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さまよい
「 ―― 父親と、婆様も、その『家宝』で殺してきたか」
ジョウカイの問いに、刀のささった男はうなずく。
『この山に逃げ込み、手にしたままの刀についた血をみたときに、おのれがしでかしたことがおそろしくなり、腹をさしましたが、・・・・すぐにこときれることもなく・・・しばし山をさまよい歩き、ようやく、目の前がくらくなり倒れたときに、・・・男が・・・ 』
おお、どうしよったんじゃ?なんだ?オサムライか?
かけよったのは《キノコとり》の男で、腹を突き刺す刀をみて、どうしたらよいかもわからぬようで、こりゃみんなにしらせんと、と腰につけた竹筒をとって、水を飲むかときいてきた。
だが、もうすでに水を飲もうという気力もなかった。
オサムライさん、どこからきよった?おなまえをきいてよいかの?
《キノコとり》も、もうだめだと感じたのか、そんなことをきいてきた。




