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14話 偽装カップルは……

遅れて申し訳ありません



「まあ、ここで立ち話もなんだし、取り敢えず座れよ」


「う、うん……」


二人きりになって開口一番、出た言葉がこれだった。放課後に突如設けられた彼女との話し合いの場。

今までの会話は、軽く済ませてきたというのに、今回だけは、違った。重苦しい空気。俺たち以外誰もいない部室。いつもと違って会話が弾まない俺たち。


全部が全部、俺たちが経験したことないシチュエーションだった。いつもは会話が絶えなく、空気などは悪くない。それに部室にはいつも雨蘭さんがいてくれた。

けど、今はそれがない。

本当なら、後回しにしてしまいたいところだけど、これは今ここで、絶対にハッキリさせないといけない。

彼女がどう思ってるのか、彼女の心理を聞く必要がある。



鼓動が早くなっていくのを抑えながら慎重に、ゆっくりと俺は椅子に座った。正面には雛子が座っている。


彼女もまた、いつもと様子が違った。

うまく表現できないのだが、少し視線を落とし拳を握りしめその拳が微かに震えている。

俺にはとっても不安そうに見えた。


「どうしたんだよって……聞きたいんだけど、なんとなく内容はわかる……たぶん、あれだよな?」


「うん、そう。これからの関係」


やっぱり、そうだった。

雛子から話してこなかったから、気にしてないかと思っていたのだが、そんなことなかった。しっかり気になっていたんだ。


彼女の真剣な表情を見ればよくわかる。

雛子もここでハッキリさせるのを望んでいる。さっきの言葉の強さにもそんなものを感じた。


「で、どうするんだ?」


俺には、決定権なんてないと思った。続けるもやめるも彼女次第だと。


「……水吉はどう思ってるの?」


「俺か?」


「うん…」


俺は回答に困った。

どう思ってる……今考えたら、俺はどう思ってんだろう……


表向きでは、どちらでもいいと思っていた。

だけど、本心はどうなんだろう……


「…雨蘭さんは迷惑してないのかな」


「雨蘭さんか?」


俺が考えていると、雛子がそうポツリと呟いた。


雨蘭さんが迷惑してるってどういうことだろうか…?

たぶん、迷惑はしてないと思うけどな……


「雨蘭さんは、迷惑してるわけじゃないとおもうぞ?」


「ほんと?」


「ああ、雨蘭さんはこの短期間で別れるのは有り得ないって言ってたしな」


「水吉は?」


「まあ、常識的に考えたら別れることはないと思うぞ?雨蘭さんの意見に賛成だけどな」


「雨蘭さんの意見………」


俺がそう答えた後、雛子の表情が暗くなった。

あれ?もしかして、この顔はイヤってことなのか?


「どうした?」


「水吉は、どう思ってんの?」


「は?」


「さっきから、水吉は人の意見しか言ってない。常識的に考えてとか……水吉はなんにも思ってないの?」


「そんなことないけど……」


「じゃあ、言ってよ正直に」


正直に……か。

彼女の瞳はすごく真っ直ぐだった。嘘を言わせないようなそんな瞳に俺は自然と言葉が出てきてしまう。


「だって、迷惑だろ……」


俺と雛子がこんな関係なんて……


雛子は容姿端麗で才色兼備なスーパーJKなんだ。

頭が少し足りないところは否めないがそれを抜けば完璧JKなんだ。


だから、こんな陰キャ野郎とこんな関係を続けるなんて……迷惑なんだ。


「そっか、迷惑………か」


彼女がそう言った後に、机に溢れるものがあった。


「おい、なんで泣いてんだよ……」


彼女の瞳からは大粒の涙が溢れていた。

待ってくれ、なんで泣いてんだよ。

おかしいだろ?俺は、雛子が迷惑してると思って……


「ごめん……自分でもよくわかんないや……」


「………」


「迷惑だっんだね……ごめん」


「は?」


え、いやいや待て待て!

