呪いを解く方法
「うほおおぉぉぉ……」
リーザが部屋を出て行ってから、ロウはひとしきり唸り声を漏らしていた。
「おほおおおぉぉ……」
「どうしたんだよ、ロウ?」
シュカが疲れた顔をして、一応聞いた。
「リーザ……。いい女に成長してやがった」
「……やっぱり、それ?」
「ほんの2年前までただのガキだったのによぉ……。あのケツ、あのくびれ! やってくれやがった!」
「嬉しそうに言うなよ。ロウには全然関係ないだろ」
「生意気そうなところもたまんねェ……。おっぱい小せェのだけ残念だがな。よし、リーザはオレがもらう」
「なっ……!」
シュカの眉毛が怒り狂った。
「許さん! 僕がお守りする!」
☆ ☆ ☆ ☆
鎧を脱ぐと、下着姿になったリーザはベッドに潜り込んで来た。
甘えるようにリィエのおおきな胸に顔を埋めると、もう寝言をはじめたように、
「お姉ちゃま……。体だけでも私のお姉ちゃま。会えなくて寂しかったよう」
ごめんね
中身がお姉ちゃまじゃなくて
リーザは首をううんと振ると、目を閉じて胸の間にさらに侵入して来る。
「リエちゃまのせいじゃないし。何よりリエちゃまだって知らない世界へ急に来させられて不安なのわかるし」
頭をぐりぐりしながら犬みたいに鼻でくんくんする。
「あ……いい匂いする。お姉ちゃまの匂い」
こちょばしいな
ふふふ
長旅から帰ったばかりでお風呂にも入っていないリーザの体は正直少し香ばしかった。
でもリィエはリーザをぎゅっと抱きしめると、ごわごわしている金髪をとかすように撫でてやる。
ところでリーザ
レオのこと嫌いなの?
なんで?
「嘘つきだから」
え
「私のこともお姉ちゃまのことも同じくらい好きだとか言うんだもん。お姉ちゃまのほうを10倍気にかけてるの、私のこの目にはバレバレなのに」
えっと……
「素直じゃないひと嫌い。あと、無理して私を気遣おうとするのがうざい」
そ……そっか
「うん」
でもリーザのその瞳の能力
凄いね
あたしにも……
リィエ姫にもそういう特殊能力
ないの?
「ないよ」
ないのかよ……
「うん。強いて言うならか弱さがお姉ちゃまの特殊能力。守ってあげたくなる。みんなお姉ちゃまを守ってあげたくて、大好きになるの。私も、レオも」
か弱い……
かなあ……
「ねぇ……」
凄く眠そうな声で、しかしこれだけは聞いておかねばというように、リーザはリィエに聞いた。
「お姉ちゃまのいるところって……リエちゃまのいたところって、楽しいところ?」
んー……
「お姉ちゃま……幸せでいるのかな」
そうだね
刺激的なことが何もないことを幸せというのなら
幸せだと思う
「そっか……。平和なところなんだね」
リーザは嬉しそうに笑った。
「ありがとうリエちゃま。すごく疲れてるから寝るね。お休み」
そう言うと首を伸ばし、リィエの頬にキスをした。
おおっ
か
かわいい……!
キスをしてそのままリーザがじっと自分を見つめていることに気づき、リィエははっとする。
もしかしてお返しのキスを待ってるのかな? しちゃうか? しちゃえっ!
リィエが大理石のようなすべすべの頬にキスを返すと、リーザは瞳を覗き込み、言った。
「リエちゃん、恋してるの?」
え?
「誰かに恋してる。相手は誰?」
すごく眠そうに、しかし興味津々で聞いて来る。
ええ?
見に覚えありません……
「そっか」
リーザはそう言いながら眠りに落ちて行った。
「気づいてないんだね……きっと」
★ ★ ★ ★
目を覚ますととっくに朝だった。
隣にリーザの姿はなく、リィエは伸びをすると、誰かが来るのを待った。
指示がないと何をしていいのかわからない。とりあえず空腹はだんだんと意識しはじめていた。
扉がノックされて、レオの声がした。
「おはようございます、リイェ様。お食事の前にお召し替えを」
はーい
レオ
リーザは?
「リーザ様はご入浴中でございます。昨夜はお疲れですぐに眠ってしまわれたそうなので」
え
まさか
シュカくんと?
「いえ。下女3人とでございます」
リィエはなんだかほっとすると、ベッドから立ち上がった。
ちょうどそこへ召使いのお姉さんが3人、入って来た。
食堂へ行くとリーザを除いてみんな揃っていた。
フウガ、レオメレオン、ロウ、シュカもちゃんといた。
「おはようございます、リイェ姫」
フウガは今朝はなんだか深刻そうな顔をしている。
「あとはリーザ姫だけですね。揃ったら食事と……それと重大な報告をしましょう」
重大な
報告?
「あいつ、相変わらず風呂長ェーのな」
ロウが待ちきれないというように言った。
「こちとら腹減ってんだけどな。あんまり待たせんな糞ガキが」
「そうそう。それでいいんだよ」
シュカが言った。
「リーザ姫のことを女性として見るな。以前の通りに子供扱いしといてくれ」
リィエは自分の席に着くと、皿の上の料理を見た。
他の人のものとは1人だけ違って、緑色の肉だんごみたいなものをデミグラスソースで無理矢理人間の食べるものっぽく誤魔化してある。
おいしそう!
ねえレオ
これなに?
なんて料理?
レオは小声で教えてくれた。
「カッパのミートボールでございます」
食堂の扉を執事が開け、青いドレス姿のリーザが入って来た。
「皆さん、お待たせしました。お姉ちゃま、おはようございます。よく眠ってらしたので起こすのが可哀想でした」
おはよー
ドレス姿
大人っぽいねー
「では皆の者、食事をしながら聞いてくれ」
フウガが言った。
「昨夜、徹夜して調査したところ……リィエ様の呪いを解く方法がわかった」
「な、なんですと!?」
レオメレオンが身を乗り出す。
「本当ですか!?」
リーザが声を上げる。
リィエはミートボールを口いっぱいに含んでいたので、びっくりしたけど何も言えなかった。
「どーでもいいな。メシだ、メシ」
ロウはフォークとナイフを止めない。
「それは……簡単なのですか?」
シュカが食事どころではない、と立ち上がった。
「どうすればいいのです?」
「簡単と言えば簡単だが……難しいと言えば難しい」
フウガはその方法を口にした。
「魔王サイラス・カルルスを殺せば呪いは解ける」




