第三話 アクマの子が落ちた地で
アラムは運良く木の枝に引っ掛かり、地面に衝突せずに済みました。
命は助かったものの、アラムは気を失っていました。
しかし血の匂いに惹かれたのか、木の下には魔物達がやってきました。
『見ろ、子供が木にひっかかってる。』
『なんか怪我してるみたいだ。』
『食えるかなあ。』
『うまそうだなあ。』
『でも頭にツノが生えてるぞ。』
『背中には翼がはえてる。』
『なーんだ、アクマか。』
『じゃあ食ってもうまくないな。』
『あれどうする?』
『アクマなんてほっておいたら何するか分かんないよ。』
『殺しちゃう?』
『でもあのままでも死にそう。』
『じゃあ主を呼ぼうぜ。』
『そうしよう。』
しばらくするとやって来たのは、大きな大きな狼でした。
『あれは…。』
一緒に付いてきた狼の子供達が訪ねます。
『カカ様、あれは何?』
『怪我してるよ?』
『あれ食べられる?』
『いけません!決して食べてはいけません!…お家に連れて帰りましょう。』
「…ここは?」
アラムが目を覚ますと、そこは暗い洞穴の中でした。
『目が覚めたか。』
「…誰?」
アラムが起き上がると、目の前に居たのは大きな大きな狼。
その狼は、アラムの頭に直接語りかけてきます。
『私が崖から落ちてきたそなたをここまで連れて来たのだ。』
そう言われて、段々と思い出して来ました。
…そうだ、僕は、皆に切られたり火で焼かれて落とされたんだ。
アクマ、アクマって、言われて。
辛い記憶が蘇ります。
と、同時に強い痛みも。
「い、痛いっ!」
『無理も無い。酷い怪我をしていたのだ。薬草をすり潰して傷口にまぶしたが、まだふさがってはいないし血も失っている。じっとしておくがいい。』
着ていた服は脱がされていました。
いじめられていたとはいえ、それなりに立派な貴族の服を着ていましたが、
切られ、燃やされ、破れ、ボロボロになっていました。
アラムは言われた通り、じっとしていました。
でも。
傷が治ったらどうなるんだろう。
だって。家族皆から殺されそうになって、崖から落とされて。
お家にも帰れない。
この狼は僕をどうするつもりなんだろう。
みにくいアクマの子の僕を。
アラムは不安で胸がいっぱいでした。
『ねえカカ様。あれはアクマなの?』
『ツノが生えてるし、小さいけど翼も生えてるよ。』
『いいえ、あれはきっと…。』