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食欲怪人勇者姫リィエのぼうけん  作者: しいな ここみ
第三章:四人の王女 ~ リーザはいらない子 ~
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ボコボコ姉妹

「これはどう見ても……毒です」


 シュカはそう言いながら、リーザの喉元に手を当て続けた。


「リーザ様に毒を飲ませられるやつがいるなんて……!」


 リーザは苦しそうに口からよだれを吐きながら、白目を剥いて、まるで悪霊のような表情で胸を波打たせている。

 シュカはその顔をまっすぐ見ながら、必死で光魔法の解毒術を送り続ける。


「だめだ……。解毒できない! でもこうやって光を当てている間はこれ以上毒が回らないようにはできます! 僕が症状を抑えている間に……なんとかしてください!」


 テント内にはリィエ、レオ、ロウが集まっている。3人とも心配そうにリーザを見守っていた。


「なんとかったってな」

 ロウが呟いた。

「……どうすりゃいいんだよ?」


「毒の使い手がいるはずだ」

 レオが言った。

「そいつがリーザ様に毒を飲ませたのだ。そいつから解毒薬を奪う!」

 そして心配そうにリーザに声をかける。

「リーザ様、このレオメレオンにお任せください。必ずなんとかしてみせましょうぞ」


 リーザはレオの顔を見た。

 その口がほんとうのことを言うのを『真実を見る瞳』は見た、「リィエ様でなくて本当によかった」と。


 水晶玉にフウガの顔が映る。

「どうしたんだ?」


「フーガ様!」

 レオがそれに答える。

「リーザ姫が何者かに毒を飲まされました。今、シュカが処置を行っておりますが……術者を倒さねば解毒ができないようで……」


「ほう。リーザ様が?」

 フウガは一瞬、嬉しそうな顔をした。

「シュカが手を離したら死んでしまわれるのだな? 手を離すんじゃないぞ、シュカ」

 そう言いながら、言葉とは逆のことを思っているような顔をする。


「なんか聞いたことあるぜ。魔王軍に毒の使い手がいるってよ」

 ロウが思い出したように言った。

「姉妹だったはずだ。1人が毒の使い手で、もう1人が騙しのプロ……」


「それとしか考えられない!」

 シュカが玉の汗を額に浮かべ、言った。

「そいつを見つけるんだ!」


 リィエはリーザの体をさすってあげることしか出来ずにいた。



リーザ


リーザ


なんであんたが……!


うんこ人間のあたしが最初に毒にあたってればよかったのに!



 リーザはリィエの顔を見た。

 少し微笑んだように見えた。


☆ ★ ☆ ★


野営地から少し離れた森の中、木の上で2人の女が話し合っていた。


「カーニィ。あなたがしくじるとはね」


「ごめんね、コハク。毒の回りが早すぎた。リィエ姫の唇に毒がつく前に妹姫が発症しちゃった」


 コハクと呼ばれた女性は巫女のような白い衣裳を少しも揺らすことなく、木の上から飛び降りた。


「あん。待ってよコハク。どこ行くの?」

 そう言いながら、カーニィと呼ばれた鮮やかな赤と白のツートンヘアの女性も木から降りる。


「私が敵を騙すわ」

 ピンク色の髪の女性、コハクはそう言い、一筋だけしっぽのように白いところの自分の髪を撫でた。

「そしてリィエ姫の魂を殺す」


「あん! あたしは用済みなのぉ? ひどぉい!」

 カーニィは身をくねらせた。


「いいえ。あなたにも役に立ってもらうつもりよ」

 コハクは無表情な目でカーニィを見た。

「あなたはリーザ姫の解毒をして差し上げなさい。ただし……」

 巫女装束を少しも動かさず、地面すれすれを浮遊するように歩いて行く。

「私がリィエ姫を殺したあとでね」


★ ☆ ★ ☆


「ボコボコ姉妹」

 ロウがその名を思い出し、言った。

「そうだ、ボコボコ姉妹だ。妹が毒使いのエキスパート。姉がプロの詐欺師」



ボコボコ?


そんな名前のやつ


ボコボコにしちゃえ



 リィエはリーザの手を握りながら、憎しみを顔に浮かべた。


「妹の名前が確か……カーニィ・カーマ・ボコボコ」



ああ


かにかまね


あたしはいっつもマヨつけて食べてます



「姉の名前が……そう、コハク・カーマ・ボコボコだ」



コハク?


紅白じゃないの?


おせちに入ってる


めでたいやつ




 リィエはおいしそうな名前を聞き、ついお腹が鳴った。



こんな時に


お腹が鳴るなんて


あたしはやっぱりうんこだなぁ



 悲しくなった。

 リーザが死にそうになっているのを見て悲しい上に、自己嫌悪でさらに悲しくなった。



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