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繁みから顔
すぐにおいついたジョウカイをふりかえり、人のふりをしすぎるからからだが鈍るのだ、と口のはしをあげ、あれも人のふりをした半妖か、とむこうの繁みをめでさした。
がざ がさり
繁みが揺れ、人の顔がでた。
『 な を 』
くるしげなよわよわしい声はほそかったが、男のもので、突き出ているのも男の顔だった。
『 名 を な ヲ 』
くるしげに声をだす男は、ジョウカイたちをみているようで見ていない。
「おぬしの名は、なんともうす?」
ジョウカイの問いに、男の目がはっとしたように生気をもどし、ああ、ああ、と苦しげだがはっきりとした声をあげた。
『 名は ジンロク でございます 』
さきほどとは別ものの声で男はこたえた。




