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そのかわり
すると、いままで母にむいていたその責めが、こちらへむけられるようになった。
『 ・・・毎日、きょうはどうであったかと、仕事の成果を父と祖母に問われ、父には木刀で稽古をつけられるようになりました・・・』
御前試合があるわけでもないのに、腕をみがけ、日々の鍛錬をもっとしろ、と責められた。
年をとった父に勝つわけにもいかずに手をぬいているのに、父親は容赦なくうちこんでくる。
そんなことでどうする?お家の名をのこすような男になれ!
こちらがわざと負けているのにも気づかない老父が、腕を、脇を、腹をたたいてくる。
しまいには、木刀を投げつけられ、こちらへかがみこんだ父親に吐き捨てるようにいわれた。
ここまで不出来な息子とはおもうてなかったわ。
よいか、名をあげろとはもういわぬ。
そのかわり、名を汚すなよ。




