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12話 駅でそして帰り道で

2万pvありがとうございます!


時は、修斗がトイレに行くまで遡る。







「間に合ってよかったぁ…」


実はギリギリだったんだ。


え?そんな、そぶり見せなかったじゃん?


いや、見栄を張ってたから膀胱も張ってたんですよ。


まじギリギリだったぁ〜。雛子がダメって言ってたら漏らしてたかもしれない。


よし、これで堂々と帰還できるけど、ちょっとコンビニ寄ってこ。


今日、夜ご飯作る時間なさそうだから、適当におにぎりでも買ってくかぁ。


コンビニであらかたおにぎりを選び終わってレジに向かおうとしてる時、


「ん?なんだこれ、ナマコーラ?」


面白いものがあった。


「なんだこれ、なまこが入ってたりするのか?」


見るからに怪しいパッケージ。やばいやつなのは、間違いない。

だけど、ちゃんと知っている会社の商品だし、コラボかなぁ?


まあ、どっちにしてもおもしろそうだから、あいつに買って行ってやるかあ。


そんな軽い気持ちで、取ろうとしたその時だった。


「あっ…」


誰かが、俺と同じナマコーラを取ろうとして、手が重なった。


「すみません」


ささっと手をどかして、軽く頭を下げて謝罪する。


「あ、全然だいじょーぶ」


やけに砕けた口調だ。

知り合いかな……?でも、こんな声しらないし…

その声は、明らかに女子の声だった。雨蘭さんではないし誰だろう…


と、思い見てみるとやっぱり知らない人。

だけど、うちの高校の制服だ。リボンの色は赤、ということは一年生か?


「ねね、そのせいふくウチと同じ学校しょ?」


「ああ、そうだな。」


「ウチ一年だけど、そっちは〜?」


「二年だけど…」


「うわぁ…センパイじゃーん!」


うわ…ってなんだよ。てか、すげぇやつだな。

こんなやつがいたなんて、、


見た目は、いかにも陽キャって感じだ。ちょっと茶色が混じったロングヘアー。制服なのにとってもセクシーな雰囲気を漂わせている。

それに、雨蘭さんと同じくらいだ。なにとは言わないけど……


「もしかして、センパイもこれ買おうとしてたの?」


「ああ、そうだが…」


「これ、おいしいよね〜」


「そうなのか?」


こんなの本当に飲むやついたんだ……


「タコーラよりおいしいよ?」


タコーラってなんだよ?

まさか、タコのコーラか?

え、待ってそんなの飲んでだいじょーぶ?


「すげぇなオマエ…」


「えへへ、そーっしょ!ウチすごいもん!」


具体的に褒めていないのに、なんでこんな喜べるんだ?

やっぱすげぇな。


「じゃあ、俺もう行かなきゃ」


いま思い出したけど、待たせてんのよね。

長居はできない。


「え〜もう、いっちゃうの〜?」


なんで、そんな残念そうなんだよ?

いや、お世辞ってわかってるけどね?


「ああ、待たせてる人がいるんだよ」


「え?待って!?かのじょなの?そんな冴えない感じでかのじょ??」


「そうだよ……」


「えぇ〜待って、キモ」


なんで、そこまで言われなきゃいけねぇんだよ。


「キモいのは俺の専売特許だからな」


「立ち直っちゃった……」


「てか、マジでヤバイから行くな」


「あ、うん。バイバイ〜」


もっとしつこく絡まれると思ったけど、案外さらっと解放してくれたな……

よかった。すぐにあいつのところに急ご…

俺は、ナマコーラを二本分カゴに入れて、会計に向かった。



いやあ……結構コンビニって高いよなぁ。


どこに行ってもあるコンビニはとっても便利なのだが、そこら辺のスーパーに比べると物価が高いのがちょっとマイナス点なところだ。


でも、物価が下がったらスーパーの存在意義がなくなってしまうのでこれはこれでいいのかも。


俺も今日から節約すればいい話だしな。


買ったものをそのままリュックに詰め込んだ。

やっぱちょっと重い。けど、これも特訓(なんの?)


雛子を長く並ばせているから早く行かないとまた後でぐちぐち言われてしまう。


駅から出て、さっきのスムージー屋さんに向かっていると、なにやら騒ぎが起こっている様子。


なんだあれ……


と遠目から見てみると、列に並んでいた女の子がチャラそうな男たちに声かけられて……って!


あいつじゃねぇか!!


絶対ナンパじゃん!


