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勝手におしえる
まあ、まて、とジョウカイが数珠を手にまきなおす。
「そこな方、わしはジョウカイともうすエセ坊主でな、おぬしのことをどうにかしてほしいと、麓にすむ者にたのまれてきたのだ」
こちらをにらむ男にむかって、ジョウカイはほほえんでみせ、隣に立つ鬼を、こいつはわしの寺につかえるウゴウと申す鬼だ、と名をつげた。
「あ!おれの名を勝手におしえたな」
「よいではないか。あの男も、おまえの名など、こわくて唱えぬだろう」
「あのなあ、ジョウカイ、おれたちの名はおまえらとちがってなあ、」
『 ―― 名は、・・・名は、幼きころの名のみ、覚えております・・・ 』
ふいにわってはいった男の声にジョウカイとウゴウが顔をむければ、ボロ布のような着物をきた男が両手をつき、頭をさげていた。