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しつこいぞ
身を引いたウゴウの持つ刀は、のびた腕におさえられ、ウゴウはあっけなく刀から手を離し木の上にとぶと、ジョウカイへ、「どうする」ときいた。
ジョウカイはすでに杖で足もとの地へ《印》をしるしてあったので、それを杖の先で とん とついて、刀にとりついた腕どもをおさえこんだ。 つづけて、とん、と杖をつけば、腕たちは刀があげた青い火にまきこまれて消え、その刀と刃をあわせていた男は、『青い火』をおそれたようにとびのいた。
火をおさめても、そのまま宙にあった刀は、ウゴウが手のひらをむければ、すいつくようにその手にもどる。
「おいジョウカイ、みただろう?この男、しつこいぞ。 名をとりあげてとりこんだ人どもを、おまえの術があってもまだ離そうとしない。 おれが『斬ってもよい』といわれているのは、とりこまれた人とこいつのあいだにできた《念の繋がり》だけだ。 ―― まあ、おまえが良いというならば、金棒で砕いてもいいが」 ウゴウはおもしろくなさそうに、手にもどった刀を鞘におさめた。