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食欲怪人勇者姫リィエのぼうけん  作者: しいな ここみ
第二章:食欲怪人 ~ 魔王城への進軍といっぱいのごちそう ~
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一騎打ち

「昨夜のガーゴイルはおそらく野良の魔物だ。魔王軍の兵じゃねェ」

 馬に乗りながら、ロウが言った。

「しかし敵には足の速いやつがいる。ぼちぼちやって来る頃かもな」



そろそろ


始まるんだね?


戦闘が



「フウガからてめーの能力をレベルアップさせるよう、言われてる。敵が現れたら、食え」



いや……


昨日のガーゴイル


怖かった……



「食って食って食いまくれ」

 ロウはふさふさの眉毛の下の目を鋭くさせて、言った。

「で、死ぬな。てめーの仕事はそれだけだ」



出来れば……


屠殺して血抜きとかしたのを……


持って来て


スーパーで売ってるパック入りのやつみたいなのを



「じゃあな、伝えたぜ?」

 それだけ言うとロウは手綱を引き、前のほうへ消えて行った。



いよいよ


食べあい……


いや、殺しあいが始まるんだね




「大丈夫、リエちゃま。私が守るから」

 リーザが言った。膝に置いた拳が武者震いしている。


「大丈夫です、リィエ様。私がお守りします」

 お腹にぶら下がったメロンが無表情に見上げて来た。





「敵襲! 敵襲ー!」

 前のほうから声がした。


 馬車から首を出し、覗いてみると、空から無数の大きなカラスのようなものが襲いかかって来ている。

 空はとても青いのに、そこだけやたら禍々しい感じでざわざわしていた。



なんだ


あれ



「ガーゴイル爆撃隊だ」

 リーザが言った。

「急降下して来てこちらの肉を食らうつもりよ」




どうすんの?


相手は空飛んでるのに


手が届かないよ



「弓兵を使うまでもないです」

 リーザの表情に緊張感はなかった。

「あんなのシュカの敵じゃない」



 リーザがそう言うと同時に、青い空に稲光が発生したように、そのあたりが真っ白になった。

 すぐに光は収まり、するとガーゴイルの群は嘘のように一匹もいなくなっていた。



「黒い敵は単純な魔なの」

 リーザが解説する。

「魔の要素ばかりで出来ている敵は、シュカの光魔法に当たれば一瞬で消える」



 遠く前のほうにマントを翻して腕を掲げ、きりっとした顔つきで空を睨んでいるシュカの姿があった。

 リーザはうっとりとした顔でそれを見つめている。



はいはい


わかりやすい


しかしまたガーゴイルを食いそこねた……


魔の要素ばかりで出来ているなんて、どれだけ旨いんだろう……



「リィエ様」

 胸にぶら下がっているメロンが言った。

「お食事になさいますか?」

 そう言ってぎろりとリィエの顔を見上げる。

 無表情なのに目が嬉しそうなのが怖い。



メロンさん


くっつきすぎです


もう少し離れることできませんか


あと


ガーゴイルなら全部もう食べられない世界に行ってしまいました……



「リィエ様」

 メロンの目玉がぐるんぐるんと回り出した。

「来るんです。来ます!」

 口からよだれがぼたぼたと落ちた。

「ガーゴイルなど比べものにならないほどに、おいしいものが!」



 メロンの言う通り、前方から何かが現れた。

 地平線を覆い隠して黒い影が立ち並ぶ。


「敵騎馬の軍団です!」

 斥候が走って戻って来ると、伝えた。

「その数、推定、二万!」


「二万だと? 蹴散らせ」

 先陣を努めるロウが言った。

「こっちの半分以下じゃねェか」


「それでもぶつかり合えばこちらも消耗する」

 レオメレオンが後ろからやって来て、言った。

「まだ敵地まで距離がある。敵地に入る前から戦力を僅かにでも減らすことは避けねばならん」



 向こうの軍隊の中から騎馬が3騎、こちらへ向かって駈けて来た。

 黒い鎧に身を包んだ人型の魔物が3人だ。

 真ん中にいるのは一際体の大きな、鎧も立派なものを着ており、武将という言葉がぴったりだった。


「一騎打ちを所望する!」

 下っ端らしき魔物が叫んだ。

「そちらの将とこちらの将、1対1で命の取り合いをしようぞ!」



「へぇ……? おもしれェ」

 ロウがにやりと笑う。

「オレ、出てもいいか?」


「待て待て」

 前に出かかるロウをレオメレオンが手で制する。

「卑怯な魔族のことだ、何かの罠かもしれん。切り込み隊長のお前をこんなところで失うわけには……」



「一騎打ちに応じる勇者はいないのか!」

 魔族の下っ端が煽って来る。

「我が軍の戦士は槍使いのカラーゲイ・ヴェントゥス! 見ての通りの屈強な戦士だ! さあ、挑もうという者はいないのか? ヴェントゥスの勇士を見て臆したか?」


 紹介を受けながら、漆黒の鎧に身を包み、大きな槍を天に掲げ、からっと揚がった衣のようなきつね色の長髪を風にたなびかせて戦士が笑う。


 その姿に呼応するように、アーストントンテンプル軍の中央にある馬車の中から、狂戦士の咆哮が起こった。




からあげ弁当だと……?


食う!!



 黄色い鎧に身を包んだリィエが姿を現した。


 その姿を認めると、カラーゲイ・ヴェントゥスは、にやりと笑った。



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