ぼけぼけたん
「魔力を封じることは可能です」
シュカは魔王に答えた。
「ですが、2つの呪いを解かなければ、意味がありません。食欲魔人の呪いをかけたのがフウガなのであれば、フウガの魔力を封じなければ、そちらは解けない」
「なるほど」
魔王がうなずく。
「リィエ姫が戻って来られても、彼女は食欲魔人のまま、魔物しか食べることが出来ないというわけですね……」
「フウガ様が、姫様に呪いを、だと?」
レオメレオンが横から言った。
「馬鹿なことを言うな! そんなはずがあるわけないだろう!」
「レオ」
魔王の後ろに立つモーラ姫が、言った。
「それしか考えられないのよ。実際、フウガはその呪いを利用して、リィエを化物に変身させているでしょう?」
リィエはモーラ姫の言葉を受けて、喋った。
ばけもので
すみません
誰も聞いてなかった。
「ねぇ、シュカ」
モーラ姫が続けて言った。
「フウガの魔力を止めることも出来る?」
「バカな!」
レオメレオンが2人の会話を遮るように、吐き捨てた。
「フウガ様は我が軍の最高司令官ぞ! 敵の思う壺にはまるようやことをさせられるわけが……」
「やってみましょう」
シュカが即答した。
「おい!?」
レオが怒鳴る。
「シュカ! 貴様! 自分の言っていることがわかってるのか!? それは裏切りに等しいぞ!?」
「戦争を止めることが第一です」
シュカは折れなかった。
「魔王さんはご自分から魔力を止めてほしいと仰ってくれる。あとはフウガ様の魔力さえ止めれば、戦争は、終わります」
リィエはぼけぼけたんになっていた。
い……
意味が……
わからない……
「ありがとう、シュカ」
モーラがシュカの手を握り、感謝の意を示す。
「アクエリアは……あなたのお姉さんは……、あたしが絶対に蘇らせるから。あなたは戦争を止めることに専念して」
「何よりも戦争を止めることが大切です」
シュカは、言った。
「個人の姉を生き返らせることなんかよりも、よっぽど大切だ」
リィエはまたぼけぼけたんになった。
は……?
シュカくん……
お姉さんのことなんかよりも……って
どうしちゃったの!?




