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ならば ためそう
「 だとよ。 どうする、ジョウカイ」
斬られた右手のきりくちをなめながら、ウゴウが坊主をみる。
ううむ、と口をむすんだ坊主は、まだ気がすんでなかったか、と残念なように首をまげて男をみた。
「しかも、鬼に呪いをかけるとは、ずいぶんとながいこと山の精気をすっておったようだの。 だがな、わしの名は《ジョウカイ》ではない。 ――― その呪いは、おれには効かぬぞ」
ジョウカイは手にした杖を両手で持った。
『 坊主の法力などたかがしれておるわ。山の精気でかたちづくられたおれに、そんなものが通じるわけもない 』
「そうか。ならばためそう」
両手でつかんでいた杖を、土へ ざくり とつきたてた。
山のどこかにいた動物や、キジのような鳥の鳴き声が一斉にあがり、風ではなく、ざわざわと木々がゆれた。




