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幕間 魔科学時代の夜
4月某日深夜
「あなたの舌に思い出の味を、水無瀬商店街にて操業100年、丁寧に磨き上げられた自慢の和菓子が……」
深夜のテレビは相も変わらず、ローカル極まりないCMを垂れ流している。
明かりの消えた部屋に唯一輝くテレビの光も、その中身がこれでは格が下がる。
窓から覗く星の微かな光や月明り、飲食店の看板が放つ眩いばかりの光に水溜りが反射する街灯の光、
深夜に届く光にも多々あれど、このテレビの光が一番格下だろう。
「魔素を使った新技術! 空気から電気を生み出しケーブルを刺さなくても充電可能な携帯がついに……」
人類が魔素と魔法という画期的なテクノロジーを得てなお、夜に届く光は変わらず、こうして眠りにつくまでの数分を無駄にし、ふわふわとした思考の羅列を持て余し、翌日の不安を微かに感じながら、脳を休めるためにベッドへ沈む。
明日の事は明日の自分がどうにかしてくれる。
つまらないテレビを消し、ただ意味もなく浮かぶ思考をカットして、俺はゆっくりと寝返りをうった。