望み継ぐ
四、
ウゴウはもう遊ぶのをとめられたこどものような顔で、なんだ、と男をみおろすと、もう戦わぬのか、とおこった声できいた。
男は身をふるわせ、めっそうもございません、と頭をさらにさげた。
「なんだ。先ほどまでの覇気はどうした?だいたい、おまえ、よい刀をもっておるではないか」
そうウゴウがいったとき、男の背から、刀の切っ先が生え、にょきりとのびた。
それをまのあたりにした鬼が、ちっ、と舌をうち、そのよい刀をおのれにむけたのか、とこわい声で言うと、男はさらに身をふるわせ縮こまった。
そうか、とジョウカイはみおろした男に、山まできて自害したのか、と静かな声できいた。男は地をみたままうなずいた。
『 ―― 家を・・・わたくしの家は、・・・代々続く侍なのだと、幼き頃より聞かされて育ちました。そして、いまのお役は、ご先祖の働きにみあっておらぬと、祖母はよくもうしておりました。父は、それをうのみにして育ち、つぎのお役替えこそは、と望みをもちながらつとめましたが、やはり、そのままでつとめあげてお役御免となり、その望みは、代々の名を継いだ、わたくしへとかけられました・・・・』
よいか、タダマサ、跡取りはおまえしかおらぬ。おまえが叶えねばならぬのだぞ
祖母はその日が来るといまだに信じ、まいにち仏壇にむかっていた。




