、みんなレア敵を倒す準備に入っている。私も急ぎ支援を開始した。

ZEROさんの斧の一撃でロカバード2匹の鉱石部分は砕け、撤退する。


「クエエーッ!」


ハイロカバードが物理詠唱を開始した。


行動分析もしなくてはならないので、ガッツを付与させた私だけが前列に移動し、他4人は後列に移動する。その直後、石つぶてが味方全員に襲い掛かった。全体攻撃か!


だが森林地帯(昼)で作った風属性装備がかなり役立っているようで、思ったほどのダメージはなかった。プリーストさんが素早く全体回復メイスを使用する。


「お任せください」


早速必殺技ゲージを使ったLiEさんの地属性杖攻撃と、ZEROさんの光属性双剣攻撃が、ハイロカバードに決まった。U-berryさんの援護がかなり効いていたようで、ハイロカバードの鉱石部分はこれで消滅し、撤退していく。魔法防御の討伐ボーナスが入った。


「こっちよ」


ZEROさんが安全地帯に誘導してくれたので、私は急ぎその場所に移動する。そして……その場所に立てられた看板に、釘付けになった。


これだ、さっきの「運営からのお知らせ」に使われていた文字は。でも……結局これは何の文字なのだろう?


「あら残念。噂のログが読めなくなっているわ」

「皆さんの会話ログで流されたようですね……」

「すみません、本当に。

ただ……見たのは一瞬でしたけど、ここにある文字と同じもので書かれていたように思えました」


言いながら私は、その看板を指さす。それを聞いた全員が、驚いた顔をする。


「スカオー語で、ですの? 本当……ですか?」


特にLiEさんの食いつきが凄かった。


「これ、スカオー語って言うんですか? つまり、ゲーム内言語?」

「わたくしを含めたプレイヤーがそう呼んでいるだけで、運営が言語名を出したことはございませんが……スカイオーシャンの中だけで使われている言語のことで間違いございませんわ。この看板などのように、文字を使った背景絵によく描かれておりましたの。

あの、それで本当に、スカオー語でしたでしょうか?」


問われ、少しだけ考えてから私は答えた。


「そう……だと思います。ここにある文字と同じものを見たので」

「予想外です……もしそうなら、一目見ておきたかったですわ」


かなり残念そうだ。何か思い入れがあるのかな?


「そう言うことでしたら、どなたかスクショしてるかもしれないので、聞いてみたらどうですか?」

「なるほど……仰る通りですね」


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LiE:少々お時間よろしいでしょうか? 「運営からのお知らせ」が、スカオー語で書かれていたと伺っております

わたくしはそれを読む自信がございますので どなたかスクリーンショットを残しておられましたら ご連絡をお願いいたします

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さすがにその発言には、こちらがびっくりだ。


「え、LiEさんはあれを読めるんですか!? 運営が解読方法を発表してたとかで!?」

「いいえ、わたくし自身が過去のスカオー語が描かれた背景絵をヒントに、独自に解読いたしましたわ。スカオー語検定自称準2級ですの」


それは……本当に凄い情熱だ。よほどスカオーのことを愛していたのだろう。

そう思ったのは私だけではないようで、ワルチャに「凄っ」とか「まじか!」といったログがどんどん書き込まれていく。


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向日葵:「運営からのお知らせ」資料スクショ 所持有

但 分析優先度低のため 本日のミッション終了後の提供を提案


LiE:それで構いませんわ ありがとうございます

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さすが花図鑑さん、そんなものも残してくれていたとは。


とりあえず、これで憂いはなくなったので、私たちは別途レア敵討伐の情報提供をしてから、地属性装備作成に必要なクエストクリアに専念した。

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