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サ終ゲームのリスタート  作者: 橋 みさと
第2章 その、力は小さくとも
18/52

アークタルラB

「すごいわ、水晶がまだ1つ残ってる!」

「これ期待していいよね!?」


実のところ行動分析の際に、1匹倒せたパーティはなかった。ナイトがいても1匹倒す前に水晶を使い切ってしまい、そこから総崩れになることが多かったからだ。確かにそういう意味では快挙なのだが……。


「アークタルラBの与ダメージ200%UPを確認」

「うえええええっ!?」

「何それ、聞いてないぞ!?」


アークタルラAを倒したことで、Bの強化トリガーが発動した。

ということは本来、これは2匹同時に攻略すべき相手だったのだろう。行動分析で判明しなかった部分なので、予想外の展開だ。急いで知らせなくては!


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ユウ:アークタルラB 与ダメージ200%UPです!

アークタルラB「猛烈に怒っている!」

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しかも、残HPトリガーまで引いたらしい。


「このタイミングで発狂!?」

「まずいよ、°˖✧はぴ✧˖°さんの双剣は今、再使用可能時間(リキャストタイム)が!」


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「ごめんニャさいぃ~! 叩けない~!」

「こっちは守り用しか叩ける武器がヾ(;•ᆺ•)ノ アセアセ」

「ごめんなさい……必殺技準備しちゃったよぉ」

「私が行くわ。2手かかるわよ?」

「俺様の筋肉に任せな!」

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会話しつつ、もうくろんさんは水晶Cを殴り始めている。時間経過で水晶CのHPが1回復していたので、残りHPはこれで2だ。


「Bの詠唱開始直後に双剣の詠唱に入ってたぞ」

「ターゲット切り替えだけやったとはいえ、すごい反応速度だな」


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「こっちも焼きガニになれーーーー!」

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またMiyabiさんの必殺技火球がアークタルラBの口部分に決まったが、HPはまだまだある。


「永続デバフを入れない!?」

「もう発狂モードだし、そんな余裕ないよ!」

「Bは後列にいるし、素直に削った方がまだ勝算ありそう!」

「あああ、タラバガニの1発目が来る!」


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「マッスルパワーで妨害するぜ!」

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3多段攻撃の1発目が当たる直前、照輝さんが頭上に掲げた魔導具から赤い光がドーム状に広がる!


「風耐性60%UP魔導具キター!」

「メイス分と併せて70%!」


装備に耐性がない分を、どうやら魔導具で補ったらしい。2発目が来る前にくろんさんが水晶Cの破壊に成功したため、残り2発は空振りとなったが……。


「アークタルラBの与ダメージ200%UPを確認」


増えた与ダメージUPはこのまま継続する。つまり、発狂モードの恐ろしさはここからだ。


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「Bは後列だから……火属性威力UPの付与を、ここからMiyabiさんに変えるねっ♪」

「私はHPUPバフを照輝さんに変える。もう毒はほぼ来ないでしょꉂ(•ㅅ•*)」

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二人とも明るく言っているが、重い雰囲気にのまれないないよう、わざとそう言っているように感じた。


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アークタルラB「猛烈に怒っている!」

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「またかよ!」

「こここ、これどうするんだ!?」

「もう水晶ないぞ!?」

「やばいやばいやばい」


だが照輝さんとチョコケーキさんは冷静だった。


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「筋肉は決して裏切らない!」

「デバフッフー」

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今まで全体攻撃の際にしか使わなかった耐性盾と与ダメージDOWN槍を、ここで発動させる! 照輝さんの方は必殺技ゲージを使って使用したので、通常より大きな炎が溢れ、味方全体を覆った。


「その手があったか!」

「いやでもこれ、耐性何%だ!?」

「必殺技使用は風耐性50%だから、メイス分併せて60%!」

「与ダメージDOWNも入ったとはいえ、それでも風耐性10%低いぞ……!?」


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「早くこんがり焼けてよーーーー!」

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Miyabiさんの必殺技がまた入ったが、それでもアークタルラBのHPはまだ半分近く残っている。その直後に3多段攻撃1発目がダメージバリアを貫通し、増強された照輝さんのHPの3分の1ほどをえぐった。


「アークタルラBの与ダメージ200%UPを確認」

「くろんさんが必殺技準備に入ってるけど……間に合うかこれ!?」

「また来る!」


チョコケーキさんが耐性メイスを再使用しつつ回復したところで、2発目が照輝さんのHPの3分の2ほどをえぐる。


「アークタルラBの与ダメージ200%UPを確認」

「見てるこっちが痛いよ~!」

「耐性盾と与ダメージDOWNの効果が切れた!」

「おいおいおいおい~!!」

「チョコケーキさんが即、単体回復メイスで照輝さんを全回復させたけど、これは……!」


今度はくろんさんが、無言のまま必殺技をアークタルラBに叩き込んだ。ようやく口の鉱石部分が砕け散る。


「HPまだ5分の1程度あんのかよ!」


勿論Miyabiさんも大鎌で攻撃してはいるが、3発目を防ぐには時間が足りないのは明らかだ。


それでも照輝さんの目はまだ死んでいなかった。これまで見たことのない、水属性の盾を頭上に掲げる!

