呪(まじな)いよけ
『 く・・もつ、だと? 』
男の膝も、土のなかへとしずんでゆく。
ウゴウが歯をきしませわらった。
「山の精気を盗むように吸ってそこまで育ったんだから、さぞうまかろうな」
さっきつくった土の山にしゃがみこみ、ふうと息をふきかけると、とばされていた右手の先が鳥のようにとんでもどり、つかんだウゴウは、きりくちどうしをあわせた。
「おまえはしつこそうだからな。おれは、この山をみたてた盛り土で、《呪いよけ》をしておったから、名をよばれてもほんとうは動けたが、まあ、《山神》にまかせたほうが早かろうとおもってな」
鬼はつながった右の手をたしかめるようにまわし、男の横に立つと、落ちたままの《家宝》の刀をかるくふみつけた。
刀はまるで乾いた土でつくってあったように、ひびがはいったとたんに、ぼろぼろとくずれた。
「おまえにとりこまれた人はおいてゆくがよい」
『 いいや、こうなれば、この者たちとともにゆく 』
すでに、肘まで土につかった男は歯をくいしばり、ジョウカイをにらみあげた。




