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サ終ゲームのリスタート  作者: 橋 みさと
第2章 その、力は小さくとも
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森林地帯(昼)

森林地帯(昼)は、このゲームでは最も弱い敵が配置された探索エリアだ。


「配置」というのは文字通りで、このゲームでは敵の出現場所が決まっている。

探索エリア内の決められた場所で、決められた敵がうろうろしているので、雑魚に関してはそれに触れると自動で戦闘エリアに移行する形だ。

レア敵については戦闘エリアに移行して初めて発生が分かるが、エリアボスだけ出現場所が完全に固定されているので、うっかりエリアボスと戦う心配はない。また、雑魚敵を避けて歩くことで、その気になれば戦闘せずに先に進むことも可能だ。


さすがに森林地帯というだけあって、森にいそうな動物型の魔物が多いらしい。稀に魔光雨が降り、日光でキラキラと輝くさまがとても美しかった。


「では手始めに、この辺りの雑魚を一掃しますか」


プリースト向け防具が報酬になっているクエストの討伐対象が多いところで、鷹影さんがそう言うと、


「準備いいでしょそうでしょ」


確認する間もなく、早速すぐ近くにいた敵に触れるチョコケーキさん。


普通のゲームなら「プリーストなのにそんなのでいいのか」と思うところだが、このゲームには不意打ち戦闘がないので、誰が触れても関係ない。軽快な戦闘曲に切り替わるとパーティを組んでいるため、全員が同時に戦闘エリアに移行した。頭から鉱石っぽい角が1本生えた、兎型の魔物が3匹目の前にいる。


「あ、すみません。私は今回がthe 2ndでの初戦闘なんですけど、何かしてほしいことありますか?」

「そうですね……支援系武器があれば、それを使ってくれますか?」

「分かりました!」


その予想は初めからあったので、ある程度調べて武器編成は事前にしてある。胸元くらいの位置に出した透明の画面から操作できるのも変わらないようなので、任意の味方1名に攻撃バフを与えられる魔導具を、対象者を鷹影さんにして使ってみた。


後列移動武器だが元々後列にいたので移動することなく、武器に定められていた通りの、頭上に魔導具を掲げる動きでバフをかけた。

前回メイスを使った時も感じていたが、どうやら自分の意志で動く必要はないらしい。若干操り人形になった気分ではあるが、動作そのものは滑らかで、違和感もない。鷹影さんは大剣を胸の前で構えて使用し、自身に攻撃バフと被ダメージ軽減デバフをかける。


「さっさと終わらせよ……」


その間にラガマフィンさんが全体攻撃魔導具を一発放つ。出現した3匹の敵全てに火属性魔法が命中したが、倒しきるには至らない。


「攻め込みます!」


鷹影さんが大きく振った風属性斧がうち1匹に命中しHPを削り切ると、何故かその後別の敵にも攻撃が当たり、そちらのHPも削り切った。後で聞いた話によると、2多段攻撃の条件を満たしたが、1多段目で対象敵が倒れたので、自動で他の敵に2多段目が当たり、そうなったらしい。

残り1匹を、水属性双剣を使用した全職ガチャのファイターが仕留める。これなら無傷で倒せるメンバーだから安心だ。


「当然の勝利ね!!」

「なるほど。では次は支援系武器を、ラガマフィンさんに使ってみてください。恐らくそれで、この辺の雑魚なら倒せます」

「分かりました」


言われた通り今度は同じ魔導具を、ラガマフィンさんを対象者にして使う。バフがかかるのを待ってからラガマフィンさんも同じ魔導具を放ったところ……。


「お、なんか決まった?」


今度は全ての敵を一撃で倒しきれた。


「うまくいったようですね」


ただし魔法でも稀に攻撃を外すことがあるので、そういった敵をみんなで倒す感じでどんどんレベルをあげていく。敵からのドロップで、たまに武器や魔晶が手に入った。


ドロップする武器はいずれもランクDかCなので、そのままではほとんど使えないらしいが、不要な装備品はランクに応じた大きさの魔晶に変換できる。魔晶は装備品を強化できる貴重な素材だ。

ちなみに装備品の強化レベル上限を上げるには、同一装備を合成するしかなく、武器・防具・装飾品ごとに強化に使える魔晶が異なるらしい。


つまり今回は、レベルを上げながらクエスト報酬で得られる同一魔晶防具を沢山集め、強化レベル上限最大の防具を作り、さらに不要な防具を魔晶変換して防具を最大限強化するのが目的だ。スカオーにはトレード機能もないので、各個人が頑張るしかない。


「眠すぎ……オートにするね」


さすがに同じ動作しかしないのは飽きるので分かる。元々オート機能が備わっているゲームなので、ラガマフィンさんは宣言通り、早々にその設定にしたようだ。

ちなみに前作のオート機能だとランダムで武器を使用する感じだったが、the 2ndの場合、何秒後にどの武器を使うみたいな設定が3手先まで登録できるようになっている。私もそれに倣って、初手のみのオート機能を設定した。

この様子ならしばらくは回復も必要ないので、


「フレッフレッフレー」


チョコケーキさんは応援するのみである。これをしばらく繰り返していたところ、急に今までと色が違う兎型の魔物が混ざって出現した。


「レアだレアだわーい!!」


なるほど、あれがレア敵か。とはいえやることは変わらないので、同じバフをラガマフィンさんにかける。今までと同じ魔導具の一発だったが、さすがにレア敵だけは残った。HPがまだ結構ある。


「めんど……」

「クゥクゥ」


敵が詠唱を開始したので、炎が立ちのぼるような形のエフェクトが敵の周囲に表示された。

可愛らしい見た目の敵だが、騙されては駄目だ。何秒後かは分からないけど、詠唱が終わると攻撃が来る!


