表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サ終ゲームのリスタート  作者: 橋 みさと
第1章 ただ、願っただけなのに
1/30

サ終ゲームからのプッシュ通知

「ふう、やっとゆっくりできる……」


忙しい時間が終わり、何か飲もうと自動販売機でドリンクを購入。近くの座れそうな場所に腰を下ろし、私はスマートフォンのロック画面を解除した。


どこかから漂う花の香りを楽しみつつ、ドリンクを一口。春は新生活シーズンでどこもかしこも忙しそうだったが、自分を含めそろそろ落ち着いた頃だ。


特に見たいものがあったわけではないが、惰性でSMSをチェックする。

目を引くものは特になかったので、5分程度でSMS画面を閉じたところで……数件のプッシュ通知に気づき、念のためチェックした。


プッシュ通知自体は珍しいものではない。ないが……そのうちの1つの通知先を見て、私は思わず二度見した。


それは3年ほど前にオンライン版がサービス終了し、オフライン版となっていたゲームアプリ「スカイオーシャン」からのプッシュ通知だった。


「スカイオーシャン」略して「スカオー」は、いわゆる「ファンタジーRPG」と呼ばれるジャンルのゲームで、可愛らしいアバターが豊富なだけでなく、いつでも気軽にアバターの着せ替え等が可能な点と、それでいて本格的な戦略が必要な戦闘を、簡単な操作性でプレイ可能な点で人気だった。


ストーリーやゲームバランスも秀逸で、かなり人気が高かったのだが……プレイヤーが心配するほどに運営に商売っ気がなく、それが理由かは謎だが、6周年記念イベント目前というところでサービス終了してしまった。

それでも、ストーリーを振り返ったり、当時の音楽やアバターを楽しんだりできる、オフライン版を残してくれているのだから、運営には感謝しかないのだが……。


「どうして、そんなところから通知が……?」


重大発表の詳細はアプリ内のお知らせで、と書かれていたためアプリを開く。

確かにお知らせ項目があったので、その項目をタップした。


----------------------------------------------------------

【リスタート決定のお知らせ】


大変長らくお待たせいたしました。

このたび「スカイオーシャン」は20●●年7月1日から「スカイオーシャン the 2nd」としてリスタートが決定し、そのベータ版を1カ月間プレイしていただける、100名程度のプレイヤーを募集しております。

----------------------------------------------------------


「……えっ!?」


つまり続編ベータ版のプレイヤー募集というわけか。


実は私が「スカオー」をプレイした時間は、そう長くはない。

というのも、友人に勧められてゲームをやり始めた1週間後にサービス終了が発表され、結局終了日までの2か月ほどしかプレイできなかったからだ。


だが、その2か月ほどのプレイ期間でも、続編決定を嬉しく思う程度に、私は「スカオー」に魅了されていた。

まあ、ゲームがサ終した年の夏からリアルが忙しくなる時期と重なってしまったので、もしあの時「スカオー」がサ終しなかったとしても、続けられたのかは謎だが。


だが今なら……あれから3年弱経ってリアルも落ち着いているし、特に他のゲームをすることもなく過ごしているので、新しいことを始めるには丁度良い。

あの頃の ワクワク・ドキドキを味わえるなら、またプレイしたいというのが正直な感想だ。


それにしても、リスタートをサ終した日の翌日にするなんて、運営もこだわってるな。


----------------------------------------------------------

なお大変申し訳ございませんが、このベータ版は本当に「スカイオーシャン」を愛していただけたプレイヤーの方からのご意見をいただくため、参加証として「特別アクリルキーホルダー」の画像提示をお願いしております。

以下のボタンを押してカメラ機能に切り替わりましたら、撮影のうえご提示ください。

----------------------------------------------------------


サンプル画像を見るに、ここに記載されている「特別アクリルキーホルダー」とは、運営がサ終時の応募者抽選プレゼントとして作成・配布したキーホルダーのことのようだった。


凄いことに大量生産ではなく、応募したプレイヤー自身それぞれのアバター画像とプレイヤー名で作られたもので、確か抽選で2-3000人程度に配られたはずだ。


本当に配られたのが2-3000人かは今となっては不明だが、確かにそれなら、思い出を手元に残したいと思うほどゲームを愛した人しか持っていないだろう。

そして私も、そのキーホルダーを持つ1人だった。


ただ、今すぐ用意できる状態ではない。大切に自宅に保管してあるからだ。

もしやこれは、先着順なのだろうか……。だとしたら、急がなくては。


一旦アプリを閉じた私は、大急ぎで帰宅するため一気にドリンクを飲み干し、近くの回収ボックスにペットボトルを突っ込む。幸い、自宅まではそう遠くない。


走ったので自宅に着く頃には息が上がっていたが、構わず例のキーホルダーを手に取り、再度アプリを開いて画像撮影をした。


なんとか間に合ったらしく、スマホ画面にキーホルダーと同じアバターのキャラクター画像と、プレイヤー名が表示される。


【ユウさん、おかえりなさい。名前を変更しますか?】


「ユウ」は本名から取ったプレイヤー名だが、それっぽくないので元々気に入っている。

なのでそのままの内容で、決定ボタンを押す。


懐かしい、けれど少し以前とは違うオープニングムービーと音楽が流れ、ベータ版のストーリーが開始した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