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娘をさがしに
この山の道は、崖をけずってつくったものがほとんどで、せまくて足をふみはずせば、真っ逆さまにおちる。
それでも夫婦は山をこえ、《番神様》に教えてもらった、昼でも薄暗い《あいま》へとたどりついた。
「おつなー、おつなー」
「どこじゃ、おつなー」
娘の名を呼びつづければ、シダや低い木のしげるむこうの下のほうより、がさり がざり と重いものがすこしずつ動く音がした。
音はしたが、 ―― 娘が動く音とは、おもいたくなかった。
がざ がさり
音が近づき、すぐむこうのしげみでとまると、なにやら苦し気な、よわよわしい声がきこえた。
『 な は な 名は 』
夫婦は顔をみあわせ、身を寄せ合うと、おつなでございます、と父親がさけぶようこたえた。
「 ―― おつなを、お返しください。どうか、」
「おつな、そこにいっしょにおるンかい?それとも、・・・おつな・・・なのかい?」
おそるおそる母親がきくと、しげみが、ざざ、とゆれ、かかさん、とつぶやくようなこえがした。
つぎからお化けの表現がありますので、ご注意を