ここで初めてチョコケーキさんが、敵に被ダメージデバフがかかる光属性の槍を投げて前列移動した。攻撃が来る前に倒そうということらしい。

ラガマフィンさんも素早くオート機能を解除し、風属性大鎌の詠唱に入る。その後の鷹影さんの斧攻撃でもまだ倒しきれていない。私も違う魔導具で、敵の与ダメージをdownさせようと前列移動したが、これは外してしまう。


詠唱が終わり大鎌を振って前列移動したラガマフィンさんと入れ替わるように、チョコケーキさんが後列移動しつつ今度は火属性メイスを振る。

赤い光の膜が全員を包み込んだ瞬間、敵の攻撃が前列にいた4名全員を襲った。


「ぐっ……!!」


どうやらメイスで属性耐性バフをかけてくれたらしい。かなりの痛みを伴ったが、全員無事だ。


「さっすが私~」


とはいえ私自身、今の一撃でHPを3/4ほどもっていかれた。元々HPが低かったからか、それとも攻撃の種類のせいかは分からないが、ラガマフィンさんに関しては瀕死だ。痛みと恐怖で体がこわばり、行動が遅れる。

それでも鷹影さんが自傷を恐れず火属性の双剣を使用したことで、ようやくレア敵を倒した。経験値が普段より多く入ったので、一気にレベルが上がる。


「これは……何というか……」


初めて戦うことに恐怖を感じた。だがこれに慣れ、勇気をもって行動しなければ、この先やっていくことは難しいだろう。

何せゲームシステム的に、私たちは4秒に1度しか行動できないのだ。詠唱時間が設定された武器であれば、その分の時間もかかる。躊躇ったその1秒が命取りになりかねない。


「一度落ち着きましょう」

「やったー終わったー!!」


ゲーム的に元々食事や睡眠は不要なので、今の私たちにも不要なようだが、どうしても精神的に疲れるので、その提案には賛成だ。


「昼寝の時間だ、撤退する」


探索エリアでは戦闘中以外は武器を使うことができないので、ここまで危険な状態だと戦闘中に回復するより、自動回復を待つ方が安全だ。そもそもこの痛みを抱えたまま、うまく動ける自信はない。

早くもラガマフィンさんは敵が来ない場所まで移動すると、本物の猫のように丸まって目を閉じた。他の人もそれぞれ適当に座る。

まあ座らなくても自動回復するのだが、そこは気分である。


「戦うって、結構怖いですね。あの痛みを思い出すと、操作する手が止まりそうです。とはいえ戦わないとレベルは上がらないし……」

「そう……ですか……。確かに私にも恐怖はあります。ナイトの方なら、この比ではないでしょうね」


今回は1匹だったが、ナイトなら常に、味方を守るためにすべての敵のヘイトを自分に向ける必要がある……。そう思うと、本当にナイトの方には頭が下がる。


「状況によっては、今のところレアは遭遇した時、撤退を考えてもいいかもしれません。私の武器は風属性に偏ってますし……」

「風属性だと駄目なんですか?」

「ああいえ、風属性の武器が一番効果的なのは地属性の敵なので、風属性の敵ばかりの森林地帯では、そう活躍できないというだけです。地属性武器に偏ってる方だと、森林地帯ではもっと大変でしょうね」


ははあ、属性相関の問題か。


「ちなみに風属性の敵に一番効果的なのは、何属性ですか?」

「火属性です。逆にあまり効かないのは地属性です」


なるほど、だからラガマフィンさんはずっと、初手で火属性の魔導具を使っていたのか。


「私は耐性メイス火属性だけ出たから、森林地帯が一番向いてる!!」


ということは、さっきの属性耐性バフは適した防御方法の1つだったということなのだろう。それでもあの威力なのかと思うと、確かに今は無理しない方が良さそうだ。


「でも何かの属性に偏ってる方が、今回は勝ち組じゃないのꉂ(•ㅅ•*)ケラケラ」

「そうですね、確かに1属性でも魔獣と戦える武器が揃ってるなら、今後みんなでハッピーエンドを目指すのに役立てると思います。というより、そうでないと厳しいかもしれません……」


確かに残り期間を考えると、すでにある程度武器が揃っている人を支援する方が、効率的か。


その後、他のクエストの討伐対象が多いところでもレベル上げを行い、受託した3つ全てのクエストを各8回報告できるようになる頃には、精神的にくたくたになっていたので、一旦ギルドに戻る。

他のパーティも似たような感じで、至る所でぐったりしていた。

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