気にかける
「 おじうえに通じているなど、こわいことをいうな。おれは、 ―― おじうえよりも、父上に似ているといわれたい」
「あの腰抜けか」
「その腰抜けに勝てなかったのはどこの鬼だったかの」
「・・・・あれは、まあ、・・・腰抜けのふりをしている、おまえの親父が卑怯だ」
ウゴウは額の角をかいてごまかすと、もうすっかり暗くなった空をみあげ、腹が減ったからおれは帰る、とそばの木にとびあった。
すぐに去るとおもった鬼が、枝にたちあがると、腕をくんでジョウカイをみおろした。
「よいか、 ―― ノリヤスよ。 《ジョウカイ》とはおれたちと人のあいだの坊主の名だ。名を重くおもえばおまえが負けて、さっきの男のように、おまえが《ジョウカイ》という名に喰われる。 忘れるなよ。おまえは《ジョウカイ》だが、甘くて間のぬけたノリヤスでもある」
「 ―― これは・・・また・・・。おれのことを気にかけてくれるのか?」
「童のころよりみておるのだ。気にはかかる。かくれて泣くなよ」
さいごはたかく声をあげて笑うと、木々をとびつたい、消えていった。