なんで、そうなってんだよ。


「そりゃそうか……無茶振りだったし……水吉は迷惑してたよね」


「おい、ちょっと待て……」


「じゃあ、今日で綺麗さっぱり終わろうか?」


そう言って、立ち上がる雛子。


「おい、ちょっと待てよ」


これは、なんか違っている。

話が完全におかしくなっている。彼女が選んだんなら受け入れるしかないが……こんなズレた話し合いだけで終わるのは……


「ごめん、もうだいじょうぶだから」


そう言って、出口まで歩き出す。


「待ってくれ…たぶん語弊が」


「………じゃあね」


彼女が部室のドアを開こうとした時だった。


「待てよ!!雛子ッ!!!!」


こんなに、声を張ったのはいつぶりだろうか?

無意識のうちに、俺は彼女を追いかけてその細い腕を掴んでいた。


「まだ、終わってない…」


「終わったって…だって言ったじゃん……水吉は迷惑してるって……」


「それは語弊だ……」


「うそ…」


「俺は、お前が迷惑してると思ってそう言ったんだ。」


「な、なんで、私が迷惑する必要があるの?」


「だって、俺はお前と違って陽キャじゃないし人望もない。顔がいいわけじゃないし、運動センスが抜群なわけでもない……釣り合わないし……その迷惑だろ?」


「そんなこと全然思ってないんだけど……」


「いやいやそんなお世話――」


「私はいっぱい感謝してんの!!すっごく楽しかったの!!怖いことがたくさんあったけど、みんな水吉が助けてくれた。だから、たくさんのありがとうを伝えたいの!!迷惑なんてこれっぽっちも思ってない!!!」


「………」


なんて言ってやればいいかわからなかった……

だけど、ただ一つ確かなことは、、


「俺だって、楽しかったよ…」


雛子といる時は、とっても楽しかったのだ。

ずっと一人で、つまらないと思っていた時間を雛子は楽しい時間に変えてくれた。

だから、俺だって伝えたい。


ありがとう……と。


「水吉、偽装カップルしてくれてありがとう……守ってくれてありがとう。とっても楽しい時間をありがと」


「俺だって、まったく同じだ。なんか普通に楽しかったから、その………ありがとな」


「水吉…」


「だからさ……もし、お前が迷惑じゃないならさ、もうちょっとこの関係を続けさせてくれないか?もうちょっと夢を見てたいというか……その」


「……そもそも、常識的に考えて別れたなんて言えるわけないから、もうちょっと偽装カップル続けるのは当たり前!」


「そっか、常識的に考えたらそうだよな。」


さっきは、常識的に考えてとか言ったら文句言ってたのに……今度はお前が言ってんじゃねぇかよ。


なんか、笑いがこみ上げてきた。


「ちょ、ちょっと!なに笑ってんの!?」


「いや、なんでもない。これからもよろしくな?」


「うん……よろしく……しゅうと」


「え?」


「ほら!!もう帰ろ??早く帰らないと日が暮れちゃうから」


「いやいや、いま名前…」


「は?なに言ってんの?これぐらい普通だから?これだから……」


あ、もう次に言うことわかる気がする。

どうせアレだろ?

陰キャとか、アレ(陰キャ)とか言うんだろ。

わかってるよ。


「なんで?そんな顔してんの?これだから……修斗は…」


「え?」


「いま、なんて……」


「なんでもない!帰るよ!」


有無を言わせず、俺を引っ張る雛子。その頰は、夕陽の所為なのか、少し赤く染まっていた。



この章が終わりました。

途中、書く時間がなくて投稿できずにすみませんでした。

GW終わったあたりからもうヤバかったのですが無理して書いたせいでクオリティが下がったのが反省点です。

2章からは週2投稿くらいでいきたいと思います。

タイトル回収がようやくできると思います。

よろしくお願いします。

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