どんだけ、目立つんだよ……まあ、一人にした俺に非があるのは確かなんだけど、


一番なのは、あいつが可愛すぎるせいだろ。



全速力で走ってそこに向かい俺はその男たちに言った。


「おい。俺の彼女になにやってんだ」





「はぁ…いろいろと疲れたなぁ…」


帰り道に、自然にそう呟いてしまった。


あれからどうなったのか短くまとめていうと、一触即発の空気になったところで通りすがりのお巡りさんが仲裁に入って、その場はなんとかおさまった。


列から一回離れてお互いに事情聴取。そして、お兄さんたちに非があったのは明らかなので、俺たちはひとまず解放された。


せっかく並んでいたのだけど、一回列を離れてしまったので、買うにはもう一回並ばなければならなかった。

だが、もう日は暮れて辺りは薄暗くなり始めている。


流石にもう一度並ぶ時間はなかった。

残念だが、諦めて俺たちは帰ることにした。


こんな夜道を女子一人で歩かせるのは危ないので、雛子を家まで送っている最中だ。


「なんか、ごめんね…家まで送ってもらって」


「夜道に一人で帰らせる方が危ないから当然のことをしてるだけだぞ?」


「でも、ありがと。やっぱ、安心する」


まあ、そりゃそうだろうな。

彼女には今日二度も怖い思いをさせてしまった。さっきもかなり怖がってた様子だったし大丈夫だろうか?


「なあ、だいじょうぶか?」


「え?なにが?」


「さっきのやつだよ」


「ああ、うん。だいじょうぶ。ありがとね。助けてくれて」


「いや、一人にした俺にも落ち度があるから気にしないでくれ。それにしても、普段からあんな感じなのか?」


九鬼のやつはちょっと違うけど、あのお兄ちゃんたちは立派なナンパだ。

並んでるところを狙うとかかなりレアケースだし。普通に待ち合わせしてたら結構やばいんじゃないか?


「まあ、結構そういうのはある」


あるのか、やっぱり顔が整ってるからかな?


「じゃあいつもはどうしてんだよ?」


「友達がいるから、そういうのくるとやっつけてくれる」


「たくましい友達だな」


女友達だよな……?

それだったら、どんだけいいやつなんだ……


「うん、自慢の友達」


そういう雛子は、この帰り道で初めて笑顔を見せた。


じゃあ、そんな友達がいるなら、俺はもしかしてもう守らなくても大丈夫なのか?


ふと、そんなことが頭によぎった。


この関係は偽装カップル。問題の九鬼を排除した今、この関係に全く意味はない。


どうなるんだろうか……

あいつは、どう考えてるんだろうか?


でも、この問題は俺一人で考えても仕方のないことだった。

言うべきだろうか?問うべきだろうか?


この関係はどうするんだと?


もし、これ以上一緒にいるのが迷惑ならすぐに関係を終わらせるべきだし、まだ不安なら継続という選択肢もある。

どちらにしても有耶無耶はあまり良くない。


何故なら彼女は学年トップの美少女だから。彼女に好意を寄せている人も沢山いるから。


多分、今日でこいつと直で話すのは最後になるだろう。

もう、こいつには俺といる理由がなくなったのだから。


自然消滅はこっちにしてもなんかアレだし……

だからこそ、今日しか聞けないと思っているんだが、、


いや…でも、今日はきっと雛子も疲れているだろうし何よりこんな話をする空気ではないよな。


そんなことを考えていると、


「あ、もう着いた…」


雛子がそう呟いたので見てみると、めちゃくちゃ大きな家があった。


「デケェな。」


「うん、ちょっとお金持ちだから」


これは、ちょっとの次元じゃすまないと思うんだけどね?

明らかに隣の家とは規模が違うんだもん。


「じゃあ、ここで大丈夫そうか?」


「う、うん……今日はありがと。その……楽しかった」


「いろいろあったけど、俺も案外楽しめた」


「なら、よかった……あの――」


「あ、ちょっと忘れてた!」


「え??な、なにを?」


そうだよ。大事なの忘れてた!

俺はリュックからアレを取り出した。


「ほら、お前にプレゼント」


「え?なにこれ……ジュース?」


「コーラだ。お前好きだろ?」


「いや、これコーラじゃないでしょ。なんなのナマコーラって…」


「なまことコーラだ」


「さいあくな組み合わせじゃん」


「意外にうまいらしいぞ?」


「ほんとかなぁ……」


いや、それは俺にもわからん。俺も帰って試してみようと思ってるし。


「まあ、せっかくだしもらうね、ありがとう」


「おう、てかお前さっきなんか言おうとしてた?」


「え!?あっと、え〜と。ううん?なんにもないよ?」


「ほんとかよ……」


「ホントホント」


「まあ、それならいいけど……」


おかしいな……被せちゃったと思ったんだけど、気のせいか。


「じゃあ、俺帰るな」


「うん、ありがとね」


「おう」


俺が歩き始めると、後ろでバイバイと手を振ってくれる雛子。だけど、その表情はいつもより少し暗かった。

この章もあと、2話です。


よろしくお願いします!

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