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かくれておった
だが、おりたったジョウカイが首から数珠をはずすと、またきゅうにのびあがって、杖をねらうようにいくつもの長い手が、そのかたまりからのびでた。
ジョウカイは数珠をふってその手をたやすくはらいのける。
手は、またかたまりへもどり、ふるえた。
「 おい、おぬしの名は なんともうす? 」
ウゴウがまた低く問えば、ふるえるかたまりはだんだんと人のようなかたちになってゆき、袴姿の、うずくまった一人の男の姿になった。
『 な・・・ を ・・・・ 問うたか・・・ 』
男は地にふせ、両手をかかえこんだような姿のまま、しずかなこえでききかえす。
「おうさ。かくれておったのが、ようやくでてきおったな。 はよう 名を申せ」
ウゴウが尖った歯をきしり合わせるようにしてわらった。
『 かくれてなど おらぬ 』
男は顔もふせたままだが、力を込めていいきった。




