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継がれる《ジョウカイ》
ウゴウが地面をゆびさしふりかえる。
「みたかよ? おまえも《ジョウカイ》の名を継いだのなら、これぐらいまでやりとおせ」
たちあがった鬼は、男がきえた土を何度か踏んでかため、《呪いよけ》でつくった土の山もふんだ。
ジョウカイは数珠をとり、両の手でそれをすりあわせて《山神様》に頭をさげると、困ったような照れたような顔で、たしかにおれが甘かった、と認めた。
「すきで継いだわけではない、というころに・・・すこし憐れをおぼえてな」
「なんだ、おまえもそうだとでもいうか?」
「まあ、・・・すきで継いではおらぬが、 ―― いまは、気に入っている」
「ならば、手をぬくな。アレを『供物』として《山神》にやるといったのは、おまえだろう。おれはな、おまえのそういうところが、あの《ジョウカイ》と通じていて、よいとおもうぞ」
《おじ》にながいことつかえる鬼たちは、いまでも《おじ》のことを《ジョウカイ》とよぶ。




