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借りた刀を背に
三、
握り飯を先にたいらげたウゴウが立ち上がり、ではゆくか、と岩をとびおりようとして、ジョウカイをふりかえった。
「おいジョウカイ、ここで人のふりを続けてもしかたあるまい。とびおりるぞ」ついてこいよ、という鬼の背には、ジョウカイの父がもっていたような刀がとめてある。
「おいウゴウ、その刀はどうした?」
「かりた」
言って、ウゴウはとんだ。
ジョウカイもしかたなくあとにつく。
ウゴウはからだが大きいくせに、岩から岩へとかるくとび、激しく下り落ちる川からつきでた石のさきをけって、はねてゆく。
ジョウカイをふりかえり、おそいおそい、とわらってみせ、木々のなかをはしってゆくと、その木の数がへり、下生えにシダがまじり、せまい瀬があるあたりで、足をとめた。