私を含め、ほとんどの人にとって予想外なことが起きた。何とその盾は、照輝さん自身を2回攻撃したのだ。


「ここで自傷!?」

「兄貴、気がふれたのか!?」

「ええええええええ!?!?」

「……さんとくろんさんへの……付与を確認」

「3発目が来る!!!」


まるで大型トラックがぶつかったような大きな効果音・エフェクトと共に、アークタルラBが体当たりする。照輝さんの身体が、大きく「くの字」に曲がった。

ゲーム的に血が飛び散るような演出はないが、そうあってもおかしくないほどの衝撃。明らかに最大HPを超えるダメージが入った。


「ひっ!」

「兄貴ぃぃぃぃ!!!」


そのまま倒れることを、誰もが疑わなかった。だが……しかし!


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「すまねぇ……鍛え方が甘かったらしい。一瞬意識が飛んだぜ」

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照輝さんは残りHP1状態で地面に倒れることを拒否したのみならず、にやりと笑って見せた。


「照輝さんのガッツ消費を確認」

「アークタルラBの与ダメージ200%UPを確認」

「うおおおおおおお!!!」

「ガッツで耐えやがった!!!」

「やばい、これは惚れる!」


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「だがもう、次は再使用可能時間(リキャストタイム)が間に合わねぇ! 何が来ても、最低1人は戦闘不能になる!」

「フルデバフ、入ってるよぉ! 決めちゃってぇ!」

「分かったわ」

「あと少し……!」

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言いつつも照輝さん、くろんさんは自己バフをかけ直しつつ攻撃している。Miyabiさんも必殺技準備に入った。

照輝さん、くろんさんが次の武器の詠唱に入ったところで、


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アークタルラB「糸を出そうとしている」

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「全体魔法攻撃のパターン!」

「間に合え……間に合え……!」


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「いい加減に……落ちてよ!」

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照輝さん、くろんさんの攻撃+Miyabiさんの必殺技攻撃が入った。が、あと針1本程度のHPが残ってしまった。

こちら側の次の攻撃タイミングより先に、アークタルラBの攻撃タイミングが来る!


「もう駄目だぁぁぁ!!!」

「そんな……ここまで来て!?」


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「すまねぇ……託したぜ!」

「ええ……自信がないから、使用予約にするわ」

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その言葉の意味が分からないまま、轟音と共にアークタルラBの全体魔法攻撃が襲う。

すでに与ダメージ1000%UP状態なので、もし耐性盾の再使用可能時間(リキャストタイム)が間に合っていたとしても、耐えられなかったのではないか……そう思うほどのHP最大値オーバーのダメージが、プレイヤー全員に入り、地面に倒れていく。戦闘不能演出だ。


「いやぁぁぁぁぁぁ!!!」

「みんなぁぁぁぁぁ!!!」


全滅を、疑わなかった。

……ごく一部のナイトさんたちと、花図鑑さんたちを除いて。


「くろんさんのガッツ消費を確認」

「これがラストチャンスだよ!」


よく見ると、くろんさんだけがHP1状態で双剣の詠唱に入っている。なのに、本人に意識はなさそうだった。


「武器使用予約だ!」

「最大3手先まで予約できるあれか!」

「あいつ……無茶にもほどがあるぞ!」


武器使用にあたり、自分の意志で動く必要がないことを、こんな方法で利用するとは……!


詠唱完了と共に使用者無意識のまま振るわれた双剣は、アークタルラBのHPを削り切り、鉱石部分が砕け散る。アークタルラBもまた頭に疑問符を浮かべ、撤退。そのまま戦闘終了エリアに移行した。

あとはここにあるベルを破壊すれば、戦闘終了だ。


「やりやがった!!!」

「もう駄目かと思ったのに!!!」

「凄すぎる……感動で涙が止まらないよ……」


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ユウ:くろんさん 大丈夫ですか? 動けますか? ……くろんさん!

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何度目かの呼びかけでようやく意識を回復した彼女は、無言で手を挙げることで応え、自傷のない武器を選んでベルを破壊した。全滅ではないので、適性者ギルドの救護室に飛ばされることなく、全員が探索エリアに戻る。


そして……


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オブザーバーの職業特性により、観戦エリアにいるプレイヤー全員に、被観戦パーティが獲得したものと同一の経験値・ストーリーフラグが与えられました

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モニター全体にその文字が表示されると同時に、受託していた「銅等級昇格クエスト」の達成条件を満たした旨の通知が、各自の胸元くらいの位置に出した透明の画面からポップアップ表示された。


「っしゃあ! 俺はもうここを出るぜ!」


いうが早いか、ドSボイスのプリーストさんが1人観戦エリアを飛び出し、動けなくなっている火属性選抜チームに駆け寄って回復を開始した。やたらくろんさんを心配していた、あの人だ。


性別1の高身長。深緑色の瞳で、同色の長めの髪を首の後ろで縛り、小枝を咥えている。

服はナイトのぜっぴんさんと同じ、胸元が広く開いてヒラヒラした緑基調の上下服なのだが、顔立ちの違いからか、何だがだらしなく着崩している印象を受けた。プレイヤー名は「ジャスティア」となっている。


その姿を見た他のプリーストさんたちも、慌てて火属性選抜チームに駆け寄り、回復作業に加わった。

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