『どこでもドア』から出てきたのは……
レオメレオンが休息し、干し肉を噛んで水で流し込んでいると、森の空中に扉が出現した。
「またか……」
ふう、と溜め息をつく。
「ヘーゼル様、戦場は危険なのです。そんなに頻繁に来られては……」
扉が開き、中から現れたのは、しかし見知らぬ少年だった。
赤いマントを揺らし、白いシャツに黒ズボンの少年が、姿を現すと、レオメレオンの前に立ち止まり、一礼する。
「誰だ?」
少年は名乗った。
「魔王サイラス・カルルスです。アポもなしに突然やって来てしまいました」
レオが剣を取る。
しかし扉の中から続いて現れた人物を見て、その手が止まった。
「レオ」
扉から黒ずくめのドレス姿のモーラ姫が現れ、言った。
「あたしが彼を連れて来たの。シュカとお話がしたいの。いい?」
「モーラ様……。これは、一体?」
「戦争をやめにしましょう。ニムスの力が発現したシュカならば、戦争を止めることが出来るかもしれないわ」
「同胞をたくさん失った。しかし戦争を続ければ、さらにたくさんの死者が……リィエ姫に食べられる者が出てしまうでしょう」
魔王は哀しそうな表情で、言った。
「愛の神ニムスの力で、僕の魔力を一時的に止めてくれることが出来るのなら、異世界に転移している本物のリィエ姫をこちらへ引き戻し、リィエ姫の中に入っている理恵ちゃんはあちらへ帰る。そうすればおそらくは食欲怪人の呪いも解け、戦争をする理由もなくなるでしょう」
「ウゥム……」
レオは抜きかけていた剣を鞘に戻すと、呟いた。
「意味わからん……」




