お力ぞえを
「 たしかに、おれの力などたかがしれておるからな。 《山神様》のお力添えをいただくわ」
『 鬼を連れているとはいえ、《山神》が人の坊主になど力をかすわけなかろう 』
「はて。 ―― わしは、エセ坊主とはいうたが、 人の坊主 とは、いうておらぬぞ」
ジョウカイの目がぼんやりと青くひかる。
「エセではあるが、すこしは修行もした身でな」
にやりとわらいをうかべると、杖をはなした両手で、なにやら印のようなものをくみはじめた。
『 ひと、ではないくせに、 人を 助けようというのかっ、 』
ごっ、 と血を吐いた男が、刀を地にさし、膝をついた。
「 『ひとを助ける』というよりも、人と人ではないものがあうことで、おかしなことが起こるのでな、それを、おさめるために坊主になった」
ごごごごご
山が、鳴りながら、ゆれはじめる。
『 う・・ごけぬ・・・ 』
男は両手両膝を地面につきふるえていたが、その手が、まるでぬかるんだ土においたかのように沈みだす。
「 ここに来る前会った《番神様》の婆さんにな、この山のよどみをいたく気にいった『モノ』がいるので、《山神様》へそいつを『供物』としてささげたいと、伝えておいたのだ」
ジョウカイの目は、いまやはっきりと青くひかりだしていた。




