29/33
それは おれだ
「ほら、しつこいだろ?」
だからいっただろう、とウゴウが四つん這いになった男をまたぐと、その背に拳をたたきこんだ。
げっ、とこえをあげた男の背からひきぬいた鬼の手には、人の頭の骨がある。
『 ああ、やめろ、それはおれだ 』
さきほどまでのふてぶてしいようすはなくなり、男はなさけない声をあげはじめた。
ウゴウはかまうことなくつぎつぎと背に手をつっこみ、骨をひろいつづける。
「これで最後だ」
そういってなげたサレコウベは、むこうで山となっている。
すでに男のからだは背をのこし土のなかで、顔も顎から上がでているのみだ。
ジョウカイはつきたててあった杖をぬき、男の顔のまえに片膝をついた。
「名にとらわれることはもうなかろう。 おまえには、『タダマサ』という幼きころの名はのこっていたではないか。 ―― きっと、その名でよばれたころにはすこしだけ、よいおもいがあったはずだ」
男が涙と鼻水でぬれた顔をあげようとしたが、もう、土のせいでうごかない。




