文化祭の最終日にだけ開く扉
それは我が校のオカルト研究会に伝わる学校七不思議の一つ。
文化祭最終日のフィナーレを飾るダンスタイムにだけ開く扉があるという。
この扉の怪を発見した事で初代会長がオカルト研究会を起ち上げたと、オカ研の研究報告ノートにも記されている。
けれど以降十六年間、一度たりとも扉については触れられていない。
オカ研初の女子生徒である私が入会して半月、三人の先輩は誰一人として扉を見る為の計画すら立てていない。
隣のクラスで友達も居ない坊主頭に眼鏡の佐山は、一人で勝手に七不思議の内の四つを確認したと自慢気に研究ノートに記していた。
だがその調べ解明したという四つについて、佐山の汚い文字に苦しみながらも読んでいた私に、一つの疑問が生まれた。
【トイレの山田君】
明らかに花子さんの改変ものと判るが、何故か山田君が出るのは二階科学室隣の女子トイレ奥から二番目の個室と、ままならぬ気持ち悪さが心をえぐる。
その正体は、天井の排気口の中に隠されたファッション誌。
【美術室に飾られた絵の女子生徒の髪が伸びる】
既にその絵は描いた生徒に返却されていた。尚、正体は油絵の重ねた部分が剥がれただけと、代々美術教師は先任から聞かされていたようだ。
【女子更衣室の開かずのロッカー】
右奥から三番目のロッカーが常に鍵がかかっていて開かない事から云われるモノで、私も調べた折にオカ研の顧問から、生徒の誰かが鍵を失くしただけと聞いていた。
私は今、真相に気付き絶句した。
女子更衣室に侵入した佐山は、開かずのロッカーの解錠に挑戦するも、針金で奮闘中に背後から近付く影に振り向いた、そこにはオカ研の顧問が立っていたと。
で、解明も何も
【好きな子に開かずのロッカー前で着替えさせれば成就する】
とだけ書かれ締められている。
私は【文化祭だけ開く扉】にピンと来た。
現会長は十三代目、科学講師の山田が初代会長の頃からオカ研の顧問をしているのはノートで判っている。
詰まる話、盗撮じゃね?
トイレの山田も怪しくね?
序でに佐山、自慢したいが為に女子トイレと女子更衣室に侵入した事まで堂々書いて、馬鹿な証拠……
どうりで、オカ研会員が男ばかりな訳だ。
特にオカルトを話すでもない野郎ばかりで、私が異質な目で見られてた理由も今なら解る。
「会長! 私、告発します!」
七不思議の三つの正体は油絵剥がれとハゲネタと水滴、不思議の森に隠された四本の木は顧問とモテない男共が謀り渇望した禁忌の扉だった。
■あとがき
元の七不思議を以下に……
▶トイレの山田君
◇美術室に飾られた絵の女子生徒の髪が伸びる
▶女子更衣室のにある開かずのロッカー
◇放課後の音楽室で微かに聴こえるトライアングル・シグナル
▶科学準備室から聴こえる声
◇創設者の銅像は頭が外れる
▶文化祭だけ開く扉