この救われぬ世界に救いを。 或いは世界の敵。
この前ツイッターで話題になっていたのだが、SF作家の大原まり子が昔の姿は見る影もなく、反ワクチン論者に成り果てている、と。
ええ、なんでそんなことに。
SF作家なんて一番そんなんになりそうにないのに。
調べたら立て続けに不幸に見舞われてるのな。
家族が次々亡くなったり、旦那さんが難病になったり、自身も病魔に蝕まれてたり。
反ワクチン界隈、話通じない、理屈に合わないこと言ってるって印象だったが、そもそも理屈ではないな。
これは慟哭の果てだ。
現行の社会から救済は与えられない、助けてと叫んでも誰も助けてくれないし、助ける術もない。
ほんともうその慟哭はどうにもしようがない。
それで救いなんかいらないと開き直れればいい。
しかし、本人の資質や慟哭があまりに深くどうにもできない時、救いなどどこからも来ない、それでもなお救いが必要だ、絶対にいるとなったら、自分に救いを与えてくれない社会にそれは違うと異を唱えるものは全て強い味方になる。
というか程度の差はあれど、社会と敵対するしかない。
古来より色んな宗教、哲学、政治に至るまで現世の救済にチャレンジしてきたが、それに成功した例は一つもない。
せいぜいがドラッグを脳にぶちこんで擬似的な救済を得る程度。
つまり現世救済は不可能。
宗教でも救済は天国か来世に持ち越してるがほとんどやん。
たまに現世救済を唱うのがあるけど、それは世界の終末のセットじゃん。
つまりこの世で救済を得られないのだがら、なんとしても救済を求めるなら一回世界を壊してしまわねばならない。
しんどくて切なくて苦しくて誰か助けてと叫んでいただけなのに、いつの間にかシームレスにパブリックエネミー、民衆の敵やワールドエネミー、世界の敵のスタンスにスライドしてしまう。
そしてそれはつかの間の慰めでもある。
慟哭をぶつける敵がいるってことは、ただ一人で慟哭に沈むより遥かにましだからだ。
だから展開する論旨がおかしいとか間違ってるとか慟哭に沈む彼ら彼女らにはどうでもいいことであって、自分の慟哭をぶつける武器として使えるかどうかが大事。
それはゲリラが手製の武器で政府と戦うさまにも似て、使えるものはなんでも使う。
手に馴染んだ武器は離さないし、もしそれが使えなくなったらすぐさま次の武器を手に取る。
世界を滅ぼし救済を得るまで続く生存闘争なのだ。
それに対して理屈がおかしい、情報ソースが間違ってると言っても意味はないよな。
彼ら彼女らを説き伏せよと思ったら、理詰めではなく彼ら彼女らが望む救済を与えることよってしかなされない。
天啓の雷とかそういうものが必要になる。
そんなんできるかよ。
そしてこの構図は慟哭、救済とまでいかなくても自分は社会から報われていないと感じている人にも当てはまる。
自分が正当に評価されていないと思う人はどうしても正当に評価される社会や状況を待ち望む。
どんなに待ってもそんな社会来る訳ないので、自分が変わるしかなんだが、自分が変われる人はこの状況の外なので、まあ置いていく。
さて、世界の敵は世界に勝利することはないのだろうか?
部分的に国や地方の単位だでは勝利することもあるだろう。
革命とかな。
勝利した場合どうなるのか?
部分的に勝利したとしても世界は相変わらずそこにあり、世界のルールも変わっていない。
なのに局地的に勝利したもんだから、自分が求める救済は何一つ受け取っていないのに、救済を与える側に立たされるとこになる。
どんでもない罠だよな。
なんも受け取ってないのに分配しなきゃならないんだぜ。
勝ってしまったのだから、なんもないので配れませんでは済まされない。
なくても配らなくてならない。
それに気づいた時の恐怖と絶望はどんなもんだろな?
革命に内ゲバがついてまわるのも分かるよな。
勝ったのになんもないのは誰かが裏切っているからだって、犯人探しが始まるし難癖でもなんでいいから誰かのせいにしないと自分が吊るされる。
この視点から浅間山荘事件を見るとよく分かる。
人里離れて山のなかで軍事キャンプなんてやったせいで、何にも勝利していないが擬似的に革命が勝利した状態になってしまった。
なにせ革命戦士しかいない訳だしな。
リーダーはなんの準備も覚悟もないのに、革命の成果を分配しなきゃならない立場になった訳だ。
ほんとひどい罠だよな。
山の中なのでなにか他の物を与えて誤魔化すなんてこともできない。
空手形連発してその場は誤魔化し、速やかに下山して日常に復帰してから空手形は踏み倒すなんてのは後知恵だから出るんであって、渦中の人には無理だし自分たちが感じている恐怖と焦燥の正体さえ気づいてはいなかっただろう。
何かがおかしい、一回御破算にしてなにがまずいか確かめようなんて人は社会と乖離しない、つまり世界の敵にはないので、状況にストップかけれる人がそもそもいないしな。
そら総括とリンチも始まるわ。
なにをどれだけ分配せねばわからんけど、手持ちはゼロ。
とにかくメンバーの非を責めたて支払いを減額せねばならん。
なにをどれだけ分配するかどれだけ値引きさせるか明確でないまま総括してしまったから、メンバーの命を奪うとこまで行ってしまった。
多分さ、日常からリンチで仲間殺すまでどこが分岐点かもわからんくらいスムーズに移行してるぜ、これ。
やっぱ人って泣くときにはちゃんと泣き、負けるときはちゃんと負けないと死んで詫びても追い付かないとこまで割かし簡単に行ってしまうのな。
いい年して子どもみたいに泣くことも必要だし、それも才能よな。
おまけ
ポル・ポトっているじゃん。
あの虐殺した奴。
ポルちゃんが世界の敵か? と考えるとなんかあれは違う。
世界の敵どころか革命の後になにを分配するかまできっちり考えていたまっとうな人であったんではないかと。
ただな分配するのが土地でも農作物でもなく農作業であったから、分配にそぐわない富裕層、インテリ層が虐殺されてしまったのであったなあと。
土地や農作物の分配であったなら富裕層やインテリ層も関われたんだろうが、農作業を分配されてはなあ。
ポルちゃんの異様さってのは世界の敵なんかではさらさらなく、あくまでこっち側にたったままであれだけの虐殺をしたからだろう。