閑話1 とある屋敷にて
「……………?」
「レノーラ様、書斎で調べ物を初めてから2ヶ月ですよ、そろそろ何か食べたらどうですか?」
「あら、もうそんなに経っていたのね?」
「レノーラ様?時間の感覚がおかしくなってきていませんか?私もなのですけど」
「うぐ…そうね、気をつけるわ」
「はい、お願いしますよ…ところで前から気になっていたのですが結局何を調べてるのですか?」
「並行世界に関してね、私達はなんだかんだで色んな世界に行ってきたけれど、平行世界には行ったことがないじゃない?」
「確かにそうですね、というかそんなもの本当にあるのですか?」
「あるわよ、既に観測は済んでいるわ」
「相変わらず早いですね……」
「いつでもそこへは行けるのだけれど、ちょっと厄介なことになっててね…」
「厄介なこととは?」
「私が元いた世界は覚えてるわよね?」
「勿論です」
「その世界の並行世界なのだけれど、魔王がいるらしいのよね」
「魔物一匹居ないレノーラ様のいた世界にですか?」
「そうね…この世界は別の世界の魔王の侵攻を受けているって感じかしら」
「レノーラ様の世界の人って魔力持ってないですよね?大丈夫なのですか?」
「大丈夫では無いわね、既にだいぶ死人が出ているし……ん?」
「どうしました?」
「勇者が現れたわね……んー…これは」
「?」
「なるほど、そういう事ね………」
「勝手に1人で解決しないでくれますか?」
「簡単なことよ、今この私達がいる世界と似たような世界に召喚された子が魔王を倒して元の世界に帰ったら、倒した魔王の悪あがきで世界が書き換えられたのよ」
「書き換えられた…?」
「歴史を変えるって感じかしらね?元の歴史にはいなかったはずの存在をその時間まで遡って配置するの、そうしただけで元の時代にはものすごい変化が現れるわ」
「レノーラ様の世界で言う、バタフライ効果ってやつですか」
「そう、そして今回行われた書き換えは魔王にとっても不足な事態が起こったようね」
「不測の事態?」
「勇者が速攻帰ってきたのと、魔力を持った人間が稀に生まれるようになったこと」
「色んな勇者を見てきましたが、すぐに帰る人も結構いますからねぇ…」
「過去にどっかの国王に騙されて襲いに来た勇者君も私が帰してあげるって言った瞬間ものすごい勢いで土下座してたものね」
「………それはレノーラ様のステータスを鑑定で見た直後の出来事で帰してあげるって言ったのはその後ですが」
「そうだったかしら?」
「そうです」
「……まぁ昔のことだし忘れちゃうのも仕方ないでしょう、そんな事より書き換えよ」
「魔力を持った人間ですよね?いい事なのでは?」
「書き換えは本当は起こってはならないことなのよ、そんなことをすれば誰でも神になれてしまう」
「まぁ世界をいじることが出来るなら神と言っても過言では……レノーラ様できますよね?」
「…それはいいのよ、ただ書き換えを行った存在を"本物"が野放しにしておくと思うのかしら?」
「思いませんね……」
「たとえ勇者が魔王を殺したとしても"本物"はその世界を消し去るでしょうね、不安分子ごと…恐らく私がいた世界を含め平行世界全て」
「不味いですね、和菓子が食べれないのは辛いです」
「それは同意するわね、と、言うことで」
「…………嫌な予感がします」
「嫌な予感とは失礼ね?カナリアは何を思ったのかしら?」
「"本物"の足止め」
「正解」
「やっぱり嫌な予感は的中したじゃないですかー!」
「まぁ…この会話も覗かれてるでしょうけどね」