11話 俺の彼女だ。
「なあ……やっぱりあのプリクラ抹殺したい…」
「そんな犯行声明出しちゃダメ。プリクラは何にも悪くない」
今、手元にあるのはさっき撮ったプリクラの写真。
まあ、にこにこしていい笑顔なのだが死にたくなるようなポーズが多数あって……
「はあ……死にたい」
「今度は自殺声明!?」
「だって、めちゃくちゃ恥ずかしいから……これ、恋人は普通にやってんだろ?正気か?」
「どう考えても正気でしょ?しかも、カップルモードなんだからこれが当たり前!もう、諦めて」
こんな感じで、かなり強く言われてしまったのだが、じゃあ、、
「普通の恋人って、こんな多くハートマークつけるのかよ…」
もうね、主張が強すぎてやばい。
これは、もうバカップルレベル。
「あ、あたりまえじゃん!!ハートなんてあって損はないし……」
「愛が重すぎる気が……」
「こ、恋人なんだから!これが普通」
「偽恋人なんだけどな…」
「罰ゲームだもん!」
なるほど、罰ゲームならありえるか。
しかし、やべぇなぁ…恥ずかしすぎてホントにもう一生見たくない。
「はぁ…」と、ため息をついてると、
「でも、キスショットはなくてよかったねぇ…」
「そ、そんなのあるのか!?」
「あるよ…カップルだもん」
あんのかい!
でも、ということは……
「もしかして、キスとかもあったらするつもりだったのか……?」
「そ、それは…………す、するわけないじゃん……」
「だ、だよな……」
なんで、そこで声が小さくなるのかよくわからないが取り敢えずよかった。
キスなんてしたら、偽装カップルの域を超えているからな。
「じゃあ、これで解散でいいか?」
「あ、ちょっと待って!」
「どうした?」
「駅前にスムージー屋さんが新しく開店したからそこ行きたい」
「まあ、いいけど」
こいつ、スムージー飲むのか?
まあ、俺なんてスムージーって単語しか知らないから実際どんなやつなのかは気になる。
飲み物なんだよな……?
○
「うわぁ…めっちゃ混んでる……」
「やば…大名行列じゃん」
帰宅ラッシュということもあり駅前は非常に混雑していた。
うわぁ…この中待つのか……
てか、ちょっと、カラオケで飲み物飲みすぎてトイレ行きたい……
「なあ?」
「ん?」
「トイレ行ってきていいか?」
「大なの?」
「デート中に大する勇気は俺にはない」
「だ、だよね……」
なんで、安心してるんだよ。
お前には俺がどう映ってるの?
「並んでるか?」
「うん、まだまだかかりそうだし」
「そうか、じゃあもし順番来てたら買っといてくれ。俺はおススメでいいから」
「りょーかい」
俺は、トイレに行くために駅に向かった。
○
修斗が、トイレに行った。
デート中に彼女に並ばせるなんてけしからん話だけど、修斗にはいっぱいいっぱい優しくしてもらった。
助けてもらった。
だから、私がスムージーを買って、彼にプレゼントするの。
そして、「今日はありがと。たくさん、助けてくれてありがと」って、しっかりお礼を言うんだ。
考えてみれば、本当にあっという間だった。
九鬼くんに遭遇した時にはどうなるかと思ったけど、修斗が身体を張って守ってくれた。
今までの彼氏は、きっとやばい人に絡まれたりしても助けてはくれないんだろうなぁ……
前の彼氏もそうだった。
とってもカッコよくてスポーツもできて、最初は優しかった。
だけど、だんだん冷たくなって、最終的に捨てられた。
今でもあの場面はよく悪夢に出てくる。
傷は癒えていたと思ってたのに、意外に癒えてなかったのかも。
まあ、まだ修斗と偽装カップル続けられるし………
いや、待って。
続けられるのかな。
もう、解決しちゃったから。もしかしたら、もうこれでこの関係は終わりなのかなぁ……
そしたら、ちょっと寂しいな……
あ、もうちょっとだ。
もうちょっと時間かかると思ったけど意外に早かったなぁ。
修斗はまだ来てない……
これは、面白い味を選んでビックリさせるチャンスなのでは?
楽しみだなぁ……
どんな反応するんだろ。
また、嫌がるかな…でも、文句言いながらもちゃんと全部飲んでくれるんだろうなぁ…
あ、あと、3組だ。
「ねえ、ちょっと、お姉ちゃん?」
「はい?」
呼ばれたので振り返ると、そこにはチャラそうなお兄さんが二人いた。
えっと、割り込みかな?
「ねえねえ、キミめっちゃかわいいじゃん。俺たちと遊ばない?」
割り込みかと思ったら違った。またナンパだ……
「で、でも……スムージーが」
「スムージー??じゃあ、一緒に並ぶからそのあと遊ばない?」
「で、でも、彼氏が……」
「カレシ?いないじゃん。ウソはよくないって!」
「ほ、ほんとです…」
「でも、いいじゃん。一回だけだから!」
「イヤ…」
思ったよりもずっとしつこくて、助けを周りに求めても、こんなやつらと関わりたくはないのかみんな知らんぷり。
おねがい……だれか助けて………
「おい、俺の彼女になにやってんだ」
私の背後から声がした。その声は、私にとって今いちばん聴きたい声だった。
「だれだお前?」
「こいつの彼氏だよ。並んでる女にナンパとかどんだけ悪趣味なんだよ」
「う、うるせえ。離れてたオマエが悪いんだよ!」
「悪かった、近江。でも、もう安心だ。絶対守ってやるからな」
その声を聴いただけで、すっごく不安な心が一瞬で優しさに包まれた感じがして、、
「うん、ありがとう…しゅうと……」
と、気付けば彼の名前を口にしていた。
この章もあと3話です。(多分)
作者のモチベのため、評価、よろしくお願いします!